2021年のフランス映画「愛する人に伝える言葉」を観に行った。
39歳で膵臓がんを患ったバンジャマン(ブノワ・マジメル)は、母・ク
リスタル(カトリーヌ・ドヌーヴ)と共にがんの権威であるドクター・エ
デ(ガブリエル・サラ)の元を訪れる。しかし「ステージ4の膵臓がんは
治せない」と率直に言われる。自暴自棄になるバンジャマンに対し、
エデは病状を緩和する化学療法を提案する。エデの助けを借りながら、
クリスタルは息子の最期をできる限り気丈に見守ることに決める。
重たい映画だった。演劇講師をしているバンジャマンは、人生半ばにし
てすい臓がんだと告げられる。セカンドオピニオンとして母・クリスタ
ルと共に名医と言われているドクター・エデの元を訪れるが、ステージ
4のすい臓がんは治らない、そして余命は半年から1年くらい、と言わ
れる。バンジャマンとクリスタルはショックを受けるが、緩和ケアの提
案を承諾することにする。バンジャマンは辛い体ながら演劇講師として
生徒たちに真剣に向き合っていく。
バンジャマンもクリスタルも余命を知っているのだから、2人ともどん
なにか辛く苦しいだろうと思う。クリスタルには慰める言葉も励ます言
葉も思い浮かばない。もし自分がバンジャマンと同じ立場になったらど
うするだろう、と考えてしまう。受け入れられるだろうか。バンジャマ
ンは自暴自棄になりつつも、次第に自分の運命を受け入れていく。けれ
ども体の不調は容赦なく襲いかかってくる。エデは素晴らしい医師だと
思う。常に患者たちの気持ちに寄り添っているのだ。
一方で、クリスタルには気がかりなことがあった。息子の病気は自分が
過去に息子にかけた心労のためではないかと悩むようになる。バンジャ
マンは若い時に当時の恋人との間に息子ができていた。だがクリスタル
はバンジャマンの将来を考えて、恋人と無理矢理別れさせていたのだっ
た。それ以来恋人が1人で息子を育て、バンジャマンは息子に会ったこ
ともなかった。クリスタルは元恋人に一応バンジャマンのことを電話で
伝える。ミュージシャンをしている息子は1人で会いにいくと言ったが、
結局病室の前まで行って会わなかった。
演劇の生徒たちが皆で写真を撮って、「早く戻ってきて」と書いたその
写真をバンジャマンは病室の壁に貼っているのだが、そのシーンはとて
も悲しかった。生徒たちはバンジャマンが重い病気だとは知っているが、
助からないとは知らないのだ。バンジャマンが少しずつ衰弱していく様
子は見ていて辛い。静かに流れていくが、悲しみに覆われた物語である。
バンジャマン役のブノワ・マジメルもだが、クリスタル役のカトリーヌ
・ドヌーヴ、エデ医師役のガブリエル・サラと、メインキャストの演技
が素晴らしい。ラストシーンも良かった。深く心に残る映画である。
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39歳で膵臓がんを患ったバンジャマン(ブノワ・マジメル)は、母・ク
リスタル(カトリーヌ・ドヌーヴ)と共にがんの権威であるドクター・エ
デ(ガブリエル・サラ)の元を訪れる。しかし「ステージ4の膵臓がんは
治せない」と率直に言われる。自暴自棄になるバンジャマンに対し、
エデは病状を緩和する化学療法を提案する。エデの助けを借りながら、
クリスタルは息子の最期をできる限り気丈に見守ることに決める。
重たい映画だった。演劇講師をしているバンジャマンは、人生半ばにし
てすい臓がんだと告げられる。セカンドオピニオンとして母・クリスタ
ルと共に名医と言われているドクター・エデの元を訪れるが、ステージ
4のすい臓がんは治らない、そして余命は半年から1年くらい、と言わ
れる。バンジャマンとクリスタルはショックを受けるが、緩和ケアの提
案を承諾することにする。バンジャマンは辛い体ながら演劇講師として
生徒たちに真剣に向き合っていく。
バンジャマンもクリスタルも余命を知っているのだから、2人ともどん
なにか辛く苦しいだろうと思う。クリスタルには慰める言葉も励ます言
葉も思い浮かばない。もし自分がバンジャマンと同じ立場になったらど
うするだろう、と考えてしまう。受け入れられるだろうか。バンジャマ
ンは自暴自棄になりつつも、次第に自分の運命を受け入れていく。けれ
ども体の不調は容赦なく襲いかかってくる。エデは素晴らしい医師だと
思う。常に患者たちの気持ちに寄り添っているのだ。
一方で、クリスタルには気がかりなことがあった。息子の病気は自分が
過去に息子にかけた心労のためではないかと悩むようになる。バンジャ
マンは若い時に当時の恋人との間に息子ができていた。だがクリスタル
はバンジャマンの将来を考えて、恋人と無理矢理別れさせていたのだっ
た。それ以来恋人が1人で息子を育て、バンジャマンは息子に会ったこ
ともなかった。クリスタルは元恋人に一応バンジャマンのことを電話で
伝える。ミュージシャンをしている息子は1人で会いにいくと言ったが、
結局病室の前まで行って会わなかった。
演劇の生徒たちが皆で写真を撮って、「早く戻ってきて」と書いたその
写真をバンジャマンは病室の壁に貼っているのだが、そのシーンはとて
も悲しかった。生徒たちはバンジャマンが重い病気だとは知っているが、
助からないとは知らないのだ。バンジャマンが少しずつ衰弱していく様
子は見ていて辛い。静かに流れていくが、悲しみに覆われた物語である。
バンジャマン役のブノワ・マジメルもだが、クリスタル役のカトリーヌ
・ドヌーヴ、エデ医師役のガブリエル・サラと、メインキャストの演技
が素晴らしい。ラストシーンも良かった。深く心に残る映画である。
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すい臓癌は、沈黙の癌で、相当ひどくなってからでないと
自覚症状が無い癌でしたね。
違和感を感じて病院に行った頃には手遅れで、
すい臓癌の場合、発見されてから、助かった人は居ないといってもいいですね。
早期発見は、すい臓癌は難しいようですね。
助からないけども、死ぬまでの間の苦しさを減らす為の
緩和ケアである化学療法を医師のエデは施すんですね。
余命は知ってて、それでもケア…
何だか重たいですね。
でも、残された短い時間を充実させる為に緩和ケアは必要ですよね。
死ぬ前に整理しておきたい事、すませておきたい事はありますよね。
すませておきたい事やるにも容赦なく身体の不調が襲いかかってきますね。
パンジャマンには若い時に当時の恋人との間に出来た息子がいたんですね。
クリスタルには孫ですね。
死ぬ前に会わせてやりたいと考えたのに、結局は病室の前まできて
会わなかったなんて寂しいですね。
息子は父親に捨てられたと感じているから、死ぬ前でも許す気になれないのでしょうね。
演劇学校の生徒の写真を病室の壁にはっているのは、心あたたまるけど、
ここに息子の写真が無いなら、悲しいですね。
思い残すなければいいのに…この調子では、思い残す事や未練を抱えたままあの世に行くんでしょうかね…。
尚、カトリーヌドヌーブ、渋い役ですね。
若い時の映画を何本か観てるので、ここまで女優として長い事、君臨しているのは凄いです。
コメントありがとうございます。膵臓がんは大抵手遅れというのは、聞いたことがあります。
症状が出た時にはもう遅いのですね。
そんなに恐ろしいがんなのに、どうして定期検診がないのでしょうね。
胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がんなどは検診が推奨されているのに、
何故膵臓がんの検診は行われないのか、不思議です。
余命がわかっていて緩和ケアを受けるって辛いでしょうね…
バンジャマンは演劇講師としての役目を果たしたいと考え、入院はせずに頑張りますが、
とうとう仕事はできなくなってしまいます。
お見舞いに来た女子学生が、代理の講師があまり良くないから、
早く戻ってきてねと言うシーンは悲しいです。
バンジャマンが若い時にできた息子は、最後には父親を許すのですが、
そのシーンは感動的です。
私もカトリーヌ・ドヌーヴの映画は何本か観ています。
本作ではやつれて髪もボサボサですが、それでも美しい人だと思いました。