映画の印象に
「光」(17年)に通じるものがありました。
「朝が来る」73点★★★★
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都心のタワーマンションに暮らす
佐都子(永作博美)と夫(井浦新)は
6歳の息子・朝斗(佐藤令旺)を
大切に見守り、育ててきた。
そんなある日、佐都子はある電話を受ける。
「子どもを返して欲しいんです」――
実は朝斗は、不妊治療の末に子を持つことをあきらめた佐都子たちが
「特別養子縁組」という制度で
迎え入れた子どもなのだ。
佐都子たちは6年前、赤ん坊だった朝斗を手放した生みの母に
一度だけ会っていた。
まだ14歳の少女は泣きながら
「よろしくお願いします」と頭を下げた。
いま、目の前で「朝斗を返して」と言う女性は
本当にあのときの、少女なのか――?!
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言葉にならない感情を、
光で画面に定着させようとしている――
そんな感覚に、
河瀬監督の最近の珠玉作「光」に通じるものを感じました。
特別養子縁組で子を迎えた夫婦のもとに入った1本の電話。
「子どもを返して欲しいんです」――
本当に電話の相手は、息子の母親なのか――?!
社会問題のリアルと、溢れ出る感情や感覚が混じり合い
ミステリーとしても惹きつけられます。
そして
子ナシだった夫婦の苦しみだけでなく
予想以上に、子を生んだ少女側がクローズアップされ、
叙情的な描写と
ドキュメンタリータッチが合わさる風合いがとてもいい。
特別養子縁組のことを知る第一歩にもなると思うのです。
関連取材を通して
養子縁組した実母が「子どもを返して欲しい」ということはほとんどない、とも聞きまして
あくまでもこれはフィクションであり、
「だから、うまくいかないんじゃない?」と印象されるのも承知で
日本社会が「養子」にむける目の冷ややかさに真っ向から挑み
それでも描く必要があった物語――と思うと
より、染み入るものがありました。
「子を持つこと」の難しさにも
真っ向から向き合っているぶん、
見る人の立場や状況によって様々な感情を持つだろうと思うのです。
でも、どんな立場の女性にも
女が負う痛みと哀しみが、刺さると思う。
主演の永作博美氏の、年齢相応の(いや全然若く、美しいんだけど!)
一切飾っていない”老け”をも捉えた映像が
雄弁に、テーマに肉薄していると思う。
で、なによりも母として、
河瀬監督がこの物語の何に突き動かされたのか、ぜひ聞いてみたい――と思った。
そこで
AERAで原作者・辻村深月さんと河瀬監督の対談記事を書かせていただきました。
監督自身が養子だった、という話から
この映画にかける思いが、よりわかります。
AERAdot.のこちらから読むことができます。
加えて、映画のモデルにもなった
特別養子縁組をする団体「babyポケット」の代表・岡田卓子さんにも
お話を聞いております。こちらも
で読めます。
「養子だ」ということを知らせる告知の徹底とか、
驚きの話がたくさんありました。
映画はいつも、知らなかったことを、「個人の物語」として心に訴え、我々に教えてくれる。
だから、胸をつかれるのだと
再確認いたしました。
★10/23(金)から全国で公開。