アネット・ベニング×ビル・ナイ。
こりゃ、見たくなる夫婦なんですが――。
「幸せの答え合わせ」69点★★★☆
********************************
イギリス南部の海辺の町シーフォード。
美しい景色のこの街で暮らす
妻グレース(アネット・ベニング)と、夫エドワード(ビル・ナイ)。
妻グレースは、芸術家肌でややエキセントリック。
そんな妻の要求に
夫エドワードは常に静かに応え、
夫婦はもうすぐ結婚29周年を迎えようとしていた。
が、独立した一人息子のジェイミー(ジョシュ・オコナー)が
久し振りに帰郷したある日。
夫エドワードは突然、
「家を出て行く」と言い出した。
その理由を聞いて耳を疑う妻と息子だったが――?!
********************************
結婚29年め夫婦の終わりとその先を描いた作品。
アネット・ベニングが妻でビル・ナイが夫、と
いや~、これだけで観るでしょ!って
役者は最高です。
夫婦のじわじわとした破綻もリアルなんだけど
――う~~~む、これはどうにも気が滅入る。
29年の結婚生活を「好きな人が出来た」と、終わらせようとする夫。
マジ?酷い!と思いたいところですが
うーむ、そうではないところが複雑で。
どんな夫婦にも型にはまらないイロイロがあるのは承知ですが
このカップルはけっこう、映画で描かれてきたなかでも
珍しいかもしれない。
というのは、
夫はすごーく”いい人”なんですよ。
妻に献身的にお茶を淹れ、
妻の言うことになんでもYES、でやってきた。
妻のほうがややエキセントリックで
そんな夫を引っ叩いたり、テーブルをひっくり返したり――
DVまではいかないと思うんだけど、ある種のモラハラが蓄積されていたと思われる。
で、そんな妻にさすがに愛想をつかした夫が
好きな人を作って出て行ってしまう、という話なんです。
女性に非がある、という点を
ちょっと意外に思ってしまうあたりが
ワシもまだある種、固定観念にとらわれているのか――とか
いろいろ考えさせるんですが
気が滅入る、というのは
あまり話にスカッと!な展開がないから。
夫が29年間、我慢していた、というのは
理解できる。
でもねー
そんな状況で夫に去られた妻が
いつまで経っても立ち直らずグズグズするのが
観ていてかなりモヤッとする。
それに
夫婦の間に立つ一人息子も、出来すぎってほどに
いいヤツ過ぎるんだよね――。
それでも映画の端々に、
演技派ふたりの厚みと、それを生かした演出は光ります。
例えば、夫が紅茶を入れるとき
毎回ティーバックを潰して「絞り出す」ようにする、ちょっとセコい感じとか。
彼に捨てられて一気に抜け殻になる
妻=アネット・ベニングの老けっぷりの凄まじさとか。
そして、観る誰もが思うと思うけど
夫と、新しい相手とのヤサを探し出した妻が
その家を急襲するシーン。
修羅場を想定した、そのときの
夫のカノジョの応対が
見事すぎて笑える(笑)。
いわく
「不幸な人間が3人いた。でも今は1人になった」――
暗に、いやズバリ突き刺す、この冷静な反撃がたまらん(笑)
失意の妻の、その後の乗り越え方も
時間はかかったけど、納得はできるもので
欧米人の「詩」好きの理由が
初めて、腑に落ちたりもしたのでした。
★6/4(金)からキノシネマほか全国順次公開中
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます