ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

お名前はアドルフ?

2020-06-05 23:55:31 | あ行

いまや、ドイツは世界の羨望の的。

あ~メルケルさん、日本に貸してくれないかなあ。

 

 

「お名前はアドルフ?」70点★★★★

 

********************************

 

エリザベート(カロリーネ・ペータース)は

夫で哲学者のスティファン(クリストフ=マリア・ヘルプスト)と

自宅でのディナーの支度の真っ最中。

 

ディナーには

もうすぐパパになる、エリザベスのイケメンな弟トーマス(フロリアン・ダーヴィト・フィッツ)と、

彼の妊娠中のパートナー(ヤニーナ・ウーゼ)、

さらに

エリザベスの幼なじみの友人レネ(ユストゥス・フォン・ドホナーニ)が招かれている。

 

が、少し早くきた弟トーマスが

思わぬことを言い出した。

 

「生まれてくる子の名前は、アドルフにする」

 

――――はい?! アドルフ・ヒトラーと同じ名前を

自分の子どもにつける? 正気か?!

 

一同はすったもんだの大騒ぎになるが――――?!

 

********************************

 

あの、アドルフ・ヒトラーと同じ名前を、自分の子につける?

おまえ、頭、沸いとんのか?!

――――という名前を巡る騒動を発端にした

ドイツ発のシニカルコメディ。

 

もともとフランスのヒット舞台劇だったものを

プロデューサーや監督が「これをドイツでやらんでどうする!」と

映画化したそうです。

まずは、その心意気が、いいね!

 

で、映画は

イタリア映画「おとなの事情」(17年)にも通じるような

ある日のディナーを90分の映画にした

ワンシュチュエーションの会話劇で

 

アドルフ、という名前を巡る討論から、

次第に身内同士の(やや下世話な。笑)本音バトル、

さらに、「ええ?そうだったの?」な

大告白大会になっていく、という展開。

 

想像よりも「アドルフ」うんぬんはメインテーマにあらず、

それにどう反応するか?から暴かれていく

人間の「本音」に焦点があたっている。

 

なので

政治的な討論、とかではなくて

話が、どこにでもある身内ネタや内輪もめになっていくのが

意外でもあり、なるほどなーと思いました。

 

それでも

騒動の発端となる「アドルフ」に

ドイツの「傷」を思うのはたしか。

 

でもドイツはそれに向き合い、しっかり謝罪もし、

原発廃炉、難民の寛容な受け入れ――――と、前を向いて国作りを進めてきた。

 

ネオナチや難民排除の空気があったけれど

しかし、今回の"コロナ神対応”で

いまドイツ株は急上昇!

 

この映画を観ながら

ドイツの人々が、歴史を噛みしめ、乗り越えんとしている様をリアルに感じ、

そこで体得してきた成熟度をうらやましく思う・・・・・・のは

ワシだけではないはずです。

 

コロナ禍に、より、いろいろを思わせる映画でございました。

 

★6/6(土)からシネスイッチ銀座ほかで公開。

「お名前はアドルフ?」公式サイト


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