9月21日 The 34th America's Cup

2010年09月21日 | 風の旅人日乗
本当は、先週金曜日までに提出しなければいけない案件のひとつに、日本セーリング連盟のウエブマガジン用の、第34回アメリカスカップ情報に関する詳細情報記事を作成すべし、というのがありました。


[第34回アメリカスカップビレッジ想像図]


リーダー的存在になるべき日本人セーリング関係者たちの間で、第34回アメリカスカップへの挑戦の意思が皆無であるということが分かってガッカリしたこともあり、先に進めなければならぬ自分自身の仕事もいくつかあり、担当のT崎さんにご迷惑をかけることに後ろめたさを感じつつ、その案件を先延ばしにしてきた。

ところが昨日の夕方、相模湾で行われたレースの表彰式に出てぼんやりしていたら、パーティーの最中に、若手トップセーラーのひとり、A川U彦が、あの怖い顔をしてスススっと近づいてきて、あのだみ声で、
「アメリカスカップに出るの、どうなんっすか。なんとかならないんっすか。ユースアメリカスカップって、どうなんっすか」
と矢継ぎ早に詰問してきた。

最初は 、「どうやら難しそうだなあ」
なんてはぐらかしていたんだけど、ヤツの攻撃の手は緩まない。

実は、正式なプロトコールが発表されてから、またいろんな資料がドドンと送られてきたけど、あとで読もうと思って、ほっぽりぱなし。
だって日本から誰も手を挙げないアメリカスカップ挑戦のための細かい内容など、慌てて見る必要がないから。

セーリング連盟のウエブマガジンの記事にしたとしても、いったい何人の会員セーラーが興味を持って読むのかなあ、なんて冷めた気持ちもあった。

でもね、U彦の真剣さを見ていて、思い直したよ。

次世代の日本人セーラーが、セーリングの技を磨き続けるモチベーションとなる夢を持ち続けるためには、オリンピック以外にも、何か、大きな、壁のように立ちはだかる目標が必要なんだ。



「あそこに見える山は世界で一番高い山で、おじさんたちは3度ほどあの山の頂上近くまで行ってきた。とても挑戦し甲斐のある山だったよ。

おじさんたちがあの山に挑戦できたのは、おじさんたちに実力があったというよりも、時代が良かっただけかも知れないんだけどね。

君たちはもしかしたらあの山に登れる実力はあるかもしれない。だけど、時代が変わっちゃってさ、残念ながら君たちは、あの山の麓にさえ行けないことになっているんだよ、アハハ」
なんて、アメリカスカップ挑戦を経験した我々世代のセーラーは、次世代のセーラーに対して言ってはいけないのだ。

U彦の真剣さに打たれて、まずは今できることから始めることにした。第34回アメリカスカップの詳細情報についてまとめる作業を、本日昼前に開始。
飯を食うための仕事を優先しなければならぬという、つらくセチ辛い事情ありますが、T崎さま、この作業できるだけ急ぎますのでご容赦を。

9月18日 日本の若者の海離れ

2010年09月18日 | 風の旅人日乗
仕事の合間、歩いている最中、寝る前の5分、などに、
「日本の若者が海に行かなくなっているらしい」、ということについて、断片的に考えている。

それは、よくないなあ、とは思う。
思うけど、そう考えながら歩いている最中に、
「なぜ、若者が海に行かなければいけないのか、その理由を述べてください」と、
前から歩いてきた若者たちに突然尋ねられたら、いまの自分はスラスラと答えることができるか、とても自信がない。

よく考えてみたら、ニッポンの若者たちが海に興味を失っているらしいことをぼくの周りで嘆いているのは、自分も含めて、海の職業関係者か、熟年に属するマリンスポーツ愛好家たちだ。

海の職業関係者にとって、次世代が海に来なくなることは、死活問題にも繋がる。
マリンスポーツ愛好家にとっても、そのスポーツが衰退していくのを見るのは悲しいことだろう。
だから、ぼくを含めたその人たちの嘆きは、ニュートラルな立場での感想ではないかもしれない。

そうすると、海にあまり関わりなく生きている大多数の普通の日本人の人たちは、日本の若者が海に行かなくなったことに、どういう感想を持っているのだろう?
ぼくの周囲にいる人たちの感想ではなく、その人たちの感想のほうが、代表的な日本人の感想ということになる。
でも、おおよそ予想できるその感想に、将来の日本がそのまま流されてしまうとしたら、
それは、やっぱりとても怖いような気がする。

もし、若者たちに、海に行かなければいけない理由を教えてください、と真摯な眼差しで迫られたら、
どういうふうに答えるべきか、今朝の行動開始時間前の、1時間だけ考えてみる。

ぼくたち日本の海関係者は、「脳」ではなく、「身体」で海から学んできた。
海が、海に向き合って生きてきた人間にどういうことを教えてくれ、どういうことを考えさせるようになるか。
そのことを、「脳」ではなく、海に「身体」をさらすことで、「身体」で理解してきた。
それを理解するには時間もかかるし、だれもが平等の深さで理解できるものでもない。

それは、さ、例えばインターネットを介して、平等に与えられる知識として無数の「脳」で瞬時に共有できる種類の知識とは違うんだ。

「脳」ではなく、「身体」をその場にさらすことで得る知識だから、言葉や文字に置き換えることは、とても難しい。

それをうまく君たちに伝えるには、昔の人類に、人類のあり方や生き方のヒントを与えてきたような、天才的な哲学者が必要かもしれない。

ナイノア・トンプソンというハワイ人がいる。
彼は、人間が「身体」に備えている能力だけで、何日もかけて大きな海を渡り、また自分の島に戻ってくることができることを、もう何十年も自分の「身体」で示してきた人だ。

ぼくには、現在の彼が、人間の備えている能力だけで何度も海を航海してきた「身体」の知識を通じて、人間と、一方向に進み続けている科学との関係のあり方を示すヒントを掴みかけているように見えるんだ。

ぼくは、ナイノア・トンプソンが、初めて海から生まれた現代の哲学者になる可能性がある、と思っている。

ナイノアが、海と人間と、どんなふうに関わってきたのかを、じっくりと一緒に見ていかないか?
そうしたら、君が、海というものに興味を持つことだって、有り得ないことではないと思うんだ。


9月17日 アメリカと日本に特許申請中のセールです

2010年09月17日 | 風の旅人日乗


[HAYAMA SAIL]

日本とアメリカに実用新案特許を申請中のセールを、先週、葉山沖でテストした。
「HAYAMA SAIL スティングレイ」という名前で発売する予定。

ところがその夜、偶然のように、知り合いのカメラマンから、
「面白いセールをスウェーデンで撮ってきました」というメールが来て、写真が添付されていた。

それはキャットリグのメインセールで、ジブとメインセールの違いはあれ、HAYAMA SAILとほぼ同じアイディアのセールで、
60年ほど前にスウェーデンから米国に特許申請が出され受理されたセールであることが判明。

そのセールの特許がまだ有効か否かを現在調査中。
もし問題なければ、近日中に発売します。

HAYAMA SAIL は、見かけは普通のファーリングジブ。


[HAYAMA SAIL]

しかーし、

クローズホールドやリーチングでは普通のジブだけど、ダウンウインドに入ると、
なんと、このセール、自動的に左右に分かれて開き、セール面積が2倍になる。
スピネーカーポールも、ウイスカーポールも、なにもいらない。
乗っているクルーもゲストも、コクピットに座ったまま、何もしなくて大丈夫。


[HAYAMA SAIL]
(撮影しやすくするためにメインセールを降ろしていますが、通常はメインセールを揚げたまま使います)


船首を回して風に向かうと、再び自動的に2つに折りたたまれて、普通のジブになる。
セットや収納が面倒で、しかも高価なスピンやジェネカーも使わず、ダウンウインドのスピードを楽しみたいクルージングセーラーのための、1枚2役のセールです。


テストセーリング中の映像と、詳細説明を
www.compass-course.com
で、近いうちに紹介する予定です。

興味のある人は、ぜひお問い合わせお待ちしています。
お試し用のデモセールも用意しています。



9月16日(木)のつぶやき

2010年09月17日 | 風の旅人日乗
04:59 from web
さてと、今日もいい一日にできるかな?しますよ
06:31 from web
今日は一日かけて海をテーマにある企業とブレスト。頭を絞り尽くすつもり
16:27 from web
ミーティング終了。いや、頭を絞りつくしました。少し前進したかも。今夜は鎌倉に頭のクールダウンに行くつもり。
21:16 from web
鎌倉から帰着。久し振りに津久井でお好み焼き。明日は再びパソコンに向かいホクレア事案と第34回アメリカスカップ情報整理。週末の連休は、スイミング、そしてセーリングレースです。
by KazuNishimura on Twitter

9月15日(水)のつぶやき

2010年09月16日 | 風の旅人日乗
06:14 from goo
この3,4日の近況です #goo_compass-nishimura http://blog.goo.ne.jp/compass-nishimura/e/d2d13d5a38525b2aa914fafe8b3be5f0
06:34 from web
早朝から、先週土曜日に東京ディズニーリゾートの沖で試乗した「パイオニア9パイロットハウス」という種類のヨットの試乗レポートを執筆中。
11:12 from web
もう少しでモノカキ仕事終わる。コーヒーを沸かしテラスでひと休み。昨日までは躊躇していた陽射しの中に座ってみる。太陽光線と秋風の組み合わせが、肌にとても心地いい。
16:41 from web
さあて、これから浜を走って、桟橋で腕立てと腹筋して、時間あったらシャワー浴びて、なかったら汗だくのまま自転車に乗って保育園にお迎えに行って、夜は明日の打ち合わせを兼ねて、多分逗子か葉山で食事
by KazuNishimura on Twitter

9月15日 

2010年09月15日 | 風の旅人日乗

早朝から、先週土曜日に東京ディズニーリゾートの沖で試乗した「パイオニア9パイロットハウス」という種類のヨットの試乗レポートを執筆中。
1号艇が30年前にデビューしたという、とても古いモデルではあるけれど、まったく古臭さを感じない艇だった。
日本の職人さんたちが造ったヨットに乗ることは、この時代とても難しくなっているけれど、この艇はその意味でも稀有な存在。

[copyright/Okazaki boatyard]



その翌日の日曜日に、同じく東京湾で、前日と同じ海面でのレースで乗った艇も、20年近く前に進水した日本製の艇。そのメーカーがヨット造りビジネスから撤退して、もうずいぶん経つ。
そんな、古いデザインのおばあさんヨットなのに、なぜかそこのヨットクラブではとても高いレーティングを頂戴していて、勝つのがとても難しい。
だけど、折角の日曜日、楽しまなければもったいない。レーティングの高さに不満を訴えるよりも、そのことをポジティブに捉えて、その壁の高さを乗り越えることを楽しむようにしよう、とオーナーやクルーたちと話し合っている。
その日は、全員が力を合わせて、その壁を乗り越えることができた。
勝つのがとても難しいだけに、喜びもひとしお。レーティングの高さに全員で感謝。

月曜日は、東京海洋大のT村先生に相談事があり、品川でお昼を一緒に食べた。
ホクレア号関係のことについて、たくさんのヒントをいただいた。

そのあとは、関東の古豪レースヨットのN森オーナーと、日本の外洋ヨットレースが再び盛んになっていくためにはどうしたらいいのか、夕方からいろんな話をした。


[photo by Yo Yabe/KAZI]

N森オーナーには、日本の外洋ヨットレース発展のために深く考えていることがある。
それを側面支援できればいいな、と考えている。

今日は、昨日から始めた試乗レポート執筆を、午前中までになんとか終えさせ、午後からは、明日の打ち合わせの準備に頭を切り替える。
明日のミーティングというのが、これがまた、ウフっ、と言いたくなるくらい楽しくて夢のある案件なんだな。
なんとしてでも実現の方向に進み始めさせるために、頭を整理して、キチンと準備を詰めておこう。




この写真は、今日の話とまったく関係ない。
今年8月10日、モロカイ島からホノルルに超小型機で帰ったとき撮った、真珠湾に入港しようとしている原子力潜水艦。
カマヘレ&ホクレアのキャプテンのマイク・テイラーの奥さんのローラさんは、真珠湾基地のアドミラルの秘書で、日本の自衛隊の艦船や米軍原子力潜水艦の出入港スケジュールが、食事中の話題によくのぼる。
そのときの話のネタにして、なんという名前の潜水艦か聞こうと思って撮ったのだけど、そのあと帰国するまで、今回はローラさんに会う機会がなかった。


9月13日 東京湾、伝統航海術

2010年09月13日 | 風の旅人日乗
昨日の東京湾には、8ノットから10ノットの風が吹き、とても楽しいレースをすることができた。

晴れて、暑くなったにもかかわらず、朝の北東風は、10時45分のスタート時には一旦90°(東)まで右に振れたものの、その後再び60°(東北東)まで左に振れ戻った。

すべての気象予報サイトが予想できなかったこの風を読み切った艇が、昨日の東京湾のヨットレースの上位に入ったわけだけど、
あんなに暑くても南のシーブリーズが入ってこないなんて、もう夏じゃないんだなあ。

レースしながら見ていると、羽田空港に直陸する飛行機は一日中、南からアプローチして北に向かって着陸していたし、北に向かって離陸する飛行機は、あっという間に高度を上げて、高々と舞い上がっていた。
つまり、上空には強い北系の風が吹いていたということなんだね。
だから、その風に阻まれて、南からシーブリーズが入ってこられなかった、ってことかも。

昨日、下記のようなコメントをいただいた。
コメントには個人情報が入っていて、コメントを公開するときにコメントの一部を削除する方法が分からなかったので、個人情報を除いて、ここにそのコメントを掲載させていただきます。

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西村さん

はじめまして。
伝統航海術で検索し、こちらにたどり着きました。

泳ぎが得意なわけではないですし、マリンスポーツに取り組んだこともありません。

水に親しみたいという強い衝動が湧き上がり、また、いのちの根源である水との関わりが、これからの重要なテーマになるのではないかと感じました。
今は、何の技術も持っておりませんが、これから自分に出来ることを模索していきたいと思います。

若くはありませんが(27歳、女性)、今から伝統航海術を学ぶことはできるのでしょうか?

情報をいただけますと幸いです。
このような形でのコメント、その失礼をお許しください。
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水、伝統航海術、に強い興味を持つ若い日本人がいることに、とても勇気づけられます。

情報については、長い文章になりそうなので、急ぎの仕事が落ち着く来週以降に、いただいたアドレスか、このブログで報告させていただきます。
現在ホクレア号のプロジェクトで太平洋の伝統航海術の勉強をしているのは、日本人女性も含め、女性が主流です。
30歳代の女性もいますよ。ですので、全然遅くありません。

現代のレースヨットで太平洋などを渡るとき、飲み水は海水をろ過して作ります。
つまり太平洋が身体の中を流れ、その一部が自分の身体になるんです。
太平洋を航海中は、太平洋の水そのものが、いのちの根源になるんです。

その水に含まれている微粒子には、太平洋で遭難して行方不明になったままでいる何人かの友人の身体から溶け出した有機物の分子が混ざっているかも知れない。
そう思うと、水を飲むときにも厳かな気持ちになります。

9月10日 今日は、昴で始まった

2010年09月10日 | 風の旅人日乗

[昴、Makalii、 Pleiades] photo by NASA

1時半に目覚めて、空を見上げたら、最初にすばるが目に飛び込んだ。少し西で光り輝いている木星にも迫る目立ちぶり。

昨日の台風9号が日本列島を通過するまでは、こんなにクッキリとこの星団が見えることはなかったのに。

これまでの太平洋高気圧の、湿度の高い大気が太平洋方面に退いていって、乾燥した大気が関東の上空に流れ込んできたんだなあ。

天高く、馬肥ゆる季節。

いよいよ秋かな。ちょっと寂しい。

ま、この夏の暑さの中で考えたり働いたりするのが辛そうだった御高齢の2台のパソコンが、秋になったのを機にシャッキリと立ち直ってくれれば、
それはそれで有り難いことではあるけれど・・・。

昨日午前中の、ケンタロー先生とのミーティングは、充実度満点だった。
人生は短い。
目標に向かって前進あるのみ!

9月9日 第34回アメリカスカップ

2010年09月09日 | 風の旅人日乗


 2週間ほど前、ニッポンの暑い夏でのセーリングを忙しく楽しんでいる頃、ラッセル・クーツから久し振りにメールが来た。



「第34回アメリカスカップに参加を検討しているチームのために、専任担当者を任命してホットラインを設けた。とにかく、取り敢えず、すぐに彼に電話せよ」。

そのホットライン専任担当者は、これまでプラダチームなどでもコミュニケーションマネージャーを務めたこともあるニュージーランド人。
ラッセルから知らされた彼のオフィスの住所や電話番号も、ニュージーランド南島のクライストチャーチだ。

訳が分からないまま、言われた通りに取りあえず、彼に連絡してみると、
「9月13日に向けての第34回アメリカスカップのプロトコール発表前に、参加可能性のあるチームにその内容について大至急検討してもらいたいのです」、
とのことで、資料がごっそりと送られてきた。

ぼくが勝手に返事する立場にはないので、これまでの3度の日本のアメリカスカップチャレンジの中心人物だった重鎮お二人に、事の経緯を御説明し、「お二人のお考えを先方に伝えるので、」とお話して、送られてきたすべての資料をお渡しした。

来週9月13日に、スペインのバレンシアで発表されるプロトコールには、第34回アメリカスカップの開催時期と、レースで使われる艇の細目が盛り込まれることになっている。



クライストチャーチから送られてきた資料によると、すべての資料に、開催時期は2014年、と記されている。
どうも、第34回アメリカスカップは、2014年に開催される方向で煮詰まっているようだ。

気になる第34回アメリカスカップに使われるレース艇は、モノハルなのか、マルチハルなのか。

送られてきた「挑戦のための予算試算ガイダンス」と、「2011年から2014年の本戦までのレーススケジュール案」は、マルチハルの場合のバージョンの資料しかなかった。
文脈からすると、モノハルの場合の同じ種類の資料があるようなのだけれど、そちらは送られてこなかった。

ということは、暗に、「マルチハルを採用することになりそうだよ」、と仄めかしてくれているのか?

マルチハルになる場合の、艇のデザインファクターも相当細部まで煮詰めているようで、かなり精密なスケッチが何種類も添えられている。

それらのスケッチによると、第34回アメリカスカップ・マルチハルバージョン艇は、第33回アメリカスカップで敗退した防衛艇、アリンギ5によく似た構造のカタマランだ。




第34回アメリカスカップ制式艇マルチハルバージョンの主要目は、

全長 22.0メーター
幅  15.5メーター
重量 7200kg
セール面積 700㎡

となっている。
3つのウインチドラムと3つのコーヒーグラインダーがそれぞれの舷に装備されている。
メインセールは、フラップ機構付きのハードウイングだ。

レースフォーマットは、2011年から2013年まで防衛チームと挑戦チームの全チームが参加して世界ツアーを行なう。その際の艇の移動費は、すべてレース主催者持ち。レース主催者が全チームの艇とコンテナをまとめて積める貨物船をチャーターするか、あるいは買い取るようだ。

またその世界ツアーの間の各地でのコンパウンドは、分解してポータブルな持ち運び可能なものとし、セールロフト、選手食堂などの施設は全チームでシェアして、各チームの出費をできるだけ抑える努力をする。

2014年の本戦で開催地に拠点を定めてからも、共有できる施設はできるだけ共有するようにする。

因みに、開催地でのレースビレッジのCGの背景は、サンフランシスコを思わせた。

これも因みに、だけど、サンフランシスコ市は先月に、アメリカズカップビレッジとして開発する市内の3つの候補地を発表している。

また、これらの資料には、第34回アメリカスカップに挑戦する場合の(そしてそれがマルチハル艇で行なわれた場合の)、2011年から2014年までの総予算の試算も添えられている。

それによると、現在のユーロ為替で、支出を切り詰めたエコノミー挑戦の場合で、約68億円。
スタンダード挑戦の場合は、約89億円だという試算だ。
この中には、約1億7000万円のエントリー費も含まれている。

また、エコノミー挑戦、スタンダード挑戦の両バージョンとも、艇を1隻、ハードウイングを2枚作る場合の試算になっている。
つまり、そういう数制限のあるクラスルールを作りつつあると思われる。

これらの資料を見ていただいた、これまでの日本のアメリカスカップ挑戦を推進してきた重鎮の方々は、
「厳しい経済状況とは言え、若い世代の日本人リーダーによるチャレンジを期待したい」
とおっしゃっています。


9月5日 TeamNishimuraProject @ お台場 船の科学館

2010年09月06日 | 風の旅人日乗
毎月第1日曜日は、Team Nishimura Project in Odaiba、船の科学館でのセーリング体験イベント開催日。



この催しのスタッフウエアは、ヘリーハンセン・ブランドを展開している株式会社ゴールドウインの提供。
2005年の「愛・地球博」記念こどもセーリングキャンプ以来ずっと、ゴールドウインとヘリーハンセンは、私たちTeam Nishimura Projectを応援してくれています。





今日も9名の、頼もしいスタッフが集まってくれた。



楽しいセーリング体験イベントしてますよ、という館内放送が流れないにもかかわらず、今回も、午後だけで、60名の子どもたち・お母さん・お父さんが、セーリングを初めて体験した。







2006年から創まったTeam Nishimura Project でセーリングを体験した人たちの数は、昨年秋の時点で1000名を超え、順調にさら数字を伸ばしつつあります。







最近ちょっと悲しいのは、この催しを、使っている艇の販売促進会だと思っている人が意外と多いこと。

いえいえ、ワタクシたちのこの催しは、このヨットの販促試乗会ではありません。
そういう類の催しだったら、船の科学館が、貴重な施設を使わせてくれるワケがありません。

「高校や大学に入ったらヨット部に入部したいと思う子どもが増えてほしい」、
「セーリングを知って地球と自然のことを考える人たちが増えてほしい」、
「日本が再び海洋文化国家としてよみがえってほしい」、
「そんな人たちがいっぱい住む日本から、西洋のセーリング文化の象徴、アメリカスカップに挑戦する日がきてほしい」
・・・
そんな、いろいろな願いを持ったベテランセーラーたちが、Team Nishimura Project に集まって、その願いが実るために、まずは一人でも多くの人たちに、特に親と子に、セーリングを体験してもらおう、と行なっているものです。






仕事をキャンセルして来てくれているスタッフも、前日徹夜して仕事を終わらせて来てくれているスタッフも、自分のこどものサッカー試合応援を我慢して来てくれているスタッフも、介護が必要な親の面倒を気にしつつ来てくれているスタッフも、います。
有難う、有難う。
本当に、有り難き、というスタッフばかりです。




いつものように、終了後は、メンバーのMさんの銀座のお店から椅子とテーブルと生ビールを持ち出し、銀座歩行者天国の片隅での反省会、および次回打ち合わせになりましたが、



目下のワタクシたちの語り合いの主要なテーマは、この催しを次のステップに進めるにはどうしたらいいんだろう、ということ。

参加者の人たちに無料で体験してもらっているので、使っているヨットの修理費や整備費もなく、もう5年間使っている艇の傷みも目立ってきた。
このことだけを考えてみても、この催しを今後も続けるには、なんらかの資金が必要なことは明らか。
本当は、この種の目的のセーリング体験に最適な、チームニシムラ・オリジナルの艇を開発したい、という望みもある。










プールでのセーリング体験は10月まででお終いにして、お尻が濡れると寒い11月から4月までは、船の科学館のホールや教室を使って、お母さんと子ども向け、あるいは、熟年層向けの、楽しい講演会、トークショーなどを計画しています。

東京海洋大学(東京商船大学と東京水産大学が合併)のOB&現役たちならではの、海と船と海洋生物をテーマにした楽しい会にしたいと思っています。

その内容は10月初旬までに船の科学館のホームページか、このブログでお知らせする予定です。お楽しみに。

9月4日 空

2010年09月04日 | 風の旅人日乗
暑い暑い東京で仕事を済ませた早い夕方。

葉山に帰る横須賀線のボックス席の窓側のシートから、ふと空を見上げたら、鰤のカマの部分の鱗を思わせる、細かい模様のみごとな鱗雲が、深い青の空に広がっている。

その雲のすぐ南には、刷毛で掃いたような、ラテン語でシーラス、日本語で巻雲が、きれいな模様を描いている。
あそこには、強いジェット気流が吹いているというサインだな。

ラテン語のシーラスは、英語ではカーリー・ヘア。つまり「巻き髪」。
その意味をそのまま翻訳すれば、確かに「巻雲」でいいのだけれど、ぼくが勉強していたころの気象の教科書には、絹の雲、「絹雲」と表記されていた。
日本人の情緒的には、そっちほうが、手触り感というか、この雲の感じが出ているように思う。

地表はまだまだ暑いけど、数千メートルの上空は、すでにキッパリと秋です、と言っている。

逗子から乗ったバスを降りて、森戸川に掛かる橋を渡りながらフト西のほうを見たら、見事な秋の夕焼け空に、富士山のシルエットが…。



急いで家に戻り、子どもたちを連れて森戸の浜に出たら、浜も、もう、海の家がほとんど姿を消して、秋の景色。
トワエモアが、頭の中で「今は、もう秋~」と歌い始める。




さあ、今年もいよいよ秋のヨットレースシーズンが始まる。
今年の秋はどんな風でのセーリングになるのかな。

9月3日 息抜き

2010年09月03日 | 風の旅人日乗
今日の午後の打ち合わせまでに必要な資料を徹夜で作っているのだけれど、まだ終わらない。
焦る。

息抜きに、伸びをしに外に出てみたら、夜明け前の、深いブルーの空高く、スバルが見えた。
モロカイ島や太平洋上ではすぐに見つけられるけど、現代の葉山では、周囲に明かりが多いせいで、オリオン座のベテルギウスから、アルデバラン、と目で辿っていかなければ、簡単には見つけられない。

枕草子で、「星はすばる」(が一番)、と断言した清少納言が1000年前に見ていたスバルは、夜空の中でまばゆいばかりに光り輝く星団だったんだろうな。

それにしても、快晴のいい夏がまだ続いていて嬉しい。
日本にいて毎日星空が見えるなんてウソのよう。
来年も、こんな、キチッとした夏が来るといいな。


これは、3週間ほど前のモロカイ島の夜明け。
ホクレアの出航準備作業をしていて、ふと振り向いたらこの光景が広がっていた。

遠くにマウイ島の稜線が見えたのだけど、写真では、雲に隠れてよく見えない。

さて、息抜き、終わり。
仕事に戻りますか。