日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

消費税増税と政府の役割

2012年06月24日 | 日記

A.今日は、経済式に拠(よ)りながら、消費税増税と政府の役割について考えて見たいと思います。

1.経済式は、5月20日と27日の “ケンブリッジ方程式” と “マーシャルのk” を御参照ください。

2.ここでは M=kPy=kY  ( M:貨幣数量 k:マーシャルのk(貨幣の流通速度の逆数) y:実質GDP Y:名目GDP )  [式1] を使います。
  
3.上式は、経済の成長式でもあります。そして、これはあくまでも私見でありますが、マネタリストとして著名なフリードマンも自説をこの式から導き出したのではないかと考えています。彼は南米での自説による経済政策に失敗して、そこではインフレを招きましたが、この式は、貨幣供給量を、毎年、定常的に増加させても、kとyが変化しなければ、
M(貨幣供給量)の増加は、P(物価)の上昇を招き、インフレに至るということを示しています。

4.問題は、y(実質GDP)やY(名目GDP)の中身です。社会には生産やサービスの基本ピースというものがあります。私見では、経済の成長とこの基本ピースの数量と質は相関関係にあると考えています。基本ピースの増加か質のUP(アップ)が、経済成長には不可欠だということです。

B.日本の政府債務

1.考察を簡潔にするために、ここでは[式1]のM=kPy=kYが、消費(C)、生産(P)、貯蓄(S)で成立している社会を考え、ここに消費税と各部門の租税(直接税・間接税)、及び、政府部門(G)を導入し、各部門の租税をそれぞれ、Gc、Gp、Gsとします。そして、ここでは貿易と海外収支は除外して考えます。

2.すると、[式1]は次のようになります。
M=k{(C-Gc)+(P-Gp)+(S-Gs)+(G-Gg)}  但し、G=Gc+Gp+Gs+Gg    [式2]
これは健全財政の例です。

3.日本の場合、[式1]は、次のようになります。
M=k{(C-Gc)+(P-Gp)+(S-Gs)+(G-Gg)+Gd}  但し、Gdは政府借入金で、政府部門 はG=Gc+Gp+Gs+Gg+Gdとなります。  [式3]

4.平成24年度の一般会計予算 は次の通りです。 
歳出: 94兆7155億円 税収: 40兆9270億円 その他収入: 9兆4905億円 借入金: 44兆2980億円 (建設公債: 7兆3100億円を含みます)。

5.昨年は、東日本大震災がありましたから、その未来都市型建設資金に多額の金を要します。予算が大型化するのはやむを得ない事だと考えます。

6.それにしても、日本の政府借入金(Gd)の累積は800兆円とも1100兆円 (ここでは暫定的に、財部借金時計を採り、908兆5050億円を採りたいと思います)とも言われています。平成21年のGDPが470兆円規模ですから、この額は尋常なものではありません。税収は平成2年の60兆1000億円をピークに下がり続け、一方、歳出は膨らみ続け、平成21年にはリーマンショック後とはいえ、101兆円を付けています(出所:平成24年度一般会計予算と同じ財務省資料)。
  
7.この累積債務の原資は国内の銀行によって賄われており、日本にはまだゆとりがあるんだと言っている人を見かけますが、そんなことはありません。

8.以前まとめた日本のマネーストックのデーターを流用しますと、平成17年(2005年)から平成9年(2011年)8月までの各年度のM3は1000兆円規模で、広義流動性マネーまで含めますと1300~1400兆円台の規模で推移しています。 

 出所:日本銀行統計、日本国総務省統計局、内閣府経済社会総合研究所                 
 M3 :M1+準通貨+CD(譲渡性預金)  準通貨:定期預金+据置貯金+定期積金+外貨預金      
 広義流動性対象機関:M3対象金融機関、国内銀行信託勘定、中央政府、保険会社等、外債発行機関      
 広義流動性=M3+金銭の信託+投資信託+金融債+銀行発行普通社債+金融機関発行CP+      
          国債+外債      
為替レート:東京市場 ドル・円・スポット 2009年8月31日、2010年3月4日(日本銀行)      


9.現在の統計値でないので何とも言えないのですが、為替差損等で資産は目減りしていますから、借金の累計はM3で考えれば、国のマネーストック(国富)のレベルまで達していると言えます。

10.この間、国民の所得格差は大きく開いたと言われています。平成10年以降、自死者は年間3万人を越えています。あこぎな借金取りは債務者に新幹線に飛び込ませて、保険金を手にします。大蔵官僚から政治家を志し、すがすがしい印象のあった若者(政治家)を、ある宗教団体は法敵と称して死に追いやります。怒りを禁じ得ません。

B.消費税増税と政府の役割

1.現在、消費税は8%→10%へ段階的に引き上げるという声が聞こえてきます。10%ということは、1億円のプロジェクトに対して1000万円の消費税がかかるということを意味します。10億円で1億円、100億円で10億円、1000億円で100億円です。この額は、[式3]から分かるように、消費(C)、生産(P)、貯蓄(S)の分野の民間総額を減少させます。(但し、この減少分はGとして社会に再配分されます→政府による再分配機能と投資機能→政府の役割 )。しかし、この消費税額は民間の投資意欲をそぎます。民間にはこの他、所得税・固定資産税・その他が付加されます。この結果、生産拠点は海外へ移ります。限度は8%でしょう。それでもまだ必要であれば、所得税の累進制を復活させ、高所得者から社会にお金を還元して頂くほかありません。ではそれならば、自分は海外へ移住し所得も移すとおっしゃるのならば、どうぞという以外ありません。

2.残った者で国を作る、そういう時期に来ているのかも知れません。そして、社会が発展し、再生産して行くために必要不可欠な生産や技術の投資は、政府債務や日銀債務として惜しむことなく行う。民間は自助努力を行う。官僚と議員は日本の明日を作る政策立案に励む。そう言った革新期に日本は今あるように思います。

3.また10%という消費税は、社会の形を変えます。おそらく静止型の社会となるでしょう。私は反対です。合意が必要です。

4.トヨタの豊田社長が、「トヨタは残る」と仰っています。頼もしさを感じます。また、6月3日の “マイケル・サンデル教授の東京講義” でも書きましたが、日本には頼もしい若者たちがいます。失われた10年と言われてきましたが、期間は20年の長きに亘(わた)っているように思います。しかし、日本は必ず再生します。

 

 

 





                

                              千葉テレビ塔


                

                          台風一過 6月20日の夕焼け


                

                                   同

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