怖くてもホラーはね、
新感覚を持ってくるので、はずせないんですよ。
「レリック-遺物-」69点★★★★
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森のなかの一軒家で一人暮らしをしている
老女エドナ(ロビン・ネヴィン)。
だが「彼女の姿が見えなくなった」という知らせがあり
娘のケイ(エミリー・モーティマー)と孫のサム(ベラ・ヒースコート)が
久々にエドナの家を訪れる。
部屋の中には至る所にメモが貼ってあり
もういない犬のごはんが置いてあったりする。
どうやらエドナは認知症に苦しんでいたようだった。
ケイはしばらく前から
母が「家のなかに誰かがいる」と
電話で不安を訴えていたことを思い出す。
しかしいったいエドナはどこに
行ってしまったのか――。
愛する祖母を助けたいと
サムは母とエドナの家に泊まることにする。
しかし、そこには恐ろしい秘密があった――。
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オーストラリア出身の
ナタリー・エリカ・ジェームズ監督による
新感覚ホラー。
「マイ・ブックショップ」(17年)のエミリー・モーティマーが
娘ケイを演じ、
三世代にわたる女性の関係に
老いへの嫌悪や不安、忘れることへの不安などを染みこませていて
たしかに新しさがあります。
過激なギャッ!は控えめなので
ホラーが苦手な人にも、まずまずオススメできます。
まあ、祖母の家や森の中、
目の端に何かが「いる」感じが絶えずあり
ジクジクと怖いんですけどね(苦笑)
その怖さより
女同士こそのギクシャク、家族だからこその衝突やいらだちを、
うまく描いているなあと感じました。
仕事が忙しく、老いた母を一人にしていた娘ケイの呵責。
そして彼女自身もまた
自分の娘サムとうまくいかない。
「大学まで行かせたのに、なんでちゃんと仕事に就かないの?」的なチクチクを
ケイはついサムに言ってしまって、嫌われてるんだけど
たぶん、こういうギクシャクって
自分の母エドナと自分のあいだでも
起こっていたことなんでしょうね。
母と娘のあいだに起こりがちな
「こうあってほしい」の押しつけや、支配。
だからケイは家を出てから、エドナとも距離を取っていたのかという気もする。
しょせん、親子は似るもので
因果は巡ってくるものですから。
まあ、このへんは想像でもあるというか
そうそう、本題はホラーなのだった!(笑)
で、少し話を明かすと
エドナは結局、突然ふっと帰ってくるんですよ。
「おばあちゃん、どこに行ってたの?」と聞いても答えず
あきらかに、なにかに怯えている。
ケイとサムは、しばらくエドナの家で一緒に暮らすことになるんですが
エドナのおかしな行動や言動が
認知症によるものなのか?それとも心霊現象なのか?が
わからないところを
うまくホラーにしているわけですね。
プレス資料のプロダクションノートによると
家の中が迷路になっていく描写は
認知症をわずらう人が「迷う」感覚のメタファーだそうで
うーん、それは気がつかなかった(ビクっててそこまで考えられなかった)
最後の展開に「うーん?」と思う部分はなくはないですが
しかしラスト、娘が母の背中に「それ」を見つけるシーンにはゾクリ。
それは、順番に、確実に、やってくる――というね。
けっこう奥行きがあるホラーなのでした。
しかもこの話、
日本にルーツを持つ監督の体験に基づいているそう。
数年前、お母さんの故郷である日本を
久々に訪れたナタリー監督は
大好きだった祖母が認知症になっていた、というショックな経験から
物語を着想したそうです。
そういわれると、この映画
全体的に湿り気があるんですよね。
部屋の壁や人体にはびこる黒い異物も
どこかカビやシミ、あるいは墨のようにも見える。
これも日本的・・・なのかもしれません。
★8/13(金)からシネマート新宿ほか全国で公開。
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