集落の孤立状態が続いている。石川県によると、12日午後2時の時点で、輪島市、珠洲市、能登町の少なくとも17地区の1900人余りが孤立している。その最大の原因は、海と山が接するリアス式海岸でのがけ崩れなどで他の集落とつながる道路が寸断された状態になっているからだ。
能登半島で孤立化している17の地区をチェックすると地理的に一つの傾向がある=図・上=。それは17のうち15の地区が半島の尖端部分で大陸に面する海岸沿いにあり、地元では「外浦(そとうら)」と呼ばれる地域だ。富山湾の側は「内浦(うちうら)」と呼ばれている。ちなみに、外浦と呼ばれるのには波が荒く、内浦は波が静かとのいわれがある。
その外浦ではがけ崩れが頻繁に起きている。データがある。防災科学技術研究所が作成した「地滑り地形分布図データベース」(2012年)=図・下=によると、能登北部でがけ崩れ現場が集中している場所は外浦であり、今回孤立化している地域とほぼ一致する。
なぜ、外浦ががけ崩れ地帯なのだろうか。以下、地質学の専門家でもない自身の憶測である。ウエザーニュースのまとめによると、元旦の震度7から4日夜にかけて観測された「震央」の分布図(震源の真上の地表の点)は能登半島の西の沖合から佐渡島近くまでの約150kmの範囲に広がっている。このため、断層活動による岩盤の破壊が広範囲におよんでいると推察できる。
政府の地震調査委員会の資料「1700年代以降、能登地方で観測され、記憶が残るマグニチュード6級の震央の位置」(2023年)によると、能登では1729年8月のマグニチュード6.6から7と推測される揺れや、2007年3月25日の同6.9など、2023年5月5日の同6.5にかけて強い地震が12回も起きている。それ以前にも能登では相当の揺れが繰り返されてきたことは想像に難くない。このため、リアス式海岸が広がる外浦では地盤が広範囲に緩んでいて、山側のがけ崩れの要因になっているのではないだろうか。
その典型的な事例が、国指定名勝である「輪島・白米の千枚田」=写真、2018年3月撮影=ではないか。この地区では貞享元年(1684)に大きな地滑りがあり、棚田があった山が崩れた。「大ぬけ」と地元では伝えられる。いまで言う深層崩壊だ。その崩れた跡を200年かけて棚田として再生した。いまも地滑りを警戒して、千枚田の真ん中を走る国道249号の土台に発砲スチロールを使用するなど傾斜地に圧力をかけない工夫がなされている。自然災害と向き合ってきた能登の人々の精神性をあらためて感じる。
⇒13日(土)夜・金沢の天気 くもり時々あめ
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