今朝朝ドラを観ていて
思い出した事がある
およそ40年前
大手の印刷出版会社を辞め
倉敷の知り合いの印刷会社に拾ってもらった
ある日
社長が会社の庭で板を鉋で削って何か作っている
社長が事務所から出てるのは珍しい
何を作っているのかと尋ねると
枕だと云う
何でこんなところで枕を???
社長の息子の専務に事情を訊ねると
これは寝床で使う枕では無いでー
石板に絵を描く時に身体と腕を預ける物だ
以前社長が印刷屋の小僧をしていた時の
同僚が
今日から一週間ほど
うちに来て 団扇の図柄を石板に
直接書いてくれることになったのだという
八十に手が届きそうな老職工は
引退してもう数十年も経っているという
のだが
かつての同僚の頼みを快く引き受けて
やって来てくれたのだ
それがオイラが初めて目にする いや最後に目にした
石板印刷だった
その頃
印刷の主流は
オフセット(平版印刷)の時代になっていた
活字を使う凸版 若しくは金属を腐食させる凹版(グラビア)
なども行われていたが
平版印刷は石板からジンク版と呼ばれる
金属板に写真焼着付けで版をつくる
オフセットの時代になっていた
今回は少数で多種類の印刷物を
安く省力的に作ることのできる石版印刷を選んだという
既に出来上がった凹凸のある無地の団扇に
校正機と呼ばれる
すべて手動の印刷機で
印刷する事を試みてみるという
社長の懐古趣味と石版印刷を知らない
オイラや自分の息子に生の石版印刷を見せるために
きっと暇を持て余して
自宅で燻っているであろう
老職工に最後に腕をわせたかったのだろう