1月8日 ディスマスト

2009年01月08日 | 風の旅人日乗
[PRB photo:Vendee Glove]

昨日、ベンディーグローブレース中に
キールバルブが脱落して艇が転覆したJean Le Camを自艇に引き揚げる際に、
その転覆しているヨットに強引に接近しすぎて接触し、
マストとラダーを痛めたVincent RiouのPRBが、
ホーン岬を通過した後に、案の定というか、その痛めたマストを折った。

PRBに乗っているVincent RiouとJean Le Camは、
潮に流されているボクたちを見守って欲しい、と呼びかけている。
付近を航行中の船舶に、ぼくたちを曳航して欲しい、と求めている。

[photo: Vendee Glove]

最初の転覆事故の時に、
Jean Le Camをすでに救出する直前だった自分たちに最後まで任せてくれれば、
この2次災害は起きなかったのに、
と思っているに違いないチリ海軍は、しかし、
今回もこの2人に手を貸そうとしているように見える。
野太い海の男たちだ。

Vincent RiouとJean Le Camは、
地球をノンストップで回るような究極のレースに参加しているセーラーたちである。
しかも、シングルハンドの世界では名の通ったセーラーたちである。
しかもJean Le Camは前回のレースの優勝者である。
そんなベテランにとって、ジュリーリグ(応急マスト)を立てて
自力帆走することはできないことなのだろうか?

海の上で自艇に何が起きても、自助努力で無事に陸に帰るために、
最後の最後まで粘り強く手を尽くし、努力すべし、
とされたオフショアヨットマンの『武士道』は、
もはや幻のものになってしまったのか・・・。

1月8日 処罰

2009年01月08日 | 風の旅人日乗
ボルボ・オーシャンレース第3レグで、
スリランカの南にレースコミッティーが設置した航行禁止区域に進入したという理由で、
エリクソン3に1ポイント減点のペナルティーが課せられた。

この航行禁止区域は、政情不安のスリランカ沿岸に出没する海賊の危険に
レース艇が遭遇しないよう、レースコミッティーが熟慮の末決めたもの。
エリクソン3がその航行禁止エリアに入ったのは、
GPSに残されたデータによると3分40秒間。
わずか3分40秒の間違いではあるけれど、
セーラーたちの命の危険を避けるための規則を破ったエリクソン3に、
予想以上の厳しい処罰が与えられた。

この審問に続いて、バウセクションを無断で交換したエリクソン4に対して
計測委員会が抗議しているケースの審問が行なわれている。
エリクソン4が減点の処罰を受けることになれば、
2位のテレフォニカブルーとの4.5ポイントの得点差がさらに縮まり、
シンガポールで明後日に予定されているインポートレースが、
とても見応えのあるものになってくるはずだ。

1月8日 抗議

2009年01月08日 | 風の旅人日乗
[photo: Volvo Ocean Race]

ボルボ・オーシャンレースの第5ステージ、
シンガポールでのインポート・レースを今週末の土曜日に控えて、
2隻のエリクソン艇が3つの抗議を受けている。
現在2位のテレフォニカブルーに4.5ポイント差をつけてトップにいるエリクソン4は、
計測委員会から抗議を受けている。
すべてのボルボオープン70クラスは計測を受けなければならず、
各計測ポイントには公式計測員の手で、タッピングボルトが埋め込まれている。
しかしエリクソン4の船首の計測ポイントにそのボルトがなかった・・・・。

シンガポールのエリクソンチームのコンテナの横に、バウセクションが転がっているのを、
たまたま通りかかった計測員が目にしたことからこの案件は始まった。
エリクソン4側の説明によれば、
エリクソン4は計測を受けた後、レースの前のトレーニング中にバウを損傷して、
バウをそっくり取り外し、同じモールドから造ったバウをすげ替えた。
その際に再計測を申請し忘れた、という。

取り替えた古いバウは、修理をした上で、
予備として各ストップオーバーに運び込んでいるという。
コンテナの横に転がされていたその古いバウを、計測員が見つけて
今回のプロテストに至ったというわけだ。

エリクソン3は2つの抗議を受けている。
一つは、テレフォニカブルーから、ひとつはレースコミッティーから。

テレフォニカブルーとのケースは、第3レグの、
マラッカ海峡に入ってからの接戦でのこと。
夜間、スターボードタックでジェネカーで走るテレフォニカブルーに、
エリクソン3がポートタックで接近し、
テレフォニカブルーがベアアウエイして辛くも衝突を回避した、というもの。

しかしこの抗議は、テレフォニカブルーが取り下げた。
スキッパーのバウエ・ベッキンによれば、その理由は、
「よく考えたら、ここでエリクソン3を失格にしてしまったら、
第3レグでエリクソン3のあとにフィニッシュしたエリクソン4の順位が繰り上がってしまい、
エリクソン4のポイントが増えることに気が付いたから」
抗議を出す前に、それくらいのことは分かりそうなものだけど・・・

でもテレフォニカブルーはこれで安心できたわけではない。
エリクソン3に出されているもう一つの抗議は、レースコミッティーからのもので、
「エリクソン3は、第3レグのスリランカ南のウエイポイントを通過してない疑いが強い」というもの。
もしこの抗議が通れば、エリクソン3の第3レグ3位はなくなってしまい、
バウエが恐れるように、エリクソン4が3位に繰り上がり、
ポイントをさらにゲットすることになる。
ただし、それも、エリクソン4の無断船首すげ替えがお咎めなし、となった場合だけど・・・。

この2つのケースの審問は、本日中に行なわれる予定。

『マリンウェザー海快晴』の携帯サイトで、
日本語の解説を加えたボルボ・オーシャンレースの迫力の動画を配信中(毎週1回金曜日に更新)。
http://umikaisei.jp/?afid=nishimura