映画「息もできない」で女子高生役を好演した女優がキム・コッピ。韓国最高の映画賞・大鐘賞で新人女優賞を受賞しました。大鐘賞と並んで権威のある青龍映画賞の新人女優賞は、彼女と「過速スキャンダル」のパク・ポヨンの2人が受賞しました。この2人は、他の映画賞もいろいろ受賞しています。
ところで、映画館で開場を待つ間、何となくポスターを見ていて目に入ったのがそのキム・コッピという名前。なんともヘンな名前だなあと思いました。
「コーヒーは口を開き気味にした<コッピ(커피)>で、口を丸めて突き出し気味に<コッピ(코피)>と発音すると鼻血になるから要注意!」とは、韓国語学習者なら誰もが初級の頃に教わったりテキストで読んだりすることでしょうが、<鼻血>はもちろん、<コーヒー>なんて名前もまさかないよなー、と思いつつ、あとで確認してみると<꽃비>とありました。<花>(꽃.ッコッ)の<雨(비)>という意味なんですねー。たしかにカタカナだとコッピと書くしかないです。
本題に入ります。
「息もできない」のセリフ(韓国語でテサ.대사.台詞)の多く、とくに主人公のチンピラ、サンフンが発する言葉はボキャブラリーが貧困な上、そのほとんどが卑語です。
その中に、<년(ニョン)>という言葉がありました。私ヌルボは最近読んだ小説(パク・ミンギュ「朝の門」)で初めて知った単語ですが、実際に耳で聴き取ったのもこの映画が最初。女性に対する蔑称で、<アマ>と訳されることが多いようです。
「이 년」(このアマ)、「악독한 년」(あくどい女め)のような用例が辞書にあります。
映画中の屋台=<포장마차(ポジャンマチャ)>の場面で、サンフンが女子高生の名前ハン・ヨニ(한연희)に引っかけた言葉遊びめいた冗句を口にします。
「한 년이 두 년이 세 년이 네 년이 이 썅년아」
ハンニョニ、トゥニョニ、セニョニ、イ シャンニョナ
(1人のアマ、2人のアマ、3人のアマ、4人のアマ、このアマめ)
ハン・ヨニ(한연희)は、漢字だと姓が韓で、名はヨン=娟・姸・延などと、ヒ=姫・喜・煕などの組み合わせで、区切って読むとハン・ヨン・ヒですが、名前はふつうに続けて発音してヨニ、姓から続けるとハニョニになって、上記の<한 년이(ハンニョニ)>=<1人のアマ>と同じになってしまうんですね。
韓国のポータルサイト<NATE>中のヤン・イクチュン監督についてのページに、ネチズンが記憶に残った名セリフをあげていて、その中で전상규(チョン・サンギュ)氏もこのセリフがありました。
そのサンギュ氏、(포차에서 ㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋ씨발 존나 웃기네)と感想を記してますが、これも俗語のオンパレード。
「屋台で。ハハハハハ、コイツすごい笑わせるぜ」とでも訳すしかないですかねー。
<포차(ポチャ)>は<포장마차(ポジャンマチャ)>の略語。<ㅋㅋㅋㅋ>はネットでおなじみの笑い声。
<씨발(シバル)>(この野郎)は<씨팔>、<씨빨>等とも綴られ、韓国の代表的な罵倒語としておなじみ(?)。韓国語を知らない人でも、この映画を観れば記憶に残るくらいの頻出度です。
四方田犬彦・金光英美「ためぐち韓国語」(平凡社新書)をみると、数の18=십팔(シッパル)と発音が紛らわしいので要注意と親切に書いてくれています。
なお、この言葉、韓国のネット上では<ㅅㅂ>と子音だけの略語(준말)でよく使用されています。ついでに、<ㅄ>と逆にすると、これも<병신(ピョンシン.病身)>という罵倒語になります。
シバルの延長で<씨발라마.シバルラマ>というのも出てきます。先のNATEのページ中のネチズン이항준(イ・ハンジュン)氏は「セリフの80%」と書いてます。まさかそこまではいきませんが、何度も出てきます。私ヌルボは、もしかして「シバル+アマ(日本語)」かな、とも思ったのですが、韓国サイトで探ってみると、<씨발놈아.シバルロマ>(=シバルの奴め)がなまったものらしいです。
スラングとなると、ふつうの電子辞書にも載ってないのが多くて、なかなかわかりにくいですね。先に出てきた<썅년>も女性への罵倒語だと思われますが、少し調べてみても語源等はよくわかりませんでした。
上記のネチズン、サンギュ氏の感想中の(・・・존나 웃기네)の<존나(チョンナ)>にもてこずりましたが、YAHOO知恵袋の中にまさにピッタンコのQ&Aがありました。<めっちゃ>というような意味ですが、英語のfucking~よりもひどい感じの卑猥語で、イ・ヒョリが使って批判を受けたそうです。
韓国語スラングの世界、めっちゃ奥が深いですね。まあ、実際に使うことはないと99.9%断言します。私ヌルボが品がいいから、ということもありますが、それ以上に語学学習上レベルが高すぎるので・・・。
[2013年5月20日の追記]
上記<썅년>の語源がわかりました。昔両班以外の庶民の常民(상민)の女性を軽蔑的に상년(サンニョン)と言ったのが今でも女性への罵倒語になり、それが強く発音されて쌍년、さらに썅년になった、というものです。詳しくは→コチラ参照。
ところで、映画館で開場を待つ間、何となくポスターを見ていて目に入ったのがそのキム・コッピという名前。なんともヘンな名前だなあと思いました。
「コーヒーは口を開き気味にした<コッピ(커피)>で、口を丸めて突き出し気味に<コッピ(코피)>と発音すると鼻血になるから要注意!」とは、韓国語学習者なら誰もが初級の頃に教わったりテキストで読んだりすることでしょうが、<鼻血>はもちろん、<コーヒー>なんて名前もまさかないよなー、と思いつつ、あとで確認してみると<꽃비>とありました。<花>(꽃.ッコッ)の<雨(비)>という意味なんですねー。たしかにカタカナだとコッピと書くしかないです。
本題に入ります。
「息もできない」のセリフ(韓国語でテサ.대사.台詞)の多く、とくに主人公のチンピラ、サンフンが発する言葉はボキャブラリーが貧困な上、そのほとんどが卑語です。
その中に、<년(ニョン)>という言葉がありました。私ヌルボは最近読んだ小説(パク・ミンギュ「朝の門」)で初めて知った単語ですが、実際に耳で聴き取ったのもこの映画が最初。女性に対する蔑称で、<アマ>と訳されることが多いようです。
「이 년」(このアマ)、「악독한 년」(あくどい女め)のような用例が辞書にあります。
映画中の屋台=<포장마차(ポジャンマチャ)>の場面で、サンフンが女子高生の名前ハン・ヨニ(한연희)に引っかけた言葉遊びめいた冗句を口にします。
「한 년이 두 년이 세 년이 네 년이 이 썅년아」
ハンニョニ、トゥニョニ、セニョニ、イ シャンニョナ
(1人のアマ、2人のアマ、3人のアマ、4人のアマ、このアマめ)
ハン・ヨニ(한연희)は、漢字だと姓が韓で、名はヨン=娟・姸・延などと、ヒ=姫・喜・煕などの組み合わせで、区切って読むとハン・ヨン・ヒですが、名前はふつうに続けて発音してヨニ、姓から続けるとハニョニになって、上記の<한 년이(ハンニョニ)>=<1人のアマ>と同じになってしまうんですね。
韓国のポータルサイト<NATE>中のヤン・イクチュン監督についてのページに、ネチズンが記憶に残った名セリフをあげていて、その中で전상규(チョン・サンギュ)氏もこのセリフがありました。
そのサンギュ氏、(포차에서 ㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋㅋ씨발 존나 웃기네)と感想を記してますが、これも俗語のオンパレード。
「屋台で。ハハハハハ、コイツすごい笑わせるぜ」とでも訳すしかないですかねー。
<포차(ポチャ)>は<포장마차(ポジャンマチャ)>の略語。<ㅋㅋㅋㅋ>はネットでおなじみの笑い声。
<씨발(シバル)>(この野郎)は<씨팔>、<씨빨>等とも綴られ、韓国の代表的な罵倒語としておなじみ(?)。韓国語を知らない人でも、この映画を観れば記憶に残るくらいの頻出度です。
四方田犬彦・金光英美「ためぐち韓国語」(平凡社新書)をみると、数の18=십팔(シッパル)と発音が紛らわしいので要注意と親切に書いてくれています。
なお、この言葉、韓国のネット上では<ㅅㅂ>と子音だけの略語(준말)でよく使用されています。ついでに、<ㅄ>と逆にすると、これも<병신(ピョンシン.病身)>という罵倒語になります。
シバルの延長で<씨발라마.シバルラマ>というのも出てきます。先のNATEのページ中のネチズン이항준(イ・ハンジュン)氏は「セリフの80%」と書いてます。まさかそこまではいきませんが、何度も出てきます。私ヌルボは、もしかして「シバル+アマ(日本語)」かな、とも思ったのですが、韓国サイトで探ってみると、<씨발놈아.シバルロマ>(=シバルの奴め)がなまったものらしいです。
スラングとなると、ふつうの電子辞書にも載ってないのが多くて、なかなかわかりにくいですね。先に出てきた<썅년>も女性への罵倒語だと思われますが、少し調べてみても語源等はよくわかりませんでした。
上記のネチズン、サンギュ氏の感想中の(・・・존나 웃기네)の<존나(チョンナ)>にもてこずりましたが、YAHOO知恵袋の中にまさにピッタンコのQ&Aがありました。<めっちゃ>というような意味ですが、英語のfucking~よりもひどい感じの卑猥語で、イ・ヒョリが使って批判を受けたそうです。
韓国語スラングの世界、めっちゃ奥が深いですね。まあ、実際に使うことはないと99.9%断言します。私ヌルボが品がいいから、ということもありますが、それ以上に語学学習上レベルが高すぎるので・・・。
[2013年5月20日の追記]
上記<썅년>の語源がわかりました。昔両班以外の庶民の常民(상민)の女性を軽蔑的に상년(サンニョン)と言ったのが今でも女性への罵倒語になり、それが強く発音されて쌍년、さらに썅년になった、というものです。詳しくは→コチラ参照。