おもしろい!3本分くらいの映画が詰まってる。
「スティルウォーター」80点★★★★
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米オクラホマ州の都市「スティルウォーター」で暮らす
石油掘削作業員のビル(マット・デイモン)。
しかしいまは仕事がなく、解体現場で働いている。
そんななか、ビルは娘のアリソン(アビゲイル・ブレスリン)に会いに
フランスのマルセイユに向かう。
実はアリソンはマルセイユに留学中、ある事件に巻き込まれ
有罪判決を受けて、刑務所にいるのだ。
面会したビルにアリソンは
「自分の潔白を証明する、新情報がある」と話し、再度調査をしてほしいと頼む。
フランスの弁護士に取り合ってもらえないビルは
異国でひとり、調査を始めるが――?
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「扉をたたく人」に
そして「スポットライト 世紀のフクープ」のトム・マッカーシー監督の新作です。
単なるサスペンスでなく
アメリカの労働者の困窮やヨーロッパの移民問題、
人種やジェンダー差別、貧富の格差――など
さまざまが詰まっていてマジすごいな・・・と思っていたら
「ディーパンの闘い」、そして「預言者」の脚本家2人とタッグを組んだそうで
なるほど納得!
3本分の映画に匹敵するくらい見応えがありました。
ガールフレンドを殺した罪で
フランスで裁かれ、刑務所にいる娘。
そんな娘の無罪を晴らそうと、調査をはじめるビルだけれど
言葉の壁もあるし、空回りするばかりでうまくいかない。
そんな彼が、ひょんなことから
シングルマザーの母子と知り合い、彼女たちの助けを借りることになる。
そのなかでビルは、ついぞ忘れていた
家庭の温かみに触れ、幸せのほの甘さを味わうんですよね。
しかし、娘のことを思うゆえ、
そこでは終われない――という(泣)
社会の中間層より下にこぼれてしまった人々の暮らしぶりのリアル、
さらに
アメリカ人が世界からどう見られているのか、などなども描かれていて
すごーく深いんです。
スティルウォーター、のタイトルの意味が明かされるラストにも
ヤラレタ。
来週、1/17発売のAERAで
トム・マッカーシー監督にインタビューしておりますので
そちらも合わせてぜひ!
ただ、ちょっとだけ気になっていることはあります。
本作を観てワシはまず「アマンダ・ノックス事件」を思い出したし
監督も「着想を得た」と認めているのですが
アマンダさん本人が
「事前に連絡もなく、その描かれ方にもの申す」と表明している。
本作はあくまでフィクションとして作られているので
これは非常に難しい問題です。
イマジネーションのもとになった人には、承諾を得るべきなのか?
しかし、それによって「描くもの」が違ってしまったら――?
ワシは
本作は決してアマンダさんを貶めるものではなく
周辺にある「大きな問題」を描いていると感じたのですが
アマンダさんの訴えに対し、監督はいまの段階では沈黙を守っている。
表現において、そうした問題をどうすべきなのか。
映画に没頭すると同時に
考えさせられもしました。
★1/14(金)から全国で公開。