自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆政治外交の茶番劇

2019年11月23日 | ⇒メディア時評

    茶番劇とはこのことか。韓国政府はきのう(22日)、破棄を決定していた日本と韓国のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)について失効を回避することを決めた。きょう午前0時が期限だったので土壇場での決定だろう。朝刊では各社が「さらなる関係悪化はひとまず避けられた」と述べているが、この決定を評価する読者はいるだろうか。「下手な芝居はもうやめろ」というのが率直な感想ではないだろうか。

    各社の関連ニュースをチェックすると、韓国側は破棄するとした通告を「停止する」と発表したのであって、「撤回する」と言っていない。つまり、輸出管理をめぐる今後の日本と韓国の対話の進展を必要とする「条件付き」の措置なのだ。優遇措置の対象国「ホワイト国」に戻さなければ、停止を撤回すると脅している。言葉遊びのようなことを繰り返している外交では、両国の関係改善につながるはずがない。

    茶番劇になりそうなニュースをもう一つ。アメリカのトランプ大統領は、香港の一国二制度を支援する香港人権・民主主義法案が議会上下院で採択され、大統領署名をするのか拒否権を発動するのかとTVメディアから問われ、「香港と立場を共有する必要はあるが、中国の習主席とも立場を共有する必要がある。習主席は友人であり、立派な人物だ」と述べ、明言を避けたと報じられている(22日付・ロイター通信Web版日本語)。

   大統領署名によって法案が成立すれば、中国側が態度を硬化させ通商交渉に影響が出ることは間違いない。逆に、通商交渉を有利に進めるために法案をチラつかせ、中国側が仕方なく折れてアメリカ側が交渉を勝ち取ったとしたらどうだろう。トランプ氏は微笑みながら拒否権を発動するだろう。

   ロイターの記事によると、トランプ氏は「中国は香港との境界沿いに多くの軍部隊を駐留させているが、香港に侵攻していないのは私が習主席に侵攻しないよう要請しているからにほかならない」とし、「現在、歴史上最大の通商合意に向け交渉が進められており、実現すれば素晴らしいことになる。 私がいなければ、香港で数千人の人々が殺され、警察国家が誕生することになる」と述べた。

   記事をストレートに解釈すれば、中国の香港への侵攻を習氏に要請して止めているので、法案は必要ない、つまり拒否権を発動する、と同じ意味だろう。仮にこうなれば、ホワイトハウスの大茶番劇となる。そして、「金のために民主主義を売ったアメリカ大統領」として歴史に悪名を刻むことになるのではないか。

⇒23日(土)午後・金沢の天気      はれ

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