自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆世界史に残る ゼレンスキーお馴染みの姿でホワイトハウス訪問

2022年12月25日 | ⇒ニュース走査

   まるでスパイ大作戦のようなシナオリだ。メディア各社の報道によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は今月21日、お馴染みのオリーブグリーンのトレーナーと同色のパンツ姿でホワイトハウスを訪れ、バイデン大統領と会談した。会談後、バイデン氏は新たに地対空ミサイルシステム「パトリオット」や航空機搭載の精密誘導弾などの軍事支援、人道的支援を表明した。(※写真は、会談後の共同記者会見の模様=ホワイトハウス公式サイトより)

   このニュースを見て、多くの視聴者は「アメリカの大統領と会談するのだから、スーツにネクタイではないのか」とちょっとした違和感をおぼえたに違いない。自身もそうだった。軍事支援を得るための依頼の訪問であればなおさらだろう、と。ただ、逆に考えると、スーツにネクタイだったら、戦うウクライナ国民のモチベーションは下がったかもしれない。2月24日にロシアによるウクライナ侵攻が始まると、ゼレンスキー氏はスーツとネクタイを脱ぎ捨て、ロシア軍と戦っている兵士たちと近い服装に着替えることで、国民との団結を示してきた。その姿勢は侵攻から300日を超えたいまも一貫している。

   そのゼレンスキー氏がスーツとネクタイに着替えてバイデン氏と会ったら、自国民も世界の人たちも「物乞い」の印象を抱いたかもしれない。それにしても、どのようなルートで訪米が可能になったのだろうか。BBCニュースWeb版(23日付)は「How did President Zelensky get to Washington?」の見出しで、その移動ルートを伝えている。以下要約。

   21日未明にウクライナ国境から夜行列車で10㌔のポーランド南東部プシェミシルの駅に到着。アメリカ側が手配した車で90分ほどかけて、ジェシュフ空港に到着した。アメリカ空軍の輸送機ボーイングC40Bに搭乗して、ワシントン近郊のアンドルーズ基地に向かった。アメリカのF15戦闘機が護衛した。北海上空ではロシアの潜水艦からの砲撃を警戒して、NATOの偵察機が監視。離陸からほぼ10時間後、ワシントンの正午ごろに到着した。ホワイトハウスは出国が確認できるまで、ゼレンスキー氏の公式訪問の公式発表を控えていた。

   ヘタに移動すれば暗殺のリスクもあったに違いない。一国の大統領が他国を訪問するために秘密裡に夜行列車に乗り、搭乗した飛行機を戦闘機が護衛するという緊張感にこそ、一触即発のキナ臭さが漂う。そして、お馴染みの服装でホワイトハウスを訪問したゼレンスキー氏の姿は世界史に残るのではないだろうか。

⇒25日(日)午後・金沢の天気   くもり時々みぞれ

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