なんでこんなに沁みるのか~♪(演歌調で)w
「わたしの叔父さん」80点★★★★
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デンマーク、ユトランド半島。
27歳のクリス(イェデ・スナゴー)は
叔父さん(ペーダ・ハンセン・テューセン)と暮らしている。
昔ながらの酪農を営む二人の日常は
淡々と、静かで、でもなんだか満たされるものだった。
だが、クリスはある出来事から
獣医師になる夢を諦めてもいた。
そんな事情を知る近所の獣医師が
クリスを助手に誘う。
かつて抱いていた夢を思い出したクリスの心に
さざ波が立ち始める――。
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2019年東京国際映画祭グランプリ作品。
すごく、いいです。
冒頭から何のセリフもなく、黙々と
叔父さんとヒロイン・クリスの暮らしぶりが描かれる。
朝起きて、叔父さんの身支度を手伝い、朝食を食べ
(朝食の食卓で、マフィンを半分にして焼くトースターがかわいい。笑)
牛舎で仕事をして、夜にはカードゲームをして、寝る。
そんな暮らしぶりを観ているだけで
なんだか、楽しい。
なんのセリフもなくても自然な
二人の空気感が、心地いいのですが
実は、このヒロインと叔父さん、実の叔父と姪なんだそうで、びっくり!
で、そんな無言のなかで
しばらくして出てくる最初のセリフが
スーパーで叔父さんが言う「ヌテラ」だったりするのが
めちゃくちゃ笑えたりする。
とにかく所々に小さなユーモアがあるのがいいんですね。
しかし、そんななかで
次第にヒロイン・クリスの不幸な事情が明らかになっていく。
クリスはそれによって、獣医になる夢を諦めていたんですね。
平穏な日々のなかで、
ときにどうしようもない憤りを、叔父にぶつけるクリス。
でも、日々の穏やかなルーティンが、自然にそれを巻き込み、沈殿させていく。
それは積もる澱かもしれないが、かき回さなければ平穏だ。
かき回す要素は
獣医師への諦め切れない夢であり、
地元で出会った青年だったり。
夢を追うか、家族を選ぶか。都会に出るか、地元に残るか。
誰もがぶつかり、悩む問題が、立ち現れるんですね。
まあ、まずは観ていただき
さまざまに思っていただきたいのですが
ワシが感じたのは
常に前に進むこと、変化してゆくことだけが、人生の必須ではない、ってこと。
どうにもならなくても、人生は続いていく。
何かに縛られていると感じたり、
失われた時間を過ごしたように思えても
振り返ればいつの日かそこに至福があったと、人は気付くのかもしれない。
そんなことを、思いました。
親の介護が避けられない現状となってきたワシら世代には
特に響くかもしれない。
ラストもすごく好きですねえ。
おなじみ「AERA」の「いま観るシネマ」で
フラレ・ピーダセン監督にインタビューしております。
AEARdot.でも読めますので、ぜひご一読くださいませ。
そして、昨年末から『音楽の友』さまでも
映画欄の連載をさせていただいており
そちらでも本作、紹介しております。
お目に触れる機会がありましたら、ぜひ!
そしてそして、劇場用パンフレットでも
監督インタビューをさせていただいてます。
映画と併せて、ぜひお楽しみくださいませ~。
★1/29(金)からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
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