みぃちゃんの頭の中はおもちゃ箱

略してみちゃばこ。泣いたり笑ったり

音の満ちるキャンバス

2010年01月25日 23時10分52秒 | 気ままにお出かけ
事務所までの移動中に時間をひねり出して、愛知県勤労者美術展を見てきました。最近は、ちょっとした時間を作っては小さな美術展に出かけるのがマイブーム。今回は、静かながらも音に満ちた洋画に出会えました。

●「漁港の春」 画: 山田豊 氏

海沿いの家々。家と家は、壁と壁が触れ合わんばかりに身を寄せ合っています。海岸に建てられた家は海の上に張り出しており、床下に漁船が収容されています。伊根の舟屋でしょうか。

既に陽は落ち、辺りは青い宵 (よい) の口に包まれています。人はみな家に帰り、窓に明かりがともりました。そんな家々の頭上に咲く、1本の桜の巨木。そこだけスポットライトが当てられているかのように、ほの青い夜に満開の桜が浮かび上がります。

ざぷっ、ざぷっと岸に寄せる波。昼間の「動」が引いて初めて姿を現わす静のリズム。規則的に刻まれるリズムの中、ふいに揺れる薄桃色の枝。

桜の巨木は、この春も花を咲かせ、波の音を聞き、風に揺れて、村を見守り続けます。

●「静かな時」 画: 榎本久美子 氏

イスに立てかけられたバイオリン。水平に置かれた真一文字の弓。後ろの棚には観葉植物。窓際でしょうか。観葉植物の背後から棚の上面までには、モノトーンのチェック柄の布が掛けられています。

全体に色彩は明瞭 (めいりょう) で陰影が抑えられ、現実にありそうな、でも少し現実離れした、ポスター画のような世界です。

●「BIN '09-3」・「BIN '09-4」 画: 渡邉一男 氏

キュビスムの香り漂う洋画2点。

小さなテーブルに何本もの瓶が載っています。色も形も高さもさまざまな瓶が肩を寄せ合うように密集しています。色調は、全体にオレンジ色や黄色など温かく穏やか。瓶は、みな平面的な線や図形としてキャンバスに描き出されています。描かれている線や図形は、単純ながらも、それぞれの瓶の個性を端的に表しています。

瓶たちは、めいめいの個性を認め合い、決していがみ合うことはありません。瓶どうしがわいわい語り合っている最中に、誰かが呼びかけました。

「天気もいいし、みんなで写真でも撮ろうか」

その場に居合わせた瓶たちが寄り集まりました。笑いさざめく声が、そのままキャンバスに録音されました。