自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「国際紛争」化する日本海

2019年06月18日 | ⇒ニュース走査

         安倍総理は5月14日「海上保安の日」で、海上保安庁の幹部職員を前にこう述べた。「新元号は万葉集の梅の花の歌32首の序文から引用されたものです。海上保安庁の徽章もまた梅であります。梅は厳しい冬の寒さを耐え忍び百花に先んじて花を開き、かぐわしい香りを放ち、実を結び、絶えず人々の身近にあるものです。これは正に海上保安庁そのものではないでしょうか。様々な脅威は時を選ばず押し寄せてきます。新たな令和の時代にあっても梅の徽章を胸に、全職員が一致団結し、荒波を乗り越え平和で豊かな海という実を結んでほしい」(「海上保安庁HP」より)。確かに目立たないが、最前線の守り、防人の仕事だ。

   能登半島沖の日本海の排他的経済水域(EEZ)にはスルメイカの漁業資源が豊富な大和堆(やまとたい)と呼ばれる漁場がある。この時季、毎年のように北朝鮮の漁船による違法操業が繰り返されているのだ。海上保安庁は取り締まりに当たっていて、5月下旬からこれまで延べ300隻の北朝鮮の漁船を確認し、違法操業をする漁船に対し警告を行い、退去しない場合は放水を行っている。しかし、いったんは退去しても、また戻ってきて、イタチごっこが続いている。

   北の木造漁船はイカの網漁で、集魚灯などは装備されていない。日本のイカ釣り船団(中型イカ釣り船)がやってくると、夜、スルメイカは集魚灯の下に集まるので、北の漁船が傍らに寄って来て網漁を行う。接触事故などが起きるとやっかいなことになる。さらに、網がスクリューに絡まると船が故障するので、日本の船団は北の漁船を避けて北海道沖の武蔵堆(むさしたい)へ移動を余儀なくされているのが現状だ。さらに、その日本船団を追いかるように、北の漁船も武蔵堆になだれ込んでくる。

   さらに面倒なのが韓国だ。昨年11月15日には大和堆で山形県のイカ釣り漁船と韓国漁船が衝突している。11月20日、大和堆付近で操業中の北海道のイカ釣り漁船に対し、韓国の海洋警察庁の警備艦が「操業を止め、海域を移動するよう」と指示を出し、この漁船に接近した。連絡を受けた海上保安庁の巡視船が韓国の警備艇と漁船の間に割って入ることで、韓国警備艇は現場海域を離れた。12月4日、島根県の隠岐諸島100㌔の日韓の暫定水域で、石川県漁協所属の中型イカ釣り船が操業中、船を安定させる漁具のロープ「パラシュートアンカー」を海中に放っていたところ、韓国漁船が近づいてきて前方を通過、そのパラシュートアンカーをひっかけ、イカ釣り船は20㍍引きずられ、ロープは切れた。イカ釣り船は韓国漁船に止まるよう呼びかけたが応じなかった。日本側の言い分を無視する、まるで「レーダー照射問題」のような「事件」が海上ではすでに起きている。

  韓国は、竹島は韓国の領土であると言い張り、大和堆も韓国海域であると主張したいので、その布石を打っているのだろうか。これから「海上衝突」状態が本格的に始まることは想像に難くない。安倍総理は「荒波を乗り越え平和で豊かな海という実を結んでほしい」と言うものの、現実はすでに「国際紛争」化している。(※写真は、能登半島・珠洲市の海岸に漂着した北朝鮮の木造漁船=2017年11月)

⇒18日(火)夜・金沢の天気    くもり

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