誉田哲也は女性達をミステリーの主人公にしてきた
殊に「ストロベリーナイト」「インビジブルレイン」
などの姫川玲子シリーズで売れっ子作家になった
今回の「月光」では美しく聡明で天使のような慈愛に
満ちた少女の悲劇を書き切っている
タイトルの月光とは
美少女の夜の顔ということなのか?
ベートーベンのピアノソナタが授業が終わり人気の
途絶えた音楽室から密かに聴こえてくる 少女の弾く
ピアノのその音が途切れた時 年頃の少年達にありがち
な卑猥な妄想を凌駕する眼を疑うような光景を目撃する
そして少年達は少女に対して抱いていた幻想を裏切られた
腹いせのように卑猥で醜悪な復讐を決行する
この作品を読んでいて思い出したのは ピアノソナタ月光
という曲ではなくではなく ベルリオーズの恋と失恋を
モチーフに作曲されたという 幻想交響曲だった
天使との恋愛は幻想の中で生まれ哀しく消えてゆくのだ