Episode7
『狐火の家』
「今回の密室は、山深い村に100年前から立っている
古い日本家屋です。
ドアや窓には鍵がかかっていましたが、
何故か、この窓が1つだけ開け放たれていました。
窓が開いているのに
密室とはどういうことでしょうか。
ある不思議な出来事が起きた時、
それを超常現象だと言う人と、
科学で解明出来る。
錯覚に過ぎないと言う人がいます。
それは、おそらく答えの出せない
永遠のテーマなのではないでしょうか。
さて、今のは?」
芹沢が休暇を取るとのこと。
2泊でモナコの強行スケジュール。
そこへ遠藤と名乗る男性が訪ねて来た。
先日電話をした長野で殺害された女子中学生の知り合いだと。
「愛実ちゃんは自宅で殺されてたんですが、
密室事件というやつらしくて。
前に雑誌で見た芹沢先生のインタビューを
思い出して連絡を。」
しかし既に断ってた芹沢。
遠藤は何度か電話したが取り次いでもらえなかったため、
長野から来たらしい。
「大変申し訳ありませんが、
他の案件で手がいっぱいなもんですから。
失礼します。」
純子は話だけでも聞いてあげればと。
遠藤も諦めずお願いする。
遠藤は西野の家に妹の明日香を連れて行った。
すると愛実の死体の側にいる西野を発見。
事件が起きたのは一昨日で、
その前の晩に愛実は明日香と西野と一緒に
遠藤の家に泊まったとのこと。
事件当日、愛実は部活の朝練があり、
西野は愛実を学校まで送ってから村おこしの会合に。
その後、愛実の部活が終わる頃、自宅に戻った。
玄関に鍵がかかってたため、
部活が長引いてるのかと思い中へ入ったら、
愛実が倒れていた。
死因は柱に頭をぶつけて脳内出血を起こしたとのこと。
顔には殴られた痕があり、
事故だとは考えられないと刑事が言ってたそう。
性的暴行はなし。
他にはタンスの引き出しを物色した跡があり、
金塊がなくなっていた。
西野は古い地主の家柄で、
松本市内に不動産をいっぱい持っていると。
現場は密室だったため、
警察は第一発見者の西野が怪しいと、
刑事に連れて行かれたまま帰って来ないらしい。
「犯人は西野じゃありません。
あいつは娘たちを守るためなら、
自分の命だって喜んで差し出すような
そういう男なんです。
だから、絶対他に真犯人がいるはずです。」
他に疑わしい人がいるのかと芹沢。
遠藤は西野の長男の猛かもしれないと。
猛は4年前に同級生をナイフで刺して、
警察に連れて行かれる途中で
隙をついて逃げて以来行方不明だと。
話を聞き終えた芹沢は純子に長野に行くようにと。
「えっ? 芹沢さんは?」
「俺はモナコだよ。 朝言ったじゃない。
君と榎本だけでも行かないよりはマシだろ。」
休暇をモナコじゃなく長野にすればと純子。
空気だっておいしいしと説得するが無駄だった。
「悪いけど俺は都会が好きなんだよ。
自然とか田舎とか全く興味ないから。
ほら、吹くとか靴とか汚れちゃうじゃない。
それに虫刺されも酷いだろうしさ。
あとあれだ。
トイレなんかまだ汲み取り式残ってんだろ。
あと出ちゃうぞ。
座敷ワラシ。 間違いない。」
田舎のバス停でバスを待っていた榎本。
純子から電話がかかって来る。
「もしもし、青砥です。
ちょっとご相談したいことがあるんですけど。」
「すいません。
今休暇中で会社にはいないんです。」
榎本の仕事部屋で電話をかけていた純子。
「分かってます。
あの~・・・休暇ってまさか旅行とか?」
「まあ、そのようなものです。
珍しい錠前があるという情報が入ったんで、
持ち主に交渉して譲ってもらってきたんですよ。
どうかしましたか?」
「ああ、いや、あの~・・・
因みにどちらに行かれてるんですか?」
「長野です。」
「ああ長野。・・・長野!?」
「これから帰ろうかと。」
「あっ、そのまま。 そのままでいて下さい。」
「えっ?」
「そのままでいて下さい。
今から迎えに行きますんで。 はい。」
遠藤に案内されて西野の家へ来た純子と榎本。
ここは狐火集落というと遠藤。
狐火は鬼火とも言い、夜に空中を漂う青い火のことで、
死者の魂だと言われていると説明。
ここでは見たという人が多いらしい。
西野の家の鍵をチェックしている榎本が、
この村で窃盗事件がよく起きるのかと聞く。
そんな事件は殆どなく、
村中どこの家も鍵をかけずに過ごしてると。
けど西野の家だけは猛がいなくなった頃から、
鍵をかけるようになったらしい。
「泥棒がいない村には似つかわしくない鍵ですね。
この鍵は外国製で構造が特殊なんです。
合鍵を作るにはメーカーに
直接発注しなければならないため、
数がカードで管理されています。」
刑事もそう言っていたと。
調べたら鍵は2つだけだったと遠藤。
西野と愛実が持っていた2つ。
愛実の鍵は家の中にあったり、
鍵を持っていなくても外から施錠する方法はない。
しかも目撃者もいたとのこと。
100m程のところにリンゴ園があり、
そこの農家の奥さんが午前11時から
花摘みの作業をしていて、
12時半頃に愛実が帰宅したところも見てるし、
午後1時過ぎに西野が鍵を開けて入るところも、
遠藤が2時過ぎに明日香を送ってくるところも見ていた。
それ以外に正面玄関に近づいた人間は
誰もいなかったと証言していると。
中も調べる榎本たち。
犯人は愛実が帰って来る前に
既に家の中に潜んでいたらしい。
愛実は友達と電話で話しながら帰って来ていて、
中に誰かいるのを目撃した。
「誰?」と言ったきり会話が途切れたと
電話の相手が証言していた。
愛実の死亡推定時刻は12時半で、
前後30分の誤差はあると。
だから西野も容疑の圏内に含まれる。
しかも遺体の発見から通報までに
1時間かかってることも警察に怪しまれているらしい。
消えた金塊は30本あった。
1本1kgなので丁度30kg。
洗濯用のロープとネットもなくなっていたため、
それに入れて運んだんだろうと。
「30kgの金となるとグラム3,000円としても
9,000万円になります。
そのために殺人が起きたとしても不思議ではありませんが、
30kgというのは持ち運ぶのには相当厄介な重量です。」
縁側も勝手口もリンゴ園からの視界に入る。
しかも全て内側から施錠されてあった。
けど1ヶ所だけ窓が開いていたと遠藤。
窓下の地面に足跡はなし。
地面の土は水を含んで湿っている。
事件当日はもっとぬかるんでいただろうと。
お茶を出された榎本と純子。
遠藤は電話をしに部屋からいなくなってしまう。
純子はここに着てから落ち着かないと。
そろそろ帰ろうと言う純子に、
榎本は遠藤が戻って来てからと。
モジモジし始めた純子にトイレかと聞く榎本。
純子はトイレに行くが、芹沢の言う通り汲み取り式。
しかも鬼火が?
気配を感じ見ると女の子がいて悲鳴を上げる。
遠藤が駆けつけ、どうしたのか聞く。
女の子は明日香だった。
遠藤の家に泊めてもらうことになった2人。
夕食までご馳走になる。
「そういえばさっきスーパーで聞いたんだけど、
津田さんちのよっちゃんがね、猛くん見たんだって。」
「猛を? いつ?」
「それが事件が遭った日の前の晩らしいの。」
PCをつかいモナコにいる芹沢と話す純子たち。
榎本が2階の窓のネジ締まり錠のネジが
1本バカになっていたと。
きちんとねじ込むことが出来ず穴に差し込んであるだけで、
外から振動を与えれば間単に抜け落ちて
窓を開けられるはずだと言う。
犯人はそこから侵入した可能性はあるが、
外からかけることは不可能だから、
仮に侵入出来たとしても脱出は無理らしい。
「でも、いくら玄関を警戒しても
窓の鍵が壊れてたら意味ないですよね?
どうして直さなかったんだろう。」
「おそらく壊れていることに
気づいていなかったんだと思います。
西野さんが鍵をかけるようになったのは、
猛さんがいなくなった頃からだと
遠藤さんが言っていましたよね。
西野さんが警戒していたのが
強盗ではなく猛さんだったとしたら?」
「まさか! えっ?
じゃあ、愛実さんが帰って来た時
家の中にいたのは猛さん?」
「猛さんが目撃されたと言うのが本当なら
そうかもしれません。
ネジ締まり錠が壊れていたことを
猛さんだけが知っていたという可能性もあります。」
現場にいない芹沢はすっかり仲間外れ。
翌日、村の人たちに聞き込みをする。
猛を見た時間は9時半頃で、
擦れ違ったけど声はかけなかったと。
けど同級生だったから見間違えることはないとのこと。
駅員にも話を聞いた。
猛が電車から降りてくるところを見たと。
榎本はリンゴ園に。
西野の家を脚立に上って見ていた。
下りた時、手に錆がついてしまった。
女性が濡れたままにしておくと錆がつくから、
雨が降った時は必ず拭いてからしまうのだと。
西野家で事件が起きる前の晩も、
ちゃんと拭いてからしまったのに、
翌朝取りに行ったら濡れていたのだそう。
おそらく猛がそれを使い2階の窓から入ったと榎本。
他にも根拠はあり、蜂の死骸が地面に落ちていたと。
マメコバチといいリンゴの受粉に使われている蜂なのだとか。
この蜂の行動範囲は半径が極めて狭く、
40m~70mまでしか飛ばないそう。
リンゴ園から西野家までは100mある。
蜂が飛来する可能性は限りなくゼロに近い。
あの蜂は腹の部分が潰れていた。
死んだ後、脚立の脚に付着していて運ばれた。
地面に3つのくぼみが残されていたのを見て、
脚立なのは明らかだと榎本。
猛が愛実を殺した可能性が充分ある。
純子は警察へ。
「西野さんを今すぐ解放し自宅へ帰して下さい。
任意同行で3日も家に帰さないというのは
明らかに行き過ぎです。」
西野は解放された。
一度東京へ戻るが密室の検証は続けるので、
何か分かったら連絡すると純子。
榎本の仕事部屋へ集まる3人。
芹沢もモナコから帰国していた。
「あれ? 今日模型は? 作ってないの?」
「昨日の夜に帰って来たのでさすがに。」
「あ、そう。 模型ないんだ。」
「期待してたんですか?」
「いや、そうじゃないけどさ。
ほら、俺実際に現場見てないじゃないかよ。」
「イメージして見て下さい。
玄関を入ってすぐに階段があり廊下の先に。」
CGが登場。
「あ、凄い。」
「何が?」
「では検証してみましょう。
逃走経路として考えられるのはやはりここ。」
「ここってどこ?」
「唯一開いていた1階の北側の窓ですよ。
見えないんですか?」
「見えないよ。」
お構いなしにどんどん話を進める榎本。
そこへ遠藤から電話があり、
警察から電話があって猛の居所が分かったとのこと。
東京のアパートで本人は見つかってない。
今朝警報システムが作動してると通報を受け、
警備会社のスタッフと警察が現場へ駆けつけた。
ドアには鍵がかかっていて管理人が合鍵で開けようとしたが、
勝手に鍵が交換されていて開けられなかった。
呼びかけても応答がないため、
仕方なくドアを強引に開けて中へ入ったそう。
部屋を調べると金塊が出て来た。
部屋の借り主の身元を調べたら、
猛が偽名を使って借りていたことが判明。
猛はタチの悪い消費者金融から多額の借金をしてて
取り立て屋から逃げていたらしい。
しかも金塊と一緒に大量の薬物も見つかり、
密売してたんじゃないかとのことだった。
通報したのは榎本の会社の警備員だったよう。
「何か分かりました?」
「金塊を部屋に置いたのは
猛さんではないかもしれません。
部屋についていた警報システムは、
セットして出かけた後にドアを開けた場合、
1分以内に解除ボタンを押さないと
アラームが鳴るようになっているんです。
つまり、猛さんが金塊を置く為に帰宅したんだとしたら、
まず最初にシステムを解除していたはずなんです。」
「忘れただけなんじゃないですか?」
「それにしてもアラームが鳴り出せば止めるはずです。
おそらく部屋に入った人物はクローゼットに金塊を隠し、
1分以内に出て行ったんでしょう。
外に出てからアラームの音を耳にしたかもしれませんが、
それがなんの音か分からなかったんではないでしょうか。」
「どうしてだろう。」
「その人物はアラームの音を聞いたことがなかった。
或いは警報システムの存在そのものを知らなかった。」
「知らなかった?」
「はい。 そんなものとは無縁の場所で
生まれ育ったからです。」
「まさか、西野さんだと思ってるんですか?」
「そう考えるのが自然な気がします。」
純子は真剣に幽霊説を持ち出して来る。
しかし芹沢に科学で解明出来ると反論される。
「そんなものに踊らされてるようじゃ、
真実なんか見えてこないぞ! なあ? 榎本。」
「なるほど。」
2人の会話を聞いていた榎本は
指をすり合わせ始め・・・鍵が開いた。
「もしかして、私役に立ちました?」
「はい。 この密室は破れません。」
西野家へ再びやって来た純子と榎本。
愛実を殺害したにはやはり猛。
しかし猛は家からは逃げていない。
検証したが犯人の逃走経路は見つからなかった。
事件が起きた時、この家は正真正銘の密室だったからと。
順を追って説明すると榎本。
事件が起きる前の晩、猛が4年ぶりに帰って来た。
実家へ行くと家族は全員出かけてて留守。
そこで猛は2階のネジ締まり錠が
バカになっている窓から家へ侵入することにした。
脚立はリンゴ園から黙って持ち出し、
玄関の鍵を中から開けた後、脚立を戻す。
そのまま家出夜を明かし、
翌日帰宅した愛実と鉢合わせした。
その際、トラブルが起き、衝動的に愛実を殺害。
その後、間もなく西野が帰宅し、
愛実を殺した猛を西野が殺したと。
榎本の推理通り。
金をせびる猛に金塊はやるからと隙を見せ殺した。
遺体をトイレまで引きずって行き、
洗濯用のネットに金塊を入るだけ詰め、
猛の遺体に重りの代わりにロープで巻きつけた。
「青砥さん。 こないだトイレで
狐火を見たと言っていましたよね。」
「はい。」
「狐火というのは死体がバクテリアによって分解される際、
リン化合物が光って見える現象だと言われています。
猛さんの遺体がトイレにあると考えると、
金塊がなきなっていたことも説明がつくんです。
先程確認したら便槽にモルタルを流し込んで
固めてありました。
あそこを捜せばおそらく遺体が出て来るでしょう。
全てを終えた西野さんは北側の窓を1つだけ開けました。
窓が開いていれば警察は犯人がそこから逃走したと考え、
平凡な物取りによる犯行だと判断すると思ったからです。」
「じゃあ、窓を開けたのは現場が密室じゃなかったと
見せかけるための偽装だったってことですか?」
「その通りです。
しかし窓の外に足跡がつくはずだというところまでは
頭が回らなかったようですね。
それでもくろみが崩れてしまい、
むしろ密室であることがクローズアップされてしまった。
つまりこの密室は意図して作られたものでは
なかったということです。
あらぬ疑いをかけられることになった西野さんは
仕方なく計画を変更しました。
猛さんの所持品から現住所を調べ、
鍵を使って部屋に入り金塊を置いたんです。
狙い通り警察は猛さんが犯人だと断定することになりました。」
西野は4年前に猛が出て行った時、
心の底からホッとしたと。
二度と帰って来ないでこのまま消えてくれと思ったと。
他人だったら縁を切ることも出来るが、
血が繋がってる限り、親子である限り、
猛は一生自分たちにつきまとって来る。
自分が死んだ後も、明日香の兄であることに変わりはない。
「後悔してるんだよ。
あいつを殺したことじゃない。
どうしてもっと早く殺さなかったのかって。
そうすれば愛実が死ぬことも、
明日香が独りぼっちになることもなかったのに。
どうしてもっと早く。」
芹沢と純子。
「長野行ったの?」
「はい。」
「で、事件は解決した?」
「はい。」
「密室は破れないって言ったじゃないかよ。
だから俺はあれで終わりだと思ってさ。」
「いや、それが違ったんですよ。
ホント意外な結末でした。」
「なんで言わないんだよ。」
「いや、芹沢さん田舎が苦手だって言ってたんで。」
「だけどさ、一応誘ってみなさいよ。
どうしてもって言われたら、
もしかしたら一緒に行ってやったかもしんないじゃない。」
「行きたかったんですか?」
「そうじゃないですよ。そうじゃないよ。
どうやって密室破ったかちゃんと報告しろよ。」
「分かりました。」
今回芹沢は除け者だったわね。
絶対行きたかったとみえる(笑)
なんだかんだ文句言うくせに気になるんだね。
事件は切ないというか、やり切れない?
殺さないで捕まえて引き渡せば良かったのにとも思うけど、
もし出て来た時のことを考えたのかな~。
明日香ちゃんが可哀想だよ・・・
また模型なかったけど今回はCGだった。
あたしもだけど芹沢も模型期待してたんだね(笑)
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