いや〜うまい、この方は!
「あのこは貴族」79点★★★★
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東京・松濤の上流家庭に生まれ
何不自由なく育てられた華子(門脇麦)は
恋人にフラれ、お見合いをすることになる。
いい相手などそうそう見つからない――と
ヘコんでいたとき
華子は弁護士の青木幸一郎(高良健吾)に出会う。
ルックスよく、育ちよい物腰の彼に
華子は一目惚れ。
そして、二人は婚約することに。
が、華子は
幸一郎のスマホに「時岡美紀」という女性から
親しげなメールが送られてきたのを知ってしまう。
時岡美紀とは、誰なのか――?
時岡美紀(水原希子)は、富山県の一般家庭に生まれ
苦労して東京の大学に進学し
そこで幸一郎と出会っていた。
家の事情で中退せざるを得なくなっても
なんとか東京で生き延びている彼女は
幸一郎と腐れ縁でつながっていた。
そして偶然、美紀と知り合った
華子の友人・逸子(石橋静河)のはからいで
二人は顔を合わせることになるが――?!
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山内マリコ氏の同名小説を
岨手由貴子監督が映画化した作品。
松濤のお嬢様と地方出身の苦労人女子。
異なる階層の二人が
一人の男性をめぐって
本来ならば、婚約者と腐れ縁の彼女の修羅場――?!になる話と思いきや
いやいや、そうはならないんですな。
この展開が非常におもしろい。
異なる立場の女性たちが、ある意味の連帯をし、
その出会いが、それぞれの自立をうながしてゆく。
そんな物語なんです。
主人公をはじめ
二人をとりまく女子たちといい
みな、なんとも自然にして
その心意気がめちゃくちゃ気持ちよく
まさに日本のシスターフッド最前線!という感じです。
まず華子と美紀を引き合わせることになる
逸子(石橋静河)の役割が非常に大きい。
「日本って女を分断する価値観が、普通にまかりとおってる。
おばさんや独身女性を笑ったり、ママ友怖い、って煽ったり。
女同士で対立するように仕向けられているでしょう。
私、そういうの、イヤなんですよね」――という彼女のフラットなスタンスに
華子さんも、美紀も、
我々も、自然に「うんうん」となれるんですよね。
美紀とその友人・平田(山下リオ)の関係もグッとくるし
こんなニッポンの世の中で
「話の通じる相手だ!」と
観客にも瞬時に納得させる
そこまでの小さな描写の積み重ねもたまりません。
原作が2015年に書かれた、というところもすごいんですが
目に見えにくいけどたしかにある日本の階層社会や
貧富や学歴の格差やジェンダーといった
まさにいまどきな問題を
声高に叫ぶでなく、しかしあくまでもリアルに
細部に「プッ」となる笑いと、共感を持って描きながら
こうありたいよね、ってか、
もう私たち、こうだよね?
という未来を鮮烈に示している。
それに女子の話ってだけでなく
男性の苦悩も織り込まれているので
すべての人に元気と勇気をくれると思います。
おなじみ「AERA」にて
門脇麦さん×水原希子さんの対談記事を書かせていただいています。
荒波のなか、すくっと立ちちつ
しかしことさらに逆流するでなく
しなやかに、自分であろうとする彼女たちの姿は
主演二人とリンクして、気持ちが颯爽とする。
AERAdot.でも読むことができます。
さらに劇場用パンフレットでも
門脇麦さん、水原希子さん、そして山内マリコさん、岨手由貴子監督のインタビューを
まとめさせていただいています。
ホントに充実のお話ばかりで、感動した(マジです)
ぜひ読んでいただきたいっす!!
★2/26(金)から全国で公開。