1月7日 救出

2009年01月07日 | 風の旅人日乗
ホーン岬の200海里西の海上で転覆していたVM Matériauxから、スキッパーのJean Le Camは無事救出された。

チリ海軍のヘリとタグボート、付近にいた僚艇2隻、そして付近を航行中に現場に急行してきた貨物船がスタンバイしての大ミッションだった。
チリ海軍のヘリコプターからの画像では、キールバルブが外れている様子が分かる。
同じようにキールバルブが外れて転覆の危機に直面した、別のシングルハンド地球一周レース参加艇が、
オーストラリアの南で運良く貨物船に救助されたニュースが流れたのは、つい3日前のことだった。



サバイバルスーツを着込んで浮かんでいるJean Le Camを救助するために
チリ海軍のタグボートからはダイバーも飛び込んだ。
陸から200海里という距離は、横須賀から八丈島よりももっと離れている。
チリ海軍のタグボートは、荒れた海の中を、危険を冒して、
かなり無理して突っ走ってきたのだろう。

そのチリ海軍によるミッションの最中、Jean Le Camを最終的に引き揚げたのは、
別のレース艇PRBに乗るVincent Riouだった。
強引に転覆艇に接近したため、PRBはVM Matériauxに接触してしまい、
片方のラダーとマストにダメージを受けた。
これでPRBがレースを続行できるか否かも微妙になっている。

海難救助のプロであるチリ海軍のダイバーが飛び込み、
Jean Le Camを問題なく救出しようとしている最中に、
PRBのVincent Riouは、なぜわざわざ危ない接近を試みたのだろう? 
気持ちは分からないでもないが、その結果、2次災害に近いダメージを自艇に受けている。

PRBが無理な接触を試みてラダーとマストを傷つけたのを知っていても、
Jean Le CamがPRBに引き揚げられたのを確認した後、
チリ海軍のタグボートとヘリコプターはPRBを振り返ることなくすぐに基地に引き返したという。
その気持ちのほうが、よく理解できる。

ベンディーグローブ運営側では、この救出劇を、
選手が選手を助けた美しいストーリーとしてメディアに流しているが、
これから先、別のレースで同じような事故が起きたときに、
チリ海軍の対応に微妙な影響を与えてしまうのではないか?

出走した半分以上がリタイアし、何か根本的なところに問題を内包しているかのように見えるベンディーグローブは、
今後の健全なオフショアレースのありかたに議論を提起してしまうことになりはしないだろうか?
不安を覚えている。