自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★雷鳴とどろくJPCZの朝

2022年12月19日 | ⇒ニュース走査

   朝から雷鳴が響き渡たり、自宅周辺の積雪は15㌢ほどになっている=写真・上=。この時季の積雪をともなう雷を北陸では「雪出しの雷」や「雪おこしの雷」と言う。ちなみに、気象庁の雷日数(雷を観測した日の合計)の平年値(1991-2020年)によると、全国で年間の雷日数がもっとも多いは金沢の45.1日だ。12月から2月にかけての冬場に多い。いよいよ来たか冬将軍。

   問題はこの冬の積雪量だ。気象予報士が大雪の予想でキーワードとしてよく使うのが「ラニーニャ現象」。同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象をいう。ラニーニャの年には豪雪がやってくる。あの1981年の「五六豪雪」も1963年の「三八豪雪」もラニーニャだったと言われている。

   さらに近年よく使われるキーワードが「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」だ。シベリアから寒気団が日本海に向かって流れてくる際に朝鮮半島北部の白頭山によって、いったん二分されるが、その風下で再び合流し、雪雲が発達しやすい収束帯(ライン)となって北陸地方などになだれ込んでくる。2021年1月にJPCZが若狭湾付近に停滞して大雪が降り続き、福井県の北陸自動車でおよそ1600台が2日間動けなくなったことが連日ニュースとなった。

   今回の降雪もこのJPCZの影響のようだ。NHKニュースWeb版(19日付)によると、強い冬型の気圧配置はきょうも続き、北日本から西日本の日本海側を中心に雪が続く見通し。とくに東北南部や北陸は夕方にかけてJPCZの影響で、局地的に雪雲が発達し、平地でも大雪となるおそれがある。あす20日昼までの24時間に降る雪の量はいずれも山沿いの多いところで、新潟県で70㌢、東北と北陸で50㌢と予想されている。

   話はがらりと変わる。北朝鮮はきのう18日、半島西岸から日本海に向けて弾道ミサイルを2発発射した。最高高度は550㌔程度で、500㌔程度飛翔し、日本のEEZ外に落下したと推測される。きょうの北朝鮮の国営メディア「労働新聞」Web版は「국가우주개발국 정찰위성개발을 위한 중요시험 진행」の見出しで 宇宙開発事業団の偵察衛星開発のための重要な試験を実施したと報じている=写真・下=。

   実験では、宇宙環境における撮影やデータ転送の技術で「重要な成果」を得たとし、2023年4月までに「軍事偵察衛星1号機の準備を終える」と報じている。偵察衛星の打ち上げなのか、あるいは、それを名目とした事実上の長距離弾道ミサイルの開発なのかは定かではない。ただ、この記事では、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有などを明記した日本の安全保障関連3文書改定には触れていない。

⇒19日(月)午後・金沢の天気    ゆき

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☆北朝鮮また弾道ミサイル 「反撃能力」への反発なのか

2022年12月18日 | ⇒ニュース走査

   北朝鮮がまた弾道ミサイルを発射した。防衛省公式サイトによると、北朝鮮はきょう18日午前11時11分と52分の2回、朝鮮半島西岸から日本海に向けて弾道ミサイルをそれぞれ1発発射した。2発とも最高高度は550㌔程度で、500㌔程度飛翔し、日本のEEZ外に落下したと推測される。弾道ミサイルの発射は11月18日にICBMを1発を発射して以来で、ミサイル発射はことし35回目となる。

   日本海側に住む者として、北朝鮮の弾頭ミサイルの発射に注視している。そこで思うことは、35回という頻度もさることながら、着実に弾道ミサイルの性能を高めているということだ。先月18日のICBM「火星17型」の発射では、北朝鮮の国営メディア「朝鮮中央テレビ」「労働新聞」は金正恩総書記の「世界最強の戦略兵器としての威力ある性能が検証された」と成果を誇示するコメントを出した。同時に、白の防寒ジャケットに身を包んだ娘が金総書記と手をつないで兵器の前を歩く姿も掲載した。(※写真は11月19日付・CNNニュースWeb版日本語より)

   また、今月15日に金総書記の立ち会いのもと大出力の固体燃料エンジンの燃焼実験に初めて成功したと発表している。固体燃料ロケットは、北朝鮮がこれまでのICBM発射実験で使用した液体燃料ロケットよりも安定性に優れ、ICBMをより容易に移動することが可能で、打ち上げにかかる時間も短縮できるとされる。北朝鮮は2021年からの「国防5ヵ年計画」で固体燃料のICBM開発を重点目標に掲げており、金総書記は今回の実験で「優先課題実現に向けた重大問題を解決した」と強調した(今月16日付・産経新聞Web版)。

   きょうの発射の目的は何だったのか。共同通信Web版によると、韓国メディアは、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有などを明記した日本の安全保障関連3文書改定に対して北朝鮮が反発した可能性があると伝えているようだ。北朝鮮の国営メディアはあすどう伝えるのか。反撃能力に対する反発なのか、あるいは固体燃料ロケットの実用化に向けた試射なのか。

⇒18日(日)夜・金沢の天気   ゆき

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★ロシアのICBMに「反撃能力」は可能なのか

2022年12月17日 | ⇒ニュース走査

   政府はきのう、敵のミサイル発射拠点などを攻撃する「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有を明記した安全保障関連3文書を閣議決定した。北朝鮮による弾道ミサイル発射、ロシアのウクライナ侵攻、中国による尖閣諸島周辺への領海侵入など、隣国による安全保障面の脅威は増している。

   たとえば、ロシアのセルゲイ・ミロノフ下院副議長がロシアのオンラインメディア(4月4日付)で「どんな国でも、隣国に対して権利を主張することはできる」「多くの専門家によると、ロシアは北海道に対してあらゆる権利を持っている」と述べたことが、日本でも報道された。プーチン大統領がウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」と称して偽旗を掲げて侵攻を始めたように、「北海道の権利」の奪還に動くかもしれないと憶測を呼んだ。

   ロシア軍は今年9月1日から7日に、北方領土や日本海、オホーツク海など極東各地で戦略的軍事演習「ボストーク(東方)2022」を実施した。中国やインドなど14ヵ国の兵員5万人が参加。さらに、9月下旬から1ヵ月ほどかけて、中国海軍とロシア海軍の艦船計7隻が日本列島を半周した。

   問題はここからだ。ことし4月20日にロシアがカムチャッカ半島にICBMを撃ち込んでいる。ロシア国防省は日本時間の20日午後9時すぎ、北部アルハンゲリスク州にあるプレセツク宇宙基地の発射場から新型のICBM「サルマト」を発射し、およそ5700㌔東のカムチャツカ半島にあるクーラ試験場の目標に命中したと発表した(4月21日付・NHKニュースWeb版)。BBCニュースWeb版はロシア国防省が撮影した「サルマト」の発射映像(43秒)を公開している=写真=。

   読売新聞Web版(4月21日付)によると、このICBMは射程1万1000㌔以上、重量200㌧を超える重量があり、10以上の核弾頭の搭載が可能とされる。弾頭部分をマッハ20(時速約2万4500㌔)で滑空飛行させ、既存のアメリカのミサイル防衛網での迎撃は困難とも指摘される。ロシア大統領府の発表として、プーチン大統領は「ロシアの安全を確保し、攻撃的な言動でロシアを脅かす人々に再考を迫るだろう」と述べ、ウクライナ侵攻を受けて対露制裁を科している米欧をけん制した。

   以下、素人の目線だ。カムチャツカ半島の目標にICBMを撃ち込めるのであれば、目標を北海道に設定することも可能ではないか。ロシアが「北海道の権利」の奪還という偽旗作戦を掲げて動き、プレセツク宇宙基地の発射場に再びICBMを構えた場合、日本の反撃能力は可能なのだろうか。

⇒17日(土)夜・金沢の天気   あめ

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☆日本の「反撃能力」と北朝鮮の「固体燃料ロケット」

2022年12月16日 | ⇒ニュース走査

   日本海側に住んでいると、北朝鮮の動きが気になる。先月18日に平壌近郊から、1発のICBM級弾道ミサイルを発射し、北海道の渡島大島の西方約200㌔の日本海、EEZ内に着弾させている。飛翔距離は約1000㌔、また最高高度は約6000㌔で、弾頭の重さによっては、射程は1万5000㌔を超えてアメリカ全土に届くと推定されている。

   CNNニュースWeb版日本語(16日付)によると、北朝鮮はきょう新型の固体燃料ロケットエンジンのテストに成功したと発表した。これにより金正恩総書記は将来、より迅速かつ確実にICBMを発射できるようになる可能性がある、と報じている。固体燃料ロケットは、北朝鮮がこれまでのICBM発射実験で使用した液体燃料ロケットよりも安定性に優れ、ICBMをより容易に移動させられるうえに、打ち上げにかかる時間も短縮できるとされる。

   北朝鮮は2021年からの「国防5ヵ年計画」で固体燃料のICBM開発を重点目標に掲げており、金総書記は今回の実験で「優先課題実現に向けた重大問題を解決した」と強調した(16日付・産経新聞Web版)。

   政府はきょうの臨時閣議で「国家安全保障戦略」など新たな防衛3文書を決定した。敵の弾道ミサイル攻撃に対処するため、発射基地などをたたく「反撃能力」の保有が明記され、日本の安全保障政策の大きな転換となる(NHKニュースWeb版)。「反撃能力」は「敵基地攻撃能力」とも呼ばれる。このため、国産ミサイル「12式地対艦誘導弾」の改良型の開発・量産や、アメリカの巡航ミサイル「トマホーク」の取得など、防衛力の抜本的な強化策を盛り込んでいる。

   先の北朝鮮のニュースと照らし合わせすると、反撃能力はどこまで効果があるのか。固体燃料ロケットの開発でICBMをより容易に移動することができるとなれば、敵基地攻撃は意味を成すのだろうか。分かりやすく言えば、移動したICBMを追尾し、発射前にたたくことはできるのだろうか。

(※写真はことし3月24日に北朝鮮が打ち上げた新型ICBM「火星17型」=同月25日付・労働新聞Web版)

⇒16日(金)夜・金沢の天気    くもり

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★スーパーの卵売り場で考えた卵かけごはんのこと

2022年12月15日 | ⇒トレンド探査

   ずっと以前から「卵は物価の優等生」という言葉が脳裏にある。スーパーでは10個入りパックが200円前後で売られていて、特売日では160円というイメージだ。きょうスーパーの卵売り場をのぞくと1パックが「269円」となっていた。「物価の優等生がいつの間にかインフレの急先鋒」となったようだ。

   卵を悪者扱いするつもりはまったくない。急いでいるとき、卵かけごはんでさらさらと食事を済ませると、時間と栄養を稼いだ気分になる。冷蔵庫には卵は絶やさずあり、重宝する食材ではある。その卵の値段高騰の背景に2つの要因があるようだ。一つは、配合飼料原料であるトウモロコシなど穀物のひっ迫だ。

   一般社団法人「日本養鶏協会」のことし9月の「鶏卵の需給見通 し」によると、中国はアフリカ豚熱(ASF)後に大規模な養豚振興策として穀物輸入を拡大し、世界のトウモロコシの7割の在庫を保有している。さらに、アメリカは地球温暖化対策としてエタノール需要が増大していて、原料のトウモロコシ需要が増している。追い打ちをかけるように、ロシアのウクライナ侵攻によって、トウモロコシの主産地ウクライナからの輸出減や物流混乱が続いている。もう一つが、鳥インフルエンザの感染が過去最多の処分数となった2年前を超えるペースで急拡大していて、出荷量そのものが減少していることも背景にあるようだ。

   スーパーの卵売り場では6個入り1パック429円という高級品も目にとまった=写真=。1個70円余り。パックを見ると、「放し飼い 自然卵」「平飼卵」などと記されている。日本の卵が「物価の優等生」であったのは、いわゆるケージ飼いによる大量生産で卵が供給されてきたからだと言われている。これに対し、狭いケージにニワトリを閉じ込めて生産性を上げる従来の養鶏・鶏卵のシステムは、「アニマルウェルフェア(Animal Welfare、動物福祉)」に反するとして、欧米ではケージフリー・エッグ(平飼いの卵)が主流になっている。

   世界の眼は日本の養鶏・鶏卵業者に対して厳しくなっているとも指摘されている。ただ、ケージに入れることにより、ニワトリを土やフンから離すことができ、雑菌や寄生虫などの影響を受けない分、ニワトリは病気にかかりにくくなるとの利点もある。

   さて、ケージ飼いの10個入りパック269円の卵か、平飼いの6個入りパック429円の卵か、どちらにするか。迷ったあげく、伸び伸びと育てたニワトリの卵かけごはんが食べたくなり、手を伸ばした。

⇒15日(木)夜・金沢の天気    くもり

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☆高額献金、ミサイル、防衛増税という負のスパイラル

2022年12月14日 | ⇒ランダム書評

   『週刊文春』(11月10日号)による、世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)の韓鶴子総裁と教団幹部らが2008年から11年にかけてアメリカ・ラスベガスのカジノを訪れ、日本円に換算して64億円もの金をギャンブルに注ぎ込んで、9億円の損失を出していた疑いとの記事は衝撃的だった。さらに、『文藝春秋』(2023年1月号)の記事は衝撃を超えて怒りがこみ上げてくる。「北朝鮮ミサイル開発を支える旧統一教会マネー4500億円」という見出しの記事だ。

   10ページにわたって詳細に経緯が書かれている。旧統一教会と北朝鮮の接近を観察していたアメリカ国防総省の情報局(DIA)のリポートの一部が機密解除され、そのコピーを入手した韓国在住ジャーナリストの柳錫氏が記事を書いている。以下、記事の要約。旧統一教会の文鮮明教祖は1991年12月に北朝鮮を訪れ、金日成主席とトップ会談をした見返りとして4500億円を寄贈していた。寄贈は現金での手渡しのほかに、旧統一教会がアメリカ・ペンシルベニア州で保有していた不動産の一部を売却し、300万㌦を中国、香港経由で北朝鮮に流れている。

   旧統一教会から北朝鮮に流れた資金はそれだけではない。教会日本本部運営局の2007年の資料では、教会の関連団体を通じて、毎月4000万円から4800万円の資金が北朝鮮に定期的に送金されたと記されている、という。こうした資金が北朝鮮で核やICBMの開発に使われた可能性があると、多くの証言や資料をもとに分析している。

   その一つとして、DIA報告書では、1994年1月にロシアから北朝鮮にミサイル発射装置が付いたままの潜水艦が売却された事例がある。売却を仲介したのが東京・杉並区にあった貿易会社だった。潜水艦を「鉄くず」と偽って申告して取引を成立させていた。韓国の国防部は2016年8月の国会報告で、北朝鮮が打ち上げたSLBM潜水艦発射型弾道ミサイルは北朝鮮に渡った「鉄くず」潜水艦が開発の元になっていたと明かした。この貿易会社の従業員は全員が旧統一教会の合同結婚式に出席した信者だった。   

   旧統一教会は日本で集めた資金を北朝鮮に貢いで、それが北朝鮮からICBMとなって日本に向ってくる。そしていま、日本を騒がせている防衛費増税になっている。「負のスパイラル」とはこのことだ。

⇒14日(水)夜・金沢の天気    くもり

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★五輪めぐる汚職事件は「個人的な問題」なのか

2022年12月13日 | ⇒ニュース走査
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☆防衛力強化で増税ならば まず政治家自らが襟を正すべき

2022年12月12日 | ⇒メディア時評

   防衛力強化の財源をめぐり、岸田総理が1兆円強の増税で賄うと表明したことが物議をかもしている。メディア各社によると、高市経済安保担当大臣は「防衛力強化の中身より先に財源論が出たので驚いた」と述べ、元自衛隊員の自民党の佐藤元外務副大臣も「防衛力の中身を説明する前に増税では順番が違う」と苦言を呈した。さらに党内部から、「運び方が雑すぎる。全く理解できない」(大塚衆院議員)や「岸田総理の発言に真っ正面から反対して、防衛増税という考え方そのものに反対する」(青山参院議員)などの声が上がっている。おそらく、有権者の多くも同感ではないだろうか。

   有権者の目線で言うと、そもそも削るべき予算が多々ある。2022年度の一般会計総額は107兆5900億円で、10年連続で過去最大だ。この巨額の資金はいったい何に使われ、未来の成長や社会の安心につながる中身となっているのか疑問に思っている有権者も多いのではないか。

   たとえば、政党から政治家個人に渡る「政策活動費」は、使い道を明らかにしなくていい「領収書がいらない」政治資金だ。朝日新聞Web版(11月27日付)によると、同社が2002年から2021年の政治資金収支報告書を集計したところ、自民党の「政策活動費」は20年で総額約379億円となっており、5年にわたって幹事長を務めた二階氏には、合計で50億6000万円が渡っていた。また、国会議員には給与とは別に毎月100万円の調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)が支払われている。これも領収書不要、残金の返金をしなくてよい。(※写真は、参院代表質問に答える岸田総理=10月7日のNHK総合)

   領収書もいらない不透明な政治資金そのものに有権者は疑心暗鬼の念を抱いている。増税をするのであれば、政治家が自ら襟を正し、政策活動費の透明化と削減を行うと表明してから、増税を国民に問うべきではないか。自民党内部からも、「運び方が雑すぎる」との声が上がっているが、まさにその通りと納得する。総理とあろうものが簡単に増税を口にすべきでない、と言いたい。

⇒12日(月)夜・金沢の天気 はれ

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★アワビの危機にどう取り組むのか 舳倉島の海女たち

2022年12月10日 | ⇒ニュース走査

   日本海に突き出た能登半島の尖端・輪島市のさらに49㌔沖合に舳倉島(へぐらじま)という周囲5㌔ほどの小さな島がある。アワビが採れる島で「海女の島」として知られる。自身も記者時代に海女さんたちを取材に島に何度も訪れた。輪島市や舳倉島を拠点に現在でも200人ほどの海女さんがいる。ウエットスーツ、水中眼鏡、足ひれを着用して、素潜り。採れたアワビは「海女採りアワビ」としてブランド化されていて、浜値で1㌔1万円ほどの値がする。

   アワビ漁では、海女さんたちが自主的に厳しいルールをつくっている。アワビの貝の大きさ10㌢以下のものは採らない。アワビとサザエの漁期は7月1日から9月30日までの3ヵ月。海に潜る(磯入り)の時間は、午前9時から午後1時までの4時間と制限している。さらに、休漁日はすべての海女が一斉に休む。こうしたルールを互いに守ることで、持続的なアワビ採りの恩恵にあずかっている。

   舳倉島にはアワビの長い歴史がある。万葉の歌人・大伴家持が越中国司として748年、能登を巡行している。島に渡っていないが、詠んだ歌がある。「沖つ島 い行き渡りて潜くちふ あわび珠もが包み遣やらむ」。沖にある舳倉島に渡って潜り、アワビの真珠を都の妻に送ってやりたい、との意味だ。この和歌から分かることは、1270年余り前からこの島ではアワビ漁が連綿と続いたということだ。  

   世界の野生生物の絶滅のリスクなどを評価しているIUCN(国際自然保護連合、本部=スイス・グラン)の公式サイトによると、世界に54種あるアワビのうち、日本で採取されている3種(クロアワビ、マダカアワビ、メガイアワビ)を含め20種について、「絶滅の危機が高まっている」として新たにレッドリストの絶滅危惧種に指定した。

   公式サイトの事例によると、アワビは日本だけでなく世界でも高級食材であり、南アフリカでは犯罪ネットワークによる密猟で壊滅的な打撃を受けている。さらに、「海洋熱波」によりアワビが食物としている藻類が減り、西オーストラリア州の最北端では大量死。また、農業および産業廃棄物が有害な藻類の繁殖を引き起こしていて、カリフォルニアとメキシコ、イギリス海峡から北西アフリカと地中海にかけてはアワビの病弱化が報告されている。

   このアワビ激減の対応策として、IUCN研究員は「養殖または持続可能な方法で調達されたアワビだけを食べること。そして、漁業割当と密猟対策の実施も重要です」と述べている。

   先に述べた舳倉島でもクロアワビ、マダカ、メガイの3種が採れているて、昭和59年(1984)の39㌧の漁獲量をピークに右肩下がりに減少し、近年では2㌧ほどと20分の1に減少している。このため、島に禁漁区を設け、種苗の放流、アワビを捕食するタコやヒトデなどの外敵生物の駆除作業などを行っている。今回のIUCNによるレッドリスト化によって、海女さんたちは今後さらにどのような取り組みを進めるのか。海の生態系から得られる恵み、「生態系サービス」の視点からも海女さんたちの取り組みが国際的にも注目されるのではないだろうか。

⇒10日(土)夜・金沢の天気    くもり

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☆「信教の自由」名目の搾取、ネグレクト、信仰的な強制

2022年12月09日 | ⇒ニュース走査

   旧統一教会の被害者救済を図る法案について、きょう参院消費者問題特別委員会で参考人質疑が行われた。NHKニュースWeb版(9日付)によると、「小川さゆり」の名前で被害を訴えている宗教2世の女性は「裁判で実効性を伴うのか検証するとともに、見直し期間を1年にし、検討部会を今すぐ立ち上げてほしい。最大の積み残しは子どもの被害が全く救済できないことだ。新法は献金の問題を解決しようとするものだが、問題はそれだけではない」と指摘し、「これだけ悪質な団体が活動の一時停止もなく、税制優遇を受けていることはあってはならない。政府として責任を果たし、早急な対応をお願いしたい」と訴えた。

   小川さんの意見陳述の全文が朝日新聞Web版(9日付)で掲載されている。驚愕する内容だ。以下。

「幼少期から学生時代にかけて、貧しい暮らしを強いられ、親戚からのおこづかい、お年玉をもらっても没収され、親からも当然ありませんでした。誕生日、クリスマスプレゼント、小学校の卒業アルバムなどはお金がないため、買ってもらえませんでした。

 服はお下がりで、美容院等へは行かせてもらえず、小学校1年生の頃から見た目のまずさからいじめに遭いました。20歳の成人式にいたっては興味がないと言われ、してもらえませんでした。

 両親が親戚中を勧誘したり、お金を要求したり、そのことで怒られているところも見てきました。また、高校生から始めた5年間のアルバイト代200万円ほどの給与も没収され、一度も返ってきませんでした。

 両親はこのような生活状況にもかかわらず、私たちきょうだいに一切相談なく、教会への高額な献金を繰り返してきました。そういった献金につながる教育は幼少期から強制的に行われていきます」

   さらに強烈な証言を小川さんは発している。以下。

「礼拝ではサタンや天国地獄を使って脅す教育を受けます。私は18歳の頃、統一教会の公職者からセクハラを受け、その理由はあなたに悪霊がついているからだと言われて韓国の清平に除霊をしに行きますが、そこで精神崩壊する信者さんたちを複数見て自分も精神が崩壊して精神疾患を負い、精神病棟に入院しました。

 退院後も、うつ症状とパニックを起こして救急車で複数回運ばれました。またもう一度入院もしました。そんな中、両親は協会活動を平然と続け、当時体調を崩し引きこもっていた私のことを家にお金も入れないでいつになったら働いてくれるのかと、お金のアテにしか思われていなかったことを知り、限界を感じ、家を出た後に脱会しました」

   信教の自由という名目の搾取、ネグレクト、信仰的強制を小川さんは強いられていたことが実によく分かる。この宗教団体の信者の家庭内ではこのような事例が数多く報告されている。これを信教の自由と言うのか。まさに民主主義が問われている。法案は、あす10日の委員会で可決されたあと、参院本会議でも採決が行われて可決・成立する見通しとなっている。

(※写真は、バチカン美術館のシスティーナ礼拝堂のミケランジェロの天井壁画『最後の審判』=撮影:2006年1月)

⇒9日(金)夜・金沢の天気   はれ

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