「キリマンジャロの雪」(11年)も、素晴らしかったよねえ。
「海辺の家族たち」72点★★★★
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マルセイユ近郊の港町。
かつては別荘地として栄えたこの土地も
いまでは古くからの住民が残るのみ。
そんなさびれた町に、パリからアンジェル(アリアンヌ・アスカリッド)がやってくる。
老父が倒れたと聞き、20年ぶりに故郷を訪れたのだ。
いまや人気女優となった彼女は
この町で3人兄妹として育っていた。
彼女を迎えたのは
長兄(ジェラール・メイラン)と次兄(ジャン=ピエール・ダルッサン)。
久し振りの再会を喜ぶ3人だが
兄妹の間はどこかぎこちない。
老父の介護をどうするのか、この家をどうするのか。
これからを考えねばならないなかで、
それぞれが持つ思い、そして哀しい過去があらわになっていく――。
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「マルセイユの恋」(96年)「キリマンジャロの雪」(11年)で知られ
市井の人々をみつめるその視線から
フランスのケン・ローチとも言われる
ロベール・ゲディギャン監督の新作です。
兄妹の不仲、老父の介護など「あるある」な家族の問題に
難民、という現代の問題を織り込み
いまを、そしてその先を見通す、まなざしがある。
舞台となるマルセイユの
どこか切なげに淡く霞んだ陽光が美しく、
彼の作品の常連にして味アリアリの
俳優たちの妙技を楽しめるし
特に難民の子らが登場する終盤に
グッと物語が動き、余韻をもらえます。
ただ
正直に言うと、そこにたどり着くまでの家族話は
やや「よくある」話にも思えるし
なにより登場人物たちが
いまいち好ましくないキャラばかりで(苦笑)
最初は入り込みにくいかもしれない。
まあ、そこも監督の計算なんだと、気づくんですけどね(笑)
たとえば
次兄を演じるおひげのジャン=ピエール・ダルッサン、ワシ好きなのに
この役はいかにもな皮肉屋で
差別的発言がいちいちイヤな感じだったり
末の妹アンジェルも
事情はありそうだけど、あまりに物憂げすぎるし
さらに
母親ほども離れた彼女に
熱烈なアプローチをする地元の漁師もちょっと怖い・・・(苦笑)
でも、そんななかで
父と想い出ある土地を
黙々と、献身的に世話する長兄の尊さが光るし
それにですね
それほどに想いも性格もバラバラな兄妹たちが
難民をつかまえようと港を張ってる警備隊に対し
一様に「反抗的な」態度をとったりするんですよ。
そこに
ベースにある「家族」ならではの共有、結束もとい結託(?笑)のようなものを感じて
それが、ラストへとつながっていくあたりは
さすがゲディギャン監督、と感じるのでした。
変わりゆく時代や世界。
それでも家族は再生する。
どんな形かはわからない。でもきっと再び進み出す。
そんなことを、伝えているのだと思います。
★5/14(金)からキノシネマほかで公開。
※上映状況は公式サイトおよび劇場サイトなどでお確かめください