スマホや動画配信の時代に馴染めない中年主人公――ってとこに
共感できたら、観るしかないす!(ワシじゃ!笑)
「ベル・エポックでもう一度」72点★★★★
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主人公ヴィクトル(ダニエル・オートゥイユ)は60代。
かつては売れっ子イラストレーターだったが、
デジタル化についていけず
同年代の妻のマリアンヌ(ファニー・アルダン)にも見放されている。
そんな父に息子が友人(ギョーム・カネ)が始めた
〈タイムトラベルサービス〉をプレゼントする。
それは映画のセットや役者を使って
客の戻りたい過去を再現してくれる
体験型のエンターテイメントサービスだった。
ヴィクトルは
「運命の女性と出会った1974年のリヨンに戻りたい」とリクエスト。
当日、指定された場所に赴くと
そこには、あの日、あのときのすべてが再現されていた――!
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しょっぱな中世貴族の晩餐シーンからはじまり
「あれ?現代劇じゃなかったっけ?」と
意表をついてくる本作。
もろもろを理解し没入するまでに少々、時間はかかりますが、
なかなかにおもしろい後味を残してくれます。
主人公のヴィクトルは60代。
かつては売れっ子イラストレーターだったけど
スマホや配信動画など新しいものに馴染めず
いまや
完全に時代から取り残され(うっ・・・共感)
半・隠居生活を送ってる。
いっぽう、同世代の妻は
VRまで使いこなすアグレッシブな女性。
彼女は時代の変化を受け入れずに思考停止し、
あげく会食中に居眠りをする夫に
ウンザリしている(うわあ、うちのおとんとおかんみたいだ!)
この夫婦描写が実にリアルなんですが
さて、映画は、そんなしょぼしょぼな夫ヴィクトルが
息子の勧めで<タイムトラベルサービス>なるものを
試すことになるところから動き出すんです。
<タイムトラベルサービス>とは
映画のセットや役者を使って、
客が望む過去を体験させてくれる、というアトラクション。
言うなれば
「昭和を再現したテーマパークで、自分が主人公になって
”忘れられない、あの1日”を過ごす」イメージかなあ。
で、その体験にハマったヴィクトルは
けっこうな額の追加料金を払って体験の延長をし、
さらに運命の女性を“演じている”女優に恋をしてしまう――という展開。
映画やドラマが作り出す「虚構」が大きなテーマでもあり
そこで
完璧に造られた「嘘」を演出する
スムーズでなめらかなカメラワークが、実に気持ちよい。
過去に戻る感覚はSFのようでもあるし、
サービスを提供する舞台裏のドタバタも可笑しい(笑)
手の込んだ入れ子構造のようで、
実は周りくどすぎる熟年夫婦のラブストーリーだったりもして
けっこう深いんです。
過去を体験することを
「あのころはよかったなぁ」とかの
単なる「ノスタルジー」にせず
主人公ヴィクトルが、過去を再体験することで
どう変化していくのか――が
見どころですね。
主人公の状況に思い当たるふしある方には
ぜひともオススメしたいし
てか、実際にこのサービスないの?と
本気で思ってしまうのでありました(笑)
★6/12(土)からシネスイッチ銀座ほか全国で公開。
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