今回の参院選は異色だった。「NHKから国民を守る党」の代表の立花孝志氏 =元NHK職員=が初当選を果たした。報道陣の取材に対して、「歴史が変わる瞬間だ」と語っていたのが印象的だった。シングルイシューで初の国政進出ではないだろうか。 NHKから国民を守る党は37人が選挙区選挙に立候補し、比例代表(定員50)にも4人が出馬していた。受信料を支払った人だけが視聴できるスクランブル放送化や受信料を払わない人を応援・サポートするとアピールしている政治団体だが、シングルイシューだからといって侮れない。先の東京都区議選(投開票4月21日)で17人が当選するなど、4月の統一地方選挙では立候補者47人のうち26人を当選させている。同党の地方議員は総勢39人だ。単一論点を掲げる政党がこれほど議席を獲得するのは異例だろう。
参院選の戦いぶりは奇妙だった。ネット選挙を活かして、フォロワーが多数いるユーチューバーらを擁立しての戦いだった。NHKで比例代表の政見放送(7月10日午前)をチェックしたが、立花氏はNHK職員のわいせつ行為での逮捕など相次いでいると批判していた。他の3候補は「NHKをぶっ壊す」とだけ発言する男性や、寸劇を繰り広げた女性もいた。
立憲民主の比例代表で初当選した石川大我氏はLGBTの支援を続けてきた。自らもLGBT当事者として、差別解消法案や婚姻平等法案の成立を目指す。もう一人、この候補者は落選したのだが、ぜひ喜びの歌声を聞きたかった。石川選挙区で、国民民主の新人として選挙戦を戦った田辺徹氏はドイツ在住歴20年の元オペラ歌手だ。選挙期間中は県内を回り、安倍政権の経済政策「アベノミクス」から家計第一の「ヒトノミクス」への政策転換を説いた。10月に予定される消費税増税の阻止も訴えたが、自民の現職には及ばなかった。午後8時にテレビの速報で相手候補の当確のニュースが流れ、「安倍政権の恐怖政治に民意がつぶされた」と報道陣のインタビューに悔しそうに答えていた。
ところで、日本の参院選を海外メディアはどう伝えているのだろうか。アメリカのウオール・ストリート・ジャーナル紙は見出しで「Shinzo Abe Is Set to Become Japan’s Longest-Serving Prime Minister In elections for the upper house of parliament, Japan’s ruling coalition maintains its majority」(安倍晋三氏が日本最長の首相に就任 参院選では日本の与党連合が大多数を維持)と淡々と伝えているが、選挙後に関税の引き下げを求めているトランプ大統領との難しい交渉が待ち受けていると報じている。安倍総理も勝利の喜びにうかうかとしてはおられない。
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