ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ボストン市庁舎

2021-11-14 13:47:56 | は行

ここにある問題はあなたの街の問題だ。

見るべき映画!

 

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「ボストン市庁舎」74点★★★★

 

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「ニューヨーク公共図書館」(17年)が大ヒットした

フレデリック・ワイズマン監督による観察型ドキュメンタリー。

今回は自身の生まれ故郷である

米マサチューセッツ州・ボストンの市役所にカメラを向け、

274分(4時間34分)!

さらに記録更新中です(笑)

 

ワシは「図書館」より

「ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ」(15年)

が好きなんですが

今回はこちらに近い感じがする。

274分、この街に暮らした気になるシリーズ(笑)

 

実際、会議のシーンも多く、ところどころ眠くなりはしましたが(←ダメ。苦笑)

でもちゃんと起きてましたよ!

なによりボストン、という街で起こるさまざまは

世界どこにでもある問題に共通していて

すごく重要な映画だと思った。

 

出てくるのは

市の予算会議の様子、市役所で同性婚するカップル、

レッドソックス優勝パレードの警備や、建築現場や道路工事の風景、

若者のホームレス問題についての話し合いや

退役軍人の戦没者の日の集まり――などなど、まさに多種多様。

 

ワイズマン監督は、いつもどおり

口を挟むわけでなく、意思を表明するわけでなく

でも、その視線が「なにが現代の問題か」を映し出してくれるんです。

 

まず

「よその国の、よその街の会合や会議」がなぜおもしろいかというと、

語られるべきことを、みんながしっかり語るからなんですよ。

どんな会合でも会議でも、みんながちゃんと対話をする。 

誰もが自分の言葉を持っている。

 

この撮影を日本のどこかの都市でやっても、おもしろいだろうか?

――いや、絶対つまんないだろって(特に会議。苦笑)

 

国民性の違い、文化の違いはあるとは思うけど

これは見習いたいところですねえ。

 

 

そして、今回は

ボストン市長であるマーティン・ウォルシュ氏が多く登場するのが特徴。

「皆さんのために働く。そのために私はいるんです」という彼は

あらゆる会合に顔を出し、自身の経験や家族の話をし、

 

自分の言葉で語り、相手にきちんと対峙する。

あらゆる問題を、自分ごととして考えていることを伝える。

すごい市長だなあ。

 

しかも撮影は2018年と2019年。

トランプ政権下で、分断を差別を格差を無くすため尽力し、

国と逆の方向へ自分たちの力で舵を切ろうとする

その姿が素晴らしい。

 

彼の真摯なリーダーシップと行動力が

みんなをまとめ

「我々ボストン市が、国にお手本をしめそうぜ!」

一体となっていく感じがあるんですよね。

 

実際そうなった、というのがまたすごくて

この市長、今年からバイデン政権の労働長官に起用され

次の市長には初のアジア系女性が選ばれたんですよ。

ひとつの市が成し遂げたことの大きさが伺われます。

 

日本でもコロナ禍で、地方自治やその首長の存在感が増しましたが

日本の政治に絶望している人にも

これ、ぜひ観て欲しいなあ。

 

それにしても。

ワシの印象に残ったのはやっぱり街の風景。

改築中の家の、海見えのベランダいいなーとか

あとなんといっても

街をまわるゴミ収集車のとてつもないパワー!

 

日本なら粗大ゴミクラスのマットレスもベッドも

なんでもワシワシと噛み砕いてしまうのだ!圧巻!

 

★11/12(金)からBunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次公開。

「ボストン市庁舎」公式サイト

コメント (3)
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