[第34回アメリカスカップビレッジ想像図]
リーダー的存在になるべき日本人セーリング関係者たちの間で、第34回アメリカスカップへの挑戦の意思が皆無であるということが分かってガッカリしたこともあり、先に進めなければならぬ自分自身の仕事もいくつかあり、担当のT崎さんにご迷惑をかけることに後ろめたさを感じつつ、その案件を先延ばしにしてきた。
ところが昨日の夕方、相模湾で行われたレースの表彰式に出てぼんやりしていたら、パーティーの最中に、若手トップセーラーのひとり、A川U彦が、あの怖い顔をしてスススっと近づいてきて、あのだみ声で、
「アメリカスカップに出るの、どうなんっすか。なんとかならないんっすか。ユースアメリカスカップって、どうなんっすか」
と矢継ぎ早に詰問してきた。
最初は 、「どうやら難しそうだなあ」
なんてはぐらかしていたんだけど、ヤツの攻撃の手は緩まない。
実は、正式なプロトコールが発表されてから、またいろんな資料がドドンと送られてきたけど、あとで読もうと思って、ほっぽりぱなし。
だって日本から誰も手を挙げないアメリカスカップ挑戦のための細かい内容など、慌てて見る必要がないから。
セーリング連盟のウエブマガジンの記事にしたとしても、いったい何人の会員セーラーが興味を持って読むのかなあ、なんて冷めた気持ちもあった。
でもね、U彦の真剣さを見ていて、思い直したよ。
次世代の日本人セーラーが、セーリングの技を磨き続けるモチベーションとなる夢を持ち続けるためには、オリンピック以外にも、何か、大きな、壁のように立ちはだかる目標が必要なんだ。
「あそこに見える山は世界で一番高い山で、おじさんたちは3度ほどあの山の頂上近くまで行ってきた。とても挑戦し甲斐のある山だったよ。
おじさんたちがあの山に挑戦できたのは、おじさんたちに実力があったというよりも、時代が良かっただけかも知れないんだけどね。
君たちはもしかしたらあの山に登れる実力はあるかもしれない。だけど、時代が変わっちゃってさ、残念ながら君たちは、あの山の麓にさえ行けないことになっているんだよ、アハハ」
なんて、アメリカスカップ挑戦を経験した我々世代のセーラーは、次世代のセーラーに対して言ってはいけないのだ。
U彦の真剣さに打たれて、まずは今できることから始めることにした。第34回アメリカスカップの詳細情報についてまとめる作業を、本日昼前に開始。
飯を食うための仕事を優先しなければならぬという、つらくセチ辛い事情ありますが、T崎さま、この作業できるだけ急ぎますのでご容赦を。