第6話
『綺麗な薔薇には殺意がございます』
文代が乗った車椅子を押す幸三郎。
恭子と俊夫の結婚を認めてやろうと幸三郎。
昨夜はあんなに反対してたのにと文代が言うと、
裕二に説得されたと。
その時、裕二の悲鳴が聞こえ、
急いで声のした方へ行ってみると、
バラに囲まれた恭子の死体が・・・
朝食中の麗子。
影山がサーブしたミルクを麗子じゃなく猫に。
「なんなのよ、その猫。」
「今朝、宝生家の広大なお庭を彷徨っていた、
迷子の迷子の猫ちゃんでございます。」
「あなたも暇ねえ。野良猫の面倒をみるなんて。」
「お嬢様こそ、のんびりと朝食を楽しんでいて
よろしいのでございますか?
朝から藤倉ホテルの創業一族である藤倉家で
殺人事件が起きたと、マスメディアが報じております。
確か、国立署管轄内だったと思いますが。」
慌てて携帯を見ると風祭の名前がぎっしり。
急いで現場へ向かう麗子。
遅れて現場へ到着した麗子。
風祭は未だホウ・ショウレイのことばかり。
バラに囲まれてる女性の死体。
被害者は高原恭子25歳。
駅前のクラブで働くホステスで、
1ヶ月程前から藤倉家で居候していた。
死亡推定時刻は昨夜の1時前後。
死因は絞殺による窒息死。
着衣に乱れや汚れはなく、
どこか室内で殺害され運ばれたものと思われる。
花の中に遺体があったのは祟りなのでは?と風祭。
意味が分からない麗子に紅バラの祟りの話をする。
『明治時代、紅子というメイドが藤倉家で働いていた。
紅子は藤倉家の長男と身分違いの禁断の恋をする。
しかし藤倉家の人間は紅子がたぶらかしたと激怒。
そして紅子の可愛がっていた黒猫を殺してしまう。
すると失意の紅子は大切に育てていたバラ園で自殺。
その後、次々と不幸が起こった。
バラの棘で怪我した藤倉家の奥様が謎の病で病死。
不吉に思った家の人たちはバラ園を解体しようとしたが、
職人達が次々と怪我ををした。
それ以来、藤倉家はバラ園に手を出した者には
祟りがあると言われていると。』
国立七不思議として小学生でも知ってるらしい。
その時、バラの棘が手に刺さり大騒ぎの風祭。
構わず事情聴取する。
夕食時。
テーブルには花瓶にバラが。
「綺麗なバラね~。」
「しかしながら、どれほど美しいバラとて、
お嬢様の美しさの前では色あせて見えることでございましょう。」
「まあ~っ! 影山ったら正直者なんだから。」
「ところでお嬢様。
今宵は何やら不可解な事件にお悩みのご様子。
如何でございましょう。
ご気分が良くなったところで、この影山に詳しくお話を。」
「何それ。 もしかしてあなた、
捜査情報が知りたくて私をおだてたの?」
目を逸らす影山。
「それにつけても、お嬢様の美しさの前では、どんなバラも―」
「あなた私のことバカにしてるでしょ。」
「そんなことはございません。」
「正直におっしゃい。 あなた、何が望みなのよ。」
「お嬢様、国立七不思議の謎を解くことは、
私の幼い頃よりの夢だったのでございます。」
「ハア?」
「中でも藤倉家の紅バラの祟りといえば、
ミステリーファン垂涎の一品。
身分違いの恋、非業の自殺、一族の悲劇、バラ、黒猫、怨念。
まさにそこには、推理小説に欠かせない要素が
凝縮されているのでございます。
これを解かずして、
果たしてこの世に生を享けた意味がございましょうか。」
「そこまで言う?」
「どうかこの影山に解かせてはいただけませんか、
紅バラの謎を―」
「イ・ヤ・だ。 絶対イヤ!
あなたの力なんか借りなくても、
このぐらいの事件、私たちで解決するわよ。
だってこっちはプロなんですもの。」
「分かりました。 では謎解きはプロの警察にお任せ致しましょう。」
「分かればいいのよ、分かれば。」
「何しろ日本の警察は優秀でございます。
関係者の事情聴取と、周辺の聞き込みを何百回も繰り返し、
市民から寄せられる数百件の情報を吟味し、
現場から採取した証拠を何十日もかけて科学的に分析し、
調べて調べて調べぬいて、
いつの日か真実に辿り着くかもしれません。
確かに私のような素人が出る幕では―」
「詳しく話すから、よく聞きなさい。」
ガッツポーズする影山。
「ありがたき幸せ。」
まずは現場にいた4人から話を聞く。
屋敷の主・藤倉幸三郎とその妻・文代。
幸三郎は婿養子で文代が藤倉家の本流らしい。
あとは娘婿の藤倉雅彦と
藤倉家の親戚筋に当たる寺岡裕二。
第一発見者は裕二だった。
裕二は屋敷に10年ぶりぐらいに来たから、
久し振りにバラ園が見たくなり、朝ひとりでバラ園に。
そしたら遺体を発見したと。
バラ園の手入れはいつも幸三郎がしたいた。
何故遺体をバラ園に置いたのか・・・
バラの祟りだと言う文代。
あの逸話は事実で紅子はここで首を吊ったと。
そのことを知らない恭子はバラを切ったらしい。
昔、雅彦も知らずに切ったことがあると・・・
祟りなら警察じゃ太刀打ち出来ないと弱気な風祭。
しかし麗子に叱咤され気を取り直す。
風祭は犯人が恭子をバラの中に寝かせた時、
手に傷をつけたはずだと言い、
みんなに見せるように言った。
すると、幸三郎、雅彦、裕二の手に傷が。
これは恭子を運ぼうとして傷がついたと言う。
恭子が寝泊りしていた離れの部屋に行くことに。
気をつけるよう言う文代。
幸三郎もあの部屋に近づくと咳が出て具合が悪くなると。
その頃、影山は出前のふりして屋敷に入り込み、
記念にバラを切っていた。
テーブルのバラはそのバラだった!
恭子の部屋に入ると誰かと争った形跡があった。
風祭は亡霊だと言い出し、
こういう時は何か食べるといいと、
テーブルの上にあったクッキーを食べる。
隣の部屋にいた影山もクッキーを見つけ、
ティータイム用に取っておく。
屋敷にいた人たちにも話を聞くことに。
藤倉家の長女で雅彦の妻・美奈子。
そして美奈子の弟で藤倉家の長男・俊夫。
恭子が藤倉家の離れに住むようになったのは、
俊夫が結婚するつもりで連れて来た。
恭子とは裕二の紹介で知り合った。
恭子は裕二の学生時代の後輩。
結婚には家族の反発があり、
一緒に住めば恭子の事を分かってもらえると思い、
家に連れて来て離れに住むよう俊夫が恭子を説得したと。
美奈子は財産狙いだと言うが俊夫は何も言わない。
文代は一緒に暮らしてみるといい人ですぐ馴染んだと。
幸三郎も最初は反対したが、
恭子の人柄に触れ、許す気になったと言う。
そして裕二の話を聞き、結婚を認めようと決めたが、
こんなことになってしまった。
昨夜は男4人で11時ぐらいまでマージャンをしていた。
1時にはみんな自分の寝室に行ったと。
その時、美奈子が文代に
深夜庭を散歩してなかったかと聞く。
誰かが車椅子を押して温室の方へ行くのを見たと。
その時間、車椅子は文代のベッドの脇にあり、
眠ってる間に持ち出すことは可能だったかもしれないが、
目が覚めるだろうと文代。
恭子が働いていた『スナック菓子』へ行きママに話を聞く。
恭子は凄くモテたらしく、
プレゼントをかかえた恭子の写真があちこちに。
ママも昔はグラビアやっていたとプチ自慢。
恭子は3年位前に妻子持ちの男に入れあげてたが捨てられ、
落ち込んでいた時に俊夫に出会った。
それからは俊夫一筋だった。
その時、風祭がトイレから出て来る。
恭子の部屋に行ってからお腹の調子が悪いらしい。
現場周辺で聞き込みをしていた捜査員が、
昨日恭子を見たという目撃証言を取って来た。
急に何かに取りつかれたみたいに笑ってたと。
屋敷に戻った麗子と風祭。
物置から物音がして覗くと子供がいた。
美奈子の娘・里香だった。
側には怪我をした黒猫。
そこに美奈子が来て、
猫に触っちゃダメと里香を抱き上げた。
「おじいちゃんが困るでしょ!」
「どお? 影山。 紅バラの謎は解けそう?」
「残念ながら、紅バラの祟りの真相には、
辿り着けそうにもありません。」
「やっぱりそうよね~。 さすがのあなたでも、
祟りの謎までは解決出来る訳ないわよね。」
「いいえ、そいう意味ではなく、
今回の事件は祟りとは全く無関係だという意味でございます。」
「無関係?」
「はい。 高原恭子さんは、祟りなどで死んだのではありません。
これは、実在の人間が犯した殺人事件なのでございます。」
「なんですって? じゃあ、真犯人がいるってこと?」
「勿論でございます。」
「じゃあ、何故犯人は遺体をバラ園に運んだの?」
「お嬢様、注目すべきポイントは何故運んだかのではなく、
何故バラという花を選んだのかということでございます。」
「選んだ? どういうこと?」
他の花にはなくてバラだけにあるものはと聞かれ、
考える麗子。
「分かった! 情熱よ!!」
麗子の推理は全く違う方向に・・・
犯人は恭子を愛していた男だと。
「なんてロマンチックな殺人なのかしら。」
「お嬢様、私は情熱や愛などという
観念的な話をしているのではなく、
もっと具体的な話をしているのでございます。」
「な~んだ。 違うの?
折角ロマンチックな事件になりかけてたのに。
じゃあ、一体どういうことなのよ。」
「失礼ながらお嬢様。
こんな簡単なこともお分かりにならないなんて、
それでもお嬢様はプロの刑事でございますか?
正直、ズブの素人よりレベルが低くていらっしゃいます。」
「フッ・・・今回は素人以下発言かぁ。
さすがの私も学習しているのよ。
あなたの戯言ぐらい軽く受け流せばいいじゃないってね。
でも、いきなりぶっこんでくる。」
「あの、お怒りになられたのなら申し訳ございません。
ただ、私は正直者でございますゆえ。」
「正直に言っていいことと悪いことがあるっつーの!!」
「確かにデリカシーのない発言でありました。
しかしながら、お嬢様の勘の鈍さは遺憾ともしがたく。」
「いちいちカチンとくることを。」
そしてまたもやクビ発言、
その後バラの棘に刺されてしまえばいいと。
その言葉を聞いた影山は「ほぉ~う」と一言。
そこでやっと棘のことに気づいた麗子。
「棘? そうか!
あなたの言っていたバラにしかないものって棘でしょ。」
「さようでございます。
まさにバラに棘があったからこそ、
犯人は遺体をバラ園に運んだのでございます。」
「どういうこと?」
「ここからは少々長くなりますゆえ、
謎解きはディナーのあとに致しましょう。」
まずは恭子が突然取りつかれたように笑ってたのは、
そこに貼っていたポスターを見たから。
そのポスターにはゴキブリの姿をしていたスナックのママが。
ママが言っていたグラビアの正体がこのポスターだった。
だから恭子は笑ったのだと。
物置にいた黒猫は恭子の飼い猫。
ポスターが貼ってあった薬局に、
その猫の餌が売っていた。
風祭が食べたのは猫の餌。
祟りでお腹がいたくなったのではない。
恭子が猫を隠してたのは幸三郎が猫アレルギーだったから。
幸三郎が離れに近づくと具合が悪くなったのは、
猫アレルギーの症状。
恭子の遺体をバラ園に置いたのは、
バラの棘で男達の手の甲に傷をつけるため。
犯人は手の甲に知られたくない傷があった。
そこで遺体をバラ園に運び、
翌朝、死体を動かすふりをしてわざと傷をつけた。
そうすれば元々あった傷が目立たなくなるから。
元々あった傷は、犯行時に猫に引っかかれたもので、
猫もその時怪我をしたのだろうと。
男達は前日にマージャンをしていたから、
翌日手の甲に傷が出来ていたら怪しまれる。
だからそれを隠すためにバラの棘で傷を作ったのだと。
となると真犯人は一体誰なのか。
幸三郎はバラの手入れをしていたので、
手には元々傷がある。
犯人は雅彦か裕二。
犯人は遺体の運搬に文代の車椅子を使ったと
考えられているが、実際は別の物で運搬した。
何故猫が物置に閉じ込められていたのか。
それは誰かが閉じ込めたか、
誰かが出入りする時に入ったか。
物置に死体を運搬するのに利用出来る物があったはず。
それは里香が使っていたベビーカー。
美奈子が見たのはベビーカーに恭子を乗せ、
バラ園に運んでいた犯人だった。
裕二は屋敷を訪れるのが久し振りだったから、
ベビーカーが物置にあるとは知らないはず。
保管場所を知っていたのは雅彦だろうと・・・
殺害の動機は予想はついているが、
犯人に直接確認するのが確実だと影山。
麗子は影山と屋敷へ向かう。
雅彦に恭子を殺害したのはあなたですねと麗子。
殺害時、猫に手の甲を引っかかれ、
その傷を隠すためにバラ園に遺体を置いたんじゃないかと。
「あなたは3年ほど前、妻子ある身でありながら、
高原恭子さんと交際していたのではありませんか?」
証拠はスナックにあった写真。
珍しいバラを持っていた今日この写真があると。
昔捨てた女性が家に来たのを見て、
自分への復讐だと考えたのだろうと。
けどそれは勘違い。
恭子は純粋に俊夫を愛していた。
雅彦のことなどどうでもよかったのだと。
そして事件は解決。
またショウレイを見て驚く風祭。
しかし紅子か?と・・・
部屋に戻って来た麗子。
「でも、ホント バカよね。
勘違いして殺すなんて。」
「世の中の怪奇現象と同じでございます。
人は見えない何かに怯え、
理解出来ないものを自分勝手に解釈してしまう。
人を疑うことは大切です。
しかし、疑い続ければ必ず怒りや憎しみが生まれる。
素直に人を信じることも大切だということを、
お忘れなきよう。」
お辞儀して部屋を出て行こうとする影山に
声をかける麗子。
「でも、あなたもホント悪戯好きよね。
あんな亡霊みたいなの、どうやって用意したのよ。
あっ、でも宝生グループの力を持ってすれば、
出来ないことなんてないんでしょうけどね。」
「やはり、お嬢様にも見えたのでございますか。
実は、あれは私が仕掛けたのではございません。」
「じゃあ、何? なんだっていうの?」
「さあ?」
「さあって!!」
「お嬢様、やはり国立七不思議の謎は、
容易には解けそうにはございません・・・ね。」
怖がる麗子。
ニヤリとする影山。
麗子も風祭も刑事に向いてないよね(-_-;)
「情熱よ~」って言った時、影山じゃなくてもアホだろと。
ズブの素人でもすぐ分かるのにね・・・
しかしお嬢様の長台詞はダメだよ~。
学芸会演技がより目立っちゃうじゃない!! (>ω<。)
が、その不快感?を上回る影山の可愛さったら(>艸<*)
なんですか、あの猫ちゃんとのショットは!!
可愛すぎるでしょ~。
白猫ちゃんも美人顔だったから余計にね。
次回なんてウサ耳つけてたよ!?
どうするよ?
萌え転がっちゃうよ? (笑)
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