タル・ベーラを師匠に持つ小田香監督の新作。
「セノーテ」71点★★★★
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メキシコ、ユカタン半島北部に点在する
セノーテと呼ばれる洞窟の泉。
そこはかつて、マヤ文明の時代に
雨乞いの儀式のために、少女たちが生け贄として
投げ込まれた場所でもあった。
その場所を巡って交錯する
人々の過去といまの記憶とは――?!
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「サタンタンゴ」や「ニーチェの馬」タル・ベーラを師匠に持つ小田香監督の最新作です。
メキシコにある、美しい泉、セノーテ。
神聖な泉として古代から生け贄が投げ落とされてきた
その場所にスポットを当て
その忌まわしく悲しい歴史を
泉に潜るカメラや、水や光や音で表現した映像と
現在の村の祭りや生け贄の動物たち――などから構成し
イメージの氾濫で描く75分。
基本はドキュメンタリーですが、
それを超える感覚的表現は、ジャンル分けできない魔力を持っています。
神秘的で深い青色をたたえた洞窟と泉。
そこに閉じ込められ、水に溶けてしまった少女たち。
詩の朗読と、現地の人々の泉にまつわる証言、そして
断末魔の叫びを上げる獣の引き裂かれるような悲鳴――などが
鮮烈に
泉に投げ落とされ、犠牲となった少女の魂を映し出している。
伝説や因習を前に、ありえない非道も行ってしまう
人間の残酷さが、ヒタヒタと足もとに迫ってきて
その冷たさに、思わず足をひっこめるほどの、
生々しい感覚がありました。
世界にはばたく若い才能のために
2020年に設立された、第1回大島渚賞を受賞。
めでたい!です!
★9/19(土)から新宿K's cinemaほか全国順次公開。