金沢大学で担当している共通教育科目 「マスメディアと現代を読み解く」(1単位)の授業がきょう12日始まった。全8回の講義コンセプトは、マスメディアが政治や経済、文化をどう報じるのか、その報道からメディアの価値や在り様を考察する。大学でこの講義を担当してもう12年目になる。2016年度の講義から学生たちにマスメディアとの接触度を尋ねるアンケートを行っている。毎回同じ設問で今回4回目となる。
アンケートの設問は「あなたは新聞を読みますか 1・毎日読む 2・週に2、3度 3・まったく読まない」「あなたはテレビを見ますか 1・毎日見る 2・週に2、3度 3・まったく見ない」の単純な設問だ。新聞を「まったく読まない」68%、テレビを「まったく見ない」17%の結果だった。4回同じ設問でのアンケートなので推移がわかる。結論から言うと、「新聞離れ」は下げ止まりから反転へ、「テレビ離れ」は加速している。
数字を分析してみよう。新聞から。2016年の調査(回答190人)は「まったく読まない」78%、「週に2、3度」16%、「毎日読む」6%だった。2017年調査(回答73人)は「まったく読まない」75%、「週に2、3度」18%、「毎日読む」7%、2018年調査(回答102人)は「まったく読まない」75%、「週に2、3度」18%、「毎日読む」7%。ことし2019年調査(回答69人)は「まったく読まない」68%、「週に2、3度」22%、「毎日読む」10%となった。調査を始めた20016年から「まったく読まない」は漸減し、3年間で10ポイント減ったことになる。逆に「週に2、3度」は16%から22%に推移して、6ポイント増えている。「毎日読む」も6%から10%だ。数字で見る限り、下げ止まりから反転傾向は浮かんでくる。
アンケートではその理由も尋ねている。多いのは「学生生活では新聞は経済的な負担になる」といった意見だが、中には「大学の授業でプレゼンテーションを作成するためのネタ探しとして新聞を読むようになった」(3年)や「テレビは娯楽の面で見ているが、新聞は世界のおおまかな情勢を知るために読んでいる。個人的な見解としてはテレビよりも新聞の方が情報が整理されていると思う」(1年)など新聞に対し肯定的な意見が散見される。
一方、「テレビ離れ」は加速している。2016年調査では「まったく見ない」12%、「週に2、3度」23%、「毎日見る」65%だった。2019年調査は「まったく見ない」17%、「週に2、3度」34%、「毎日見る」49%だった。3年間の比較では「毎日見る」は16ポイントも減り、「まったく見ない」は5ポイント増えている。「毎日見る」は2018年調査でも49%だったので、2年連続で過半数割れとなった。理由でも「夜のニュースは毎回見るようにしており、その日一日の情報を知る便利なツールとして使っている」(1年)といった肯定的な意見の半面で、「テレビはネットニュースの焼き直しや、芸能人のゴシップ、政治的バイアスのかかったものが流れている。長期間どの局も同じような内容を流し続けるという、例えばモリカケとか、ことがあったため見なくなった」(※学年記入なし)といった辛辣なコメントもある。
毎年のアンケート調査ではこの科目を履修する学生を対象に行っているもので、年によって学生数に増減があり、母数にばらつきが出て調査手法としては精度に欠く。なので、傾向を読むだけの調査ではある。電通が発表した「2018年日本の広告費」(2019年2月)によると、総広告費6兆5300億円のうちテレビが29.3%のシェアを占め、次にインターネットが26.9%で迫り、新聞は7.3%だ。テレビ業界はビジネスモデルが視聴率だけに、「テレビ離れ」が加速すれば、スポンサー離れも進む。広告費でインターネットに逆転される日も近い。そうなると「次なるテレビ離れ」も起きるのではないかなどと憶測した。
⇒12日(水)夜・金沢の天気 はれ