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自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆ローマ教皇、極東の旅

2019年11月26日 | ⇒メディア時評

   「民主化運動に前例のない地すべり的勝利」とイギリスBBC(26日付・日本語版)は伝えている。24日に投票が行われた香港の区議会議員選挙は、18の区議会の合わせて452の議席をめぐって争われ、政府に批判的な民主派が80%を超える議席を獲得して圧勝した。

   同Web版では、親中派の有力議員を破った21歳から37歳の4人の若い候補者たちを紹介している。ベテラン政治家を800票差で下した21歳の学生は、匿名の脅迫状が送り付けられる中で活動を続け、「きょうの勝利と記録的な投票率は、この壊滅的な状況における香港市民の声をはっきりと反映している」と勝利の喜びを語っていると紹介されている。この記事を読んだだけでも、体を張った選挙だったということが伝わってくる。

   一方で、民主派が圧勝し抗議活動が勢いを増すのを警戒する中国政府は、アメリカ議会が香港人権・民主主義法案を議会上下院で可決したことを受けて、北京に駐在するアメリカ大使を呼んで強く抗議し、トランプ大統領の署名で法案を成立させた場合、報復措置を取ると警告したと報じられている(26日付・NHKニュースWeb版)。中国外務省の次官はアメリカ大使に対し、「法案の成立を阻止し、内政干渉をやめるよう強く求める。さもなければ一切の悪い結果はアメリカが負うことになる」と抗議した(同)。

   アジアに熱風が吹く中、ローマ・カトリック教会の教皇として38年ぶりに日本を訪れたフランシスコ教皇。24日に長崎市の爆心地公園で、同日夜には広島の平和公園でそれぞれスピーチを行った。安倍総理との懇談(25日)では、「広島と長崎に投下された原爆によってもたらされた破壊が二度と繰り返されないよう阻止するために必要なあらゆる仲介を推し進めてください」と訴えていた。教皇は核を持つことで戦争を防ぐ「核抑止論」そのものを批判し続けている。総理は、アメリカの「核の傘」に守られた日本の安全保障政策に変わりはないとの見解だ。基本的なすれ違いが見えていた。

   今回の教皇来日でどのような成果があったのだろうか。ただ、目立ったのは、これまでメディアは「ローマ法王」と称していたのに、今回は「教皇」と呼び方を変更したことだ。20日の政府発表で、カトリック関係者の間では教皇の呼び方が普及しているので来日を機に名称を統一したようだ。

   きょう昼前、教皇は羽田空港からバチカンへ帰国の途に就いた。4日間の滞在での教皇のお気持ちはいかばかりだったか。教皇が各国に批准を呼びかけている核兵器禁止条約に日本は参加していない。煮え切らぬお気持ちだったに違いない。むしろ、香港に立ち寄ってみたかったのではないか。82歳、極東の旅はお疲れだったろう。

⇒26日(火)夜・金沢の天気     くもり

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