ヒラリー・リスター

2007年07月27日 | 風の旅人日乗


ヒラリー・リスターという英国人女性セーラーのことを知っていますか?

ヒラリーは今年35歳。その彼女がこの7月24日、シングルハンドでイギリス南端の島、ワイト島をセーリングで一周した。
アメリカズカップの起源であるワイト島一周のコースそのものは、距離にして50マイルの、ごくありきたりで、ウイークエンド・セーラーにとっも、レースでもよく走る一般的なコース。

でも、ヒラリー・リスターが、彼女の意思で動かすことができるのは顔と首だけという、重度の四肢麻痺障害者であることを知ると、ぼくは彼女が成し遂げたことに驚嘆せざるを得ない。一人でセーリングすることをシングルハンド・セーリングというけれど、彼女の場合はその「ハンド」さえ使えないのだ。

彼女は、特殊なストローをくわえ、そのストローに空気を吹き込むことと、吸い出すことで、舵とセールをコントロールしてセーリングする。具体的にどのような機構なのかは分からないが、いずれにせよ、常人には到底不可能と思える方法を会得して、50マイルの海をセーリングで走り切ったのだ。

ヒラリーは、生まれつきの四肢麻痺障害者ではない。
彼女は健康な女の子としてイギリスに生まれ、スポーツが大好きな活発な少女として育った。
しかし、11歳のころからひざを動かすことができなくなり、15歳のときには歩けなくなった。運命はさらに厳しく彼女に襲い掛かり、ついには首から上以外の随意筋が動かなくなってしまう。
しかし、その過酷な運命に彼女は屈しなかった。不自由になっていく身体に絶望することなく、音楽を学び、水泳に挑戦し、車椅子で海外に旅行した。

不自由な体に屈することなくありとあらゆることに挑戦していく彼女が、ふとした偶然で出会ったのが、セーリングというスポーツだ。
自由に動き回ることの楽しさを、彼女はセーリングで思い出した。そして自分の運命への挑戦をセーリングで具現することを考えるようになった。

彼女は昨年英仏海峡を単独で横断するという快挙を成し遂げた。
そして今年、ワイト島一周に成功した。
来年の彼女の計画は、イギリス一周だ。これは彼女にとってとてつもないチャレンジであり、冒険だ。
しかし、ワイト島1周を成し遂げたばかりの彼女はもう、その夢に向かって準備を始めているのだという。

ここのところ、個人的に、嫌な人間ばかりを立て続けに見てしまい、人間不振に陥りかけていたのだけれど、彼女の凛々しい行動に、勇気をもらった。それに加えて、セーリングが人間に作用する力について、改めて考えさせられた。

何か、自分なりに、微力であっても陰ながら彼女を応援したいと思い、自分のブログを使って、彼女がセーリングで成し遂げた偉業と今後の彼女の計画を紹介させてもらうことにしました。