やばい、綾野剛がいい!
「そこのみにて光輝く」72点★★★★
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北の町。
達夫(綾野剛)はある出来事をきっかけに仕事を辞め、
無為な日々を過ごしていた。
ある日、達夫はパチンコ店で
人なつっこい拓児(菅田将暉)と知り合い、彼の家に招かれる。
貧しい家のなかでは
寝たきりの父と、雑な母親、姉の千夏(池脇千鶴)が
身を寄せ合うように暮らしていた。
達夫は一瞬で千夏に惹かれるが、
千夏はつらい現実を背負っており――。
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何度も芥川賞候補になったものの賞に恵まれず、
1990年に41歳で命を絶った
不遇の小説家・佐藤泰志。
映画「海炭市叙景」の原作者として知られ、
先ごろドキュメンタリー「書くことの重さ」も公開され、
いまの時代、再び脚光を浴びている彼の
“最高傑作”とされる小説を
呉美保監督が映画化した作品です。
もっとどん底に重いかなとイメージしていたんだけど
そうでもなく、
女性目線のよさがあるというか、
呉監督がとても丁寧に優しい手で登場人物たちを描くので
彼らに愛情を持てるんですね。
でも社会の底の風景は確かにあるし、
喉にひりつくような絶望も感じる。
うまい具合に、書き手それぞれの特性で
ひとつの物語を橋渡したような、
原作モノの映画化としては理想の展開ですな。
全体的に池脇千鶴演じる
不遇なヒロインに寄った作りでもあり、
ゆえに綾野剛氏が
彼女を救い出そうとする立場になって
すげえカッコイイ(笑)
女性からの「こうしてほしい」願望が上乗せされて
カッコよさが増幅されるのでしょう。
撮り方のうまさもあるけどね。
惹かれ合っていた二人が最初に
互いの気持ちを確かめ合う場面も印象的で
海のなかで、波の間にポツリポツリと浮かぶ二人の頭が
夢中で相手に泳ぎ寄って行く。
とてもいいシーンだったな。
演出にちょっとした仕掛けを施して
「お」とさせる場面もあり。
ラストシーンもとてもよかったす。
★4/19(土)からテアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。
「そこのみにて光輝く」公式サイト