いよいよ民放で放送とネットの同時配信が始まった。きのう2日午後7時から、民放動画配信サービス「TⅤer」で「日テレ系ライブ」を視聴した。番組「I LOVE みんなのどうぶつ園」が民放の歴史で記念すべき同時配信スタート番組となった=写真=。日本テレビは民放初のテレビ局として1953年8月28日に開局。2003年12月1日にはそれまではアナログ放送から地上デジタル放送をスタートさせ、そして2021年10月2日に同時配信の開始と、まさに日本の放送史を刻んでいる。
放送とネットの同時配信では、NHKが先行して2020年4月1日から「NHK+(プラス)」で始めているので、民放初の日テレの新サービスはNHKに比べれば1年半の遅れでもある。ただ、民放でここまでこぎつけるには相当のハードルがあったことは想像に難くない。技術面もさることながら、日本独特の「放送権」の有り方だ。ローカル局には放送法で「県域」というものがあり、放送免許は基本的に県単位で1波、あるいは数県で1波が割り与えられている。1波とは、東京キー局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビ、テレビ東京)の系列ローカル局のこと。パソコンやスマホ、タブレットで東京キー局の番組を視聴できれば、ローカル局は視聴されなくなるかもしれないという不安がローカル局にはある。テレビ業界における「ポツンと一軒家」化だ。
また、民放ではバンセンと称される番組宣伝や「ACジャパン」が目立つ。電通がまとめた「2020年 日本の広告費」によると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でイベントや広告販促キャンペーンの延期や中止が相次ぎ、2020年は通年で6兆1594億円(前年比88.8%)となり、東日本大震災のあった2011年以来、9年ぶりのマイナス成長。リーマン・ショックの影響を受けた2009年(同88.5%)に次ぐ下げ幅となった。内訳を見ると、インターネット広告費は2兆2290億円(前年比105%)で増加してトップ、テレビ広告費は1兆6559億円(同89%)と減り、ネットとの格差が年々拡大している。
このようなテレビ業界の逆風の中で、日テレがプライムタイムの番組を中心に、放送とネットのリアルタイム配信に踏み切った。昨年10月から3ヵ月の時間をかけて347番組で同時配信の実証実験を行っていた。パソコンやスマホなど対応デバイスでどう映り方が異なるのか、タイムラグ(時間差)、CMの入れ替えなど用意周到に臨んだのだろう。他のキー局も年内から年度内にかけて順次移行する。同時配信によって、民放は新たなビジネスモデルをどう構築していくのか注目したい。
⇒3日(日)夜・金沢の天気 はれ
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます