うん、これは快作!
「いとみち」76点★★★★
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青森県弘前市の高校生いと(駒井蓮)は
この世代には珍しい「ド・津軽弁」を話す女子。
密かにクラスメイトの早苗(ジョナゴールド)と
話してみたいと思っているが
人見知りゆえ、なかなかきっかけがつかめない。
いとの父(豊川悦司)は津軽弁を研究する学者で
いとが幼いころ亡くなった母は、津軽三味線の名手でもあった。
いともまた、祖母(西川洋子)の手ほどきで
三味線コンクールで入賞する腕前だが
最近は、三味線にも身が入らない。
「自分は何がしたいんだろう」――
悶々としていたある日、
いとがスマホで見つけたのは
「メイドカフェ」の求人。
え?いっちょ、やってみる?と
面接に向かうのだが――?!
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おもしろかった!予想外によかった!が
正直な感想す(笑)
1978年、青森県青森市生まれの
横浜聡子監督作品。
自身のルーツたる青森を舞台に
そこに暮らす高校生の「自分探し」を描き、
テーマはオーソドックスながらも
新しい「ローカル」への視点を持つ
快作だと感じました。
冒頭からして
津軽三味線が得意なヒロイン・いとが話すのが
集中して聞いていないとまったく理解できない津軽弁ってとこが衝撃。
でも全然おかまいなしに、
いや、むしろ理解を振り切って
ドカドカと話が進むところが好きだ(笑)
それはつまり
「地方< 都会」という、なんとなくの固定観念の方程式を
パスッと蹴っ飛ばし、
「標準」におもねらない視線を
ごく自然に、提示してくれているんだと思うんですよね。
(方言でSiriできるんだ!というシーンもびっくらこいた。いいねえ。笑)
若くして亡くなった妻の実家で暮らす
父と娘、妻側の祖母というやや複雑な環境も
サラッと自然に、居心地よさそうだし
そもそも
いとが「ピン!」とくるバイトが
なんでメイドカフェ?(笑)とかあるんですが
そこもフツーに納得させられてしまう。
で、
バイト先となるメイドカフェには
シングルマザーとしてがんばる先輩とか
漫画家デビューと東京行きを目指す同僚とか
東京からUターンした店長とか
それぞれの人生を背負ってきた人々がいて
いとは
そこでの出会いや、人との関わりを経て、
自身の家族と向き合い、
成長していくんです。
シングルマザーやジェンダー問題、格差や貧困――
あらゆる現代を背景にしつつ、
しかし
押しつけがましい「いい話」にするわけでなく、
狭い世界にいた高校生が、一歩を踏み出し
社会との接点=バイト先でさまざまを知る過程、
それが
10代にとって得難い宝になってく様子が
気取らない筆致でユーモアを交えて描かれていて
いいなあと。
青森県平川市出身で
雑誌『ニコラ』の専属モデルを経て、俳優デビューしたという
いと役、駒井蓮さんも光ってるし
父親役・豊川悦司さんが抜群の存在感。
いろいろを考えさせれながら、
ヒロイン、そして若い世代を応援したくなるのでした。
――けっぱれ!
★6/18(金)から青森先行公開、6/25(金)から全国公開。
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