これは良い!心を持っていかれた!
「リンドグレーン」77点★★★★
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1923年、スウェーデンの田舎の町。
16歳のアストリッド(アルバ・アウグスト)は
自由奔放で、周囲とはなじまない、一風変わった少女。
中学を卒業した彼女は
かつて新聞に掲載された作文がきっかけで
地元の新聞社で助手をするチャンスを得る。
父の知り合いである編集長(ヘンリク・ラファエルセン)のもと
アストリッドは水を得た魚のように
生き生きと仕事をし始める。
そんな彼女に編集長は好意を抱きはじめ
彼女もその愛を受け入れるのだが――?!
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「長くつ下のピッピ」の作者、アストリッド・リンドグレーンの
知られざる物語。
なのですが、
創作にいたる話などは一切カットし、
スウェーデンの田舎での少女時代から、10年ほどの間の
ある人生の一部分にのみ焦点を当てている。
その潔さに加え、主演女優も素晴らしく、
静かにエモーショナルをかきたてられました。
1920年代のスウェーデンの田舎で、他に染まらず
一味変わった存在だったアストリッド。
そんな彼女は、キラリと光る文才を認められ、
地元の新聞社で助手を務めることになる。
初めてタイプライターに
自分の書く文字が打ち込まれた瞬間の震えるような喜び。
生き生きと取材に行き
ようやく居場所を見つけて輝き出した彼女は
父ほど歳の違う、新聞社の編集長に惹かれていく。
彼も彼女を愛し、
二人は結ばれるんですが
しかし、予期せず、アストリッドは妊娠するんですね。
編集長には妻がいるし、子どもも7人もいる。
到底、親にも許されない。
歓びの絶頂から、
とたんに不安に押しつぶされそうになる様も、
そこから決意のもとでの出産、そして幼い子との胸を引き裂かれる別れ――と
彼女の心の震えにシンクロして
一挙手一投足から目が離せなくなる。
自分の心にのみしたがって、
この時代に立とうとする彼女の
不安定にして脆く、しかし強いさまを、繊細に演じた
アルバ・アウグストが素晴らしく
(「マンデラの名もなき看守」「リスボンに誘われて」などで知られる
映画監督ビレ・アウグストの娘さんだそう!)
その魅力を引き出した女性監督も、見事でした。
リンドグレーンは02年に94歳で亡くなるまで、
子どもの人権を守るために活動したそう。
この歴史を知ると、納得、ですなあ。
★12/7(土)から岩波ホールで公開。ほか全国順次公開。
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