猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

追想

2018-06-05 23:00:56 | 日記
1975年のフランス映画「追想」を観にいった。

1944年、ドイツ占領下フランスの小都市モントーバンで、外科医のジュリアン・
ダンディユ(フィリップ・ノワレ)は、美しい再婚相手のクララ(ロミー・シュナイ
ダー)、一人娘のフロランス、年老いた母、そして犬のマルセルと幸せな家庭生活
を送っていた。だが街では連合軍の上陸間近で焦りを募らせるドイツ兵たちが執拗
なパルチザン狩りを続けていた。同僚のフランソワ(ジャン・ブイーズ)の助言もあ
り、ジュリアンは妻と娘を田舎の古城へと疎開させる。数日後疎開先を訪ねた彼は、
ナチス武装親衛隊に惨殺された村人たちと愛する妻子の無残な姿を目にすることに
なる。ジュリアンは復讐を誓い、古いショットガン1つで次々とドイツ兵を殺害し
ていく。

「追想」というタイトルから、私は戦時下の悲恋ものみたいな映画を想像していた
のだが、全然違っていて、かなり暴力描写がきつい復讐ものだった。原題は「古い
銃(Le Vieux Fusil)」というらしい。邦題には向かなかったか。
妻が男と出ていって以来、母親と娘と暮らしていた外科医のジュリアンだが、フラ
ンソワの紹介で出会ったクララに一目ぼれをし、プロポーズをする。娘のフロラン
スもすぐにクララに懐き、「お姉さんみたい」と喜んだ。ジュリアンが勤める病院
には重傷を負ったドイツ兵やゲリラたちが運ばれてくる。患者の身分に関係なく治
療をする医師たちだが、レジスタンスたちが無慈悲にも連れ去られても、医師たち
にはどうすることもできない。重傷だから動かさないよう言っても無駄である。こ
れが戦争の現実なんだな、と思った。
ジュリアンはフランソワの助言に従って妻子を田舎に疎開させることにしたのだが、
これが不幸の始まりだった。安全なはずの田舎にナチス武装親衛隊が訪れ、村人を
皆殺しにしたのだ。ジュリアンの妻子も惨殺されていた。クララの殺され方はあま
りに惨たらしく、同じ人間にこんなことができるのだろうかと思う程である。ナチ
ス親衛隊のメンバーも家に帰れば普通の人だったりするように、戦争は人を狂わせ
る。ジュリアンは隠してあった銃を引っ張り出し、ドイツ兵を1人また1人と殺して
いく。その殺害シーンと、妻子が生きていた頃の楽しかったシーンが交互に描写さ
れる。ジュリアンは時に思い出に浸りながらもドイツ兵を倒していく。その思い出
のシーンが挟まれるからこそクララとフロランスが殺されたという現実が観ている
方に辛くのしかかってくる。
フィリップ・ノワレの鬼気迫る演技に圧倒される。そしてロミー・シュナイダーは
輝く程美しく、それが余計に悲しみを誘う。この名作映画をスクリーンで観られた
のは幸運だと思った。




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立ち去った女

2018-06-01 22:40:39 | 日記
2016年のフィリピン映画「立ち去った女」。

元小学校教師のホラシア(チャロ・サントス・コンシオ)は無実にも関わらず殺人の
罪で30年も投獄されていた。ところがある日、同じ刑務所に服役中でホラシアと仲
の良いぺトラ(シャマイン・センテネラ・ブエンカミノ)が、ホラシアの元恋人ロド
リゴ(マイケル・デ・メッサ)に金で頼まれて殺人を犯し、その罪をホラシアに着せ
たのだと所長に告白し、ホラシアは釈放になる。出所したホラシアは復讐をするた
めにロドリゴを捜す旅に出る。その途中でホラシアは、物乞いの女や卵売りの男や
女装したゲイ(ジョン・ロイド・クルズ)など、社会的弱者たちと出会う。彼らに手
を差し伸べ、惜しみない愛を注ぐホラシア。そんな彼女を慕う者たちの助けにより、
ホラシアはロドリゴへの距離を縮めていく。

第73回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)を受賞した作品。とてもおもし
ろかった。全編モノクロームで暗い雰囲気。物語に合わせて暗くしたのだろうけど。
ホラシアは身に覚えのない殺人の罪でもう30年も服役している。諦めて刑務所の生
活を普通に営んでいるホラシア。ある日所長に呼び出され、「おめでとう、釈放よ
!」と告げられる。訳がわからないホラシアだったが、殺人の真犯人はぺトラで、
ホラシアの元恋人のロドリゴに依頼されてホラシアに罪を着せたことを、ぺトラが
所長に告白したのだった。その後ぺトラは自殺する。ロドリゴはホラシアが自分と
別れて別の男と結婚したのが気に入らなかったのだ。そんなことで、ホラシアは殺
人犯として30年も投獄されていたのだ。
ホラシアと所長が語り合うシーンが好きだ。長い間服役していて特に問題も起こさ
ない囚人とは友達のようになるものだろうか。所長はホラシアに「こんなところに
30年も…」「何でも相談して。友達でしょ」と言い、ホラシアは泣く。とてもいい
シーンだ。
出所してロドリゴへの復讐を決意するホラシアだったが、何故か彼女は物乞いの女
や卵を売って妻子を養っている男や女装した男などと知り合う。彼らはフィリピン
の貧困を象徴する存在である。卵売りの男の家は「これ、家?」と思うような粗末
なもので、ここに家族数人が住んでいるのかと驚かされる。妻は働いていないのだ
ろうか?ゲイの男は数人の男たちに暴行を受け、重傷を負うがホラシアに助けられ
る。ホラシアは何の関わりもないその男を献身的に世話をする。ホラシアは元々慈
愛に満ちた女性なので弱い立場の人が自然と近寄ってくるのかもしれない。
ラストは多分そうなるだろうな~と予測した通りになった。3時間48分と長い映画だ
が、それほど長さは感じなかった。去年映画館で観た「ローサは密告された」もそ
うだったが、本当にフィリピンは貧富の差が大きく、貧しい人たちはとことん貧し
いのだなあ、と思った。ロドリゴは富裕層の象徴である。フィリピンの貧困問題は
いつか解決するのだろうか。「ローサは密告された」の主演女優はカンヌで女優賞
を獲得したし、フィリピン映画は日本映画映画を超えたと思う。



ノエルかわいい~っ!(≧▽≦)←親バカ







ベルもかわいいよ(^o^)








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