イカしたビジュアルとセンスいい音楽。
でもそれだけじゃない「魂」がある。
「 LETO-レト-」71点★★★★
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1980年代前半。ソ連時代のレニングラードで
西側ロックの影響を受けたアンダーグラウンド・ロックのムーブメントがあった。
その中心人物であるマイク(ローマン・ビールィク)が開催した
ある海辺のパーティーに
ロックミュージシャンを夢見るヴィクトル(ユ・テオ)がやってくる。
一瞬でヴィクトルの才能を見抜いたマイクは
彼をデビューさせようと面倒を見ることに。
が、マイクの妻ナターシャ(イリナ・ストラシェンバウム)も
海辺で出会ったときから
ヴィクトルに何かを感じていたーー。
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1980年代、ソ連時代のレニングラードで
トーキング・ヘッズやルー・リードに共鳴し、
不自由ななかで、心を発散させようとした
実在ロックミュージシャンたちの日々を描いた物語です。
ちなみにLETO、とはロシア語で「夏=summer」の意味。
洒落たモノクロのビジュアル、
主人公ヴィクトルのオーラと
その彼を取り巻くピュアな三角関係が描かれ、
いきなりサイコ・キラーとかかかっちゃう?!なセンスで観ても、
まず間違いないといえますが
ただの「洒落た」映画ではない感覚に、戸惑う人もいるかもしれない。
なので、「予備知識なし」推奨の番長ですが
この映画に関しては
少々、予備知識が必要かもしれない、ということで
解説いたします。
この話は、すべて実在の人、実際のことに基づいているんですね。
冒頭、海辺での若者たちの集まりに顔を出した最初のシーンから、
目を惹きつけて離さない、東洋系のヴィクトル。
この人も実在の人物。
ロシア人の母とコリアンの父を持ち
映画のとおり、先輩ミュージシャンだったマイクに見いだされブレークした人で
しかし、1990年、人気絶頂のさなかに交通事故で28歳で亡くなってしまうんです。
マジ伝説人物なんですね。
そんなヴィクトルを演じる韓国俳優ユ・テオがまたいい!
キム・ギドク監督「殺されたミンジュ」(14年)や
最近ではシム・ウンギョン共演のドラマ「マネー・ゲーム」に出てるそうで
これはチェックせねば!という感じ。
で、現実にヴィクトルを見い出した、
当時のロシア・アンダーグラウンドロックの中心人物マイクとその妻ナターシャも実在し
ヴィクトルとのピュア恋も本当だったそう。
それを知ると余計に
この映画が深まる気がいたしました。
1980年代
歌詞もすべてチェックされ、「お行儀のいい音楽」を求められた当時のソ連。
そのなかで
フラストレーションをためていた若者たちが
西側ロックに触発され、自らの解放を願った。
モノクロで切り取られた風景には
洒落た感性と同時に、どこかぬかるんで、泥臭い湿り気を感じる。
それは「ここから飛び立ちたい」と願う若者たちの魂だったのか、と思ったり。
さらに
本作の監督キリル・セレブレニンコフ(1969年生まれ)についても
知っておくと、より作品度がましまし。
彼はロシアで活躍していた監督ですが
2017年、本作の撮影中に国の予算を不当横領した罪で逮捕され
自宅軟禁となってしまった。
状況はいまだ解除されていないのですが
そのなかで、完成させたのがこの映画だそう。
うーむ、
汝、不当な圧力に、屈することなかれ、と
リアルなこぶしをあげたくなる、作品なのでした。
7/24(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。
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