ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む (予告編)

2010-04-28 23:40:43 | 韓国・朝鮮に関係のある本
 私ヌルボの住まいに堆積している書籍中、分類すると圧倒的に多いのが未読本です。
 イザベラ・バード「朝鮮紀行」(講談社学術文庫)もその中に埋もれていましたが、お酒の好きな韓国オタクのTヒョン(兄貴)の「全部読んだよ」という言葉に触発されて、がんばって読破してしまいましたがな。

 「すごい」という言葉を濫発するのはボキャ貧の証左ということは承知してますが、それでもこの本はそれ以外の言葉は見当たりません。いやー、ホントにすごい本です。

 いや、正確にいえばイザベラ・バードという人がすごいんですね。

 最初、ヌルボとしましては、この本を読んで①おどろいたこと ②ナットクしたこと ③まなんだこと をそれぞれ5つずつくらい具体的にあげていこうと思ったのですが、それだけでもかなり長い記事になりそうなので、(得意の)「またいずれ」何回かに分けて書くことにして、今回は「イザベラ・バードがどう<すごい>か?」について記して、今後の予告編ということにします。

【イザベラ・バードがどう<すごい>か?】

①すごい行動力!
 現代と比べると格段に交通が不便な時代に、交通不便な日本や朝鮮に長期間・長距離の旅行をしているだけでもすごい。
 彼女が日本の東北を旅行した時に訪れた現・山形県南陽市「イザベラ・バード記念コーナー」があるそうですが、その関係で南陽市のサイト中に彼女の略年譜が載っているので、まあ見てみてください。
 1878年日本を訪れた彼女が、東北地方を旅して「日本奥地紀行」をものしただけでもたいしたものですが、それまでにもアメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・ハワイを周っているんですねー。
 さらに日本のあとは香港→マレー→カイロ。さらに今の国名・地名で言えばパキスタン・インド・チベット・イラク・イラン・・・。
 そして1894年にカナダ経由で横浜→神戸を経て初めて朝鮮の地を踏んだのがなんと62歳の時ですよ。
 うーむ、ぬんという女性でしょうねー!?
 今のように便利な旅行用品がいろいろあるわけでもなく、カメラと現像道具だけでもかさばったでしょうし・・・。

 小船で旅する時、彼女は・・・
 植物の採集と乾燥もしたし、写真を撮り、苦心してネガを現像したりものした。毛布と防水布をありったけ集めて舟のなかに「暗室」をつくるのである。こういったことがわたしの仕事であり、毎日が忙しくておもしろかった。

 ・・・「毎日が忙しくておもしろかった」とはねー・・・。
 また彼女が朝鮮で踏破した所は「道なき道」もありドロドロのぬかるみもあり、金剛山のような山にも登ったり急流の深い瀬を渡ったりもしています。

②すごい観察力!
 「朝鮮旅行記」に記されている動植物の種類はハンパじゃないです。
 たとえば南漢江を舟で行き、丹陽からさらにさかのぼった辺りで確認した植物。

 大きく枝分かれしたウコギ、2種類のニシキギ、クルミとクワに寄生したヤドリギ、ハゼノキ、ウルシ、松、モミ、マタタビ、グミ、群生したヨーロッパ栗、ハンノキ、カバノキ、カエデ、ニレ、ライム、そしてよく見かける木でケヤキの一種ではないかと思えるものがある。(以下、花についても20種類ほど列挙しています。)

 現代の日本人で、こんなに動植物の名前を知っている人はまれでしょう。
 また具体的な数字もいろいろ記録しています。

 荷役に使われる馬は・・・体高は10ハンドから12ハンド、・・・160ポンドから200ポンドの荷物を一日に30マイル運び、粗末なえさで何週間も働く。

 もちろん、彼女の観察力は動植物についてだけではなく、田畑や家、商店や商品、人の衣服や髪型等々、見たものすべてに及んでいます。

③すごい取材力
 つまるところは旺盛な知的好奇心のなせるわざ、なんですかねー? 「朝鮮旅行記」には、いろいろ書物等で調べたり、直接現地の住民に聞かなければわからないことが満載されています。

 松都(開城)について書かれた部分を例にとると、

 朝鮮人商人はいまや14軒ある日本の焦点と競合し、40人いる日本人居住者の存在に耐えねばならないのである。
 ・・・わたしが済物浦から乗った汽船には14万ドルに相当する朝鮮人参の委託貨物があった。
 ・・・時勢の朝鮮人参のなかには1本40ポンド(!)するものもある。自生のものはおもに彊界山中で採れる。・・・一般の人々は朝鮮人参には魔力があり、純粋無垢な者にしか見つからないと信じている。


 その他にも、<すごい>例をあげればキリがありません。
 そんなすごい女性が、東学党の乱、日清戦争、日本主導の近代的改革(甲午改革)、閔妃虐殺事件とそれに続いて高宗がロシア公使館に遷った俄館播遷(がかんはせん.露館播遷とも)という、まさに朝鮮の歴史的に重大な時期に現地を訪れているのですから、その意味でも非常に貴重な記録といえます。
 とくに私ヌルボが本書を読むまで知らなかったのですが、イザベラ・バードは閔妃に直接会って話をしているんですね。
 閔妃が虐殺される8ヵ月前のことです。会見の際の閔妃の言葉がまた印象的なのですが、予告編にしてはもう長々と書きすぎたので、いずれ本編で、ということにします。

      
   【韓国の人たちに、とくに読んでほしい本です。

 → イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む (予告編)
 → イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む(1) 虐殺される8ヵ月前の閔妃と会見。
 → イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む(2) 朝鮮半島のトラ
 → イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む(3) この本は韓国で・・・
 → イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む(4) 断髪令が命取りとなった開化派政権
コメント
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