眼福、とはまさにこのこと!
「ターナー、光に愛を求めて」74点★★★★
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19世紀。
風景画で知られるイギリスの画家ターナー(ティモシー・スポール)は
オランダを旅し、家に戻ってきた。
最愛の父(ポール・ジェッソン)と再会を喜び
創作にはげむ彼は
またひらめきを求めて旅に出る。
辿り着いた港町で、
彼は宿屋の女主人(マリオン・ベイリー)と
創作意欲をかき立てられる風景に出会う――。
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「家族の庭」(10年)とか
超美しい映像を撮っていた
マイク・リー監督だけど
この映像は、マジ冒頭からガツンとやられると思います。
ターナーの抽象風景画のもとになった
“彼の目が捉えた”風景を
圧倒的な説得力で、再現しようとしている。
冒頭の夕暮れの画もすごいけど
そのあと、引いたショットながら
家政婦の深緑の服の細かいひだや、毛羽立ちまで見えるような
光の加減に圧倒され
さらに
海と光と雲とのグラデーションのなかに帆船が漂う風景とか、
その絵画的美しさといったらもう!
正直、ターナーの作品をそれほど好きと言えないんですが
この映画で、見る目が変わりました。
ただ映画としては
非常に変わった作品かもしれない。
普通の伝記ものとは違い、
ストーリーを追うというより、
エピソードや、画家の感じたイメージをポン・ポン・ポンと置いた感じ。
しかし散漫ではなく、全体に深い印象を残すんですね。
主人公ターナーを演じるのは
ハリー・ポッターのあのネズミのペティグリュー
ティモシー・スポールで、
監督、彼をよく描こうなんてみじんも思ってないし(笑)。
でもそこがいいというか。
本編とあまり関係ない
当時の風俗を描くのもとても楽しそうで
当時の美術界の状況もよくわかる。
写真の台頭、蒸気機関車の登場など、
その時代の画家を取り巻く社会の変化から
否応なしに、画家の需要が変化させていく様も捉えられているので
ターナーだけでなく
当時の美術史としておもしろかった。
あとね、猫が画面にチラチラ登場するのも嬉しいんですよ。
★6/20(土)からBunkamura ル・シネマ、ヒューマントラスト有楽町ほか全国で公開。
「ターナー、光に愛を求めて」公式サイト
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