頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

ドラマ『不毛地帯』第一話

2009-10-17 | film, drama and TV

ご存知山崎豊子の原作をドラマ化。

太平洋戦争時の大本営作戦参謀だった壱岐(唐沢)が、自己の戦争への反省と、戦後の日本の裏側で暗躍する様を描く。

どこからどう見ても、伊藤忠商事の会長、政界のフィクサー瀬島龍三を描いたとしか言い様がない。山崎豊子得意の<事実を基にしているけど><事実を基にしてるとは言わず、実在の人物団体とは無関係と言い張る>のに<事実を連想させるようにわざと書いている>

まあその手法に文句をつけるわけじゃない。面白ければいいのだ。ドラマも原作に忠実に描いているし悪くない。しかし、

暗い。暗すぎる。いきなりシベリア抑留の話か・・・原作を読んだから、この先に展開を期待して観続けたけど、そうでなかったら途中でやめただろう。友人Yがメールで「今の若い者はこういうドラマ観ないよね」と書いていた。つい最近までおまえも若者だったくせに。

研音所属の役者ばかり出ているのが気になるが、まあ仕方ないか。

ドラマであまり燃えない人は、こんな本がオススメである。


沈黙のファイル―「瀬島 龍三」とは何だったのか 新潮文庫

新潮社

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瀬島龍三に対しては毀誉褒貶があるが、知らないと褒めようも貶しようもないので、何か読むのも悪くない。もちろん、原作も良かった。


不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))
山崎 豊子
新潮社

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さてドラマに戻って、来週からこのドラマを観るかと言えば、まあ一応観るかな。楽しみにしてるのは「オトメン(乙男)~秋~」と「新三銃士」であるのは、テレビがおかしいのか、こんなおいらがおかしいのか・・・


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友人宅のトイレで

2009-10-16 | days

某友人宅にお邪魔した際、トイレに。

すると、こんな消臭スプレーが


私の正しいリアクション

1.おまえ、なに、こんなはずかすぃもん使ってんだよー と声を大きくしながら出てくる。

2.チャーリー・ブラウンの頭って、とぐろ巻いてるよなー と声を大きくしながら出てくる。

3.こっそりこのスプレーをポケットに入れてそのまま帰る。



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『竜の道 飛翔編』白川道

2009-10-15 | days

「竜の道 飛翔編」白川道 講談社(初出小説現代に加筆訂正)

ドラマにもなった名作「天国の階段」や「最も遠い銀河」など叙情と仁義と貪欲を絡めた作品を世に出す白川道。本作でも本領発揮。

舞台はバブル景気と前後する。虐待する養父母を殺害しその後に完璧なシナリオ通りの人生を歩んでいこうとする双子の兄弟、竜一と竜二。竜一は株式新聞社で社長の鞄持ちをしていたが、広域暴力団の大物組長に可愛がってもらえるというチャンスと、社長が意識不明の重体になるという二重のチャンスが到来。竜二は東大、運輸省のキャリアと正反対の人生。それも復讐のためのシナリオ。竜一は株を通して大儲けをたくらみ複雑な株の世界、魑魅魍魎の巣食う世界を、右翼の大物、ゴルフ場開発業者、投資顧問、仕手を操って見事に泳ぐ。しかし犯した犯罪によって身の危険が。さらには竜一と竜二の本当の姿を知るある女性が上京してきた。さて、二人の今後は・・・

いやいやいや。最初はすごく読みにくかった。20頁ほど読んで捨てようと思った。行替えを頻繁に行い、体言止めを何度も使うので、リズムはいいが内容が薄いように感じたのだ。それも狙ってかなのか、途中から普通の文体へと修正されてゆく。読み進めていけば、そこには私の好物な世界が。

闇に生きる者のストイックな姿 + 彼らの権謀術数を詳細に描く + 仕手の世界やバブル期の沸騰するような態をいながらにして実況中継を観るかの如くに楽しめる。

竜一に迫る危機をどうかわしていくのかが一つ見所なのと、株に疎い人やバブル期にはこの世に生まれていない人にはいい解説本にもなると思う。ただし結果として。あくまでもエンターテイメントとして楽しむべきであって、勉強するために読む本じゃない。そういうのは勝間さんに任せておけばいい。

Wikipediaを読むと、白川氏は、自分で投資顧問会社を興したり、豊田商事に関わったこともあったりしてインサイダー取引やマネーロンダリングで実刑判決を受けたことがあるそうだ。その経験は、この「竜の道」に完全に生かされているわけだ。どんな人生でもどんな悲惨な人生でも、それを生かす方法は常にある、という最高の例ではなかろうか。

最近の若者と話すと、ちょっと前のことを知らないことに驚く。インターネット、ゲーム・・・など情報のインプット回線が多すぎだからだろうか。もっとも、私はつい最近の事に疎いので人のこと言えないのだが。昭和の初期は勿論だけど、昭和の末期にも面白事件がたくさんあるので機会があれば読んでみると、今は元気のない日本だけどちょい昔は面白かったのねと思うんじゃないかな。


投資ジャーナル
豊田商事
他にもあると思うけど、今出てこない。すまぬ。

あ、そうそう。飛翔編となっているけど、その通り、続編が間違いなくある。なかったら怒るぞ。








竜の道 飛翔篇
白川 道
講談社

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ドラマ『オトメン(乙男)~秋~』第一話

2009-10-14 | film, drama and TV

「オトメン(乙男)~夏~」に引き続き、秋が放送。前シリーズと何ら変わらずこれがまた面白い。視聴率はあまりよくなかったらしいので、なぜ早い時間帯に変更したのかよく分からないが。

初回の今回は、銀百合学園の学園祭、銀-1グランプリ。勿論お笑いの大会があって、模擬店があって。その周辺のこてこての笑いは変わらない。

磯野カツオことハライチの澤部佑が今回大活躍。銅蘭高校という不良高校でカワイイ彼女を見つけるわ、剣道部の金を盗むわ、逃亡するわ、銀-1グランプリで場内大爆笑を巻き起こすわ。銀-1では木村了の多武峰が磯野たち二人組に強引に三人組にさせられ登場。このネタが新鮮で面白かった。基本シモネタなんだが、これを木村了がやる面白さと、それを夏帆ことりょうちゃんが大好き(夏帆がシモネタ好きだなんて・・・)であるのがまた笑わせてくれる。

柳原加奈子の夢子先生の過去が出てきたとか見所はたくさんだったが、今回夏帆ちゃんが、正宗飛鳥こと岡田将生に告白(?)するシーンがあったように思った。基本、磯野中心の今回のエピソードもまた面白かった。

これは見逃せない。(夏シリーズの視聴率が9%ぐらいから5%へ低迷していた意味が分からない)


夏シリーズのレビューはここ




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TBS日曜劇場『JIN-仁-』第一話

2009-10-13 | film, drama and TV

脳外科医の大沢たかお 恋人の中谷美紀の手術を失敗してしまい、難しい手術は他人に任せ、彼女を思うやるせない日々を。そこに頭を怪我した患者が運ばれる。彼の体内からなぜか胎児の形をした腫瘍が!その患者は後に病室を抜け出し、ホルマリンに漬けられたその胎児を取り戻しにやって来る・・・(中略)・・・すると大沢は幕末の江戸へ。旗本の小出恵介の頭部手術に成功し、坂本竜馬の内野聖陽には出会うし・・・すると現代へ。頭の手術の受けたのは自分で執刀したのは中谷に。なぜ?現実が反対に・・・また江戸へ。いったいどうなって・・・

てな感じ。感想を簡単に述べれば、時代考証+SF的設定が真剣になされているか分からないため、どう見たらいいか分からない。少なくとも期待していたよりは低めの評価。

現代において頭部を怪我した男は坂本竜馬であるようなのだが(顔に包帯グルグル巻きで不明)、過去に大沢がスリップして坂本暗殺事件を、治療して暗殺未遂事件に変えてしまうというような展開を今後期待できるのか不明。タイムスリップして過去の人物を殺したり生かしたりして、過去を変えてはいけないという「お約束」をどう処理するのか、これまた不明。

しかし原作のマンガは村上もとか。何といってもF1マンガの最高傑作「赤いペガサス」をこの世に出した人なのだから、たぶんその辺は何とかしてくれるのだろうと少し期待しておく。マンガの「JIN-仁-」は未読。「赤いペガサス」は超ウルトラハイパーオススメである。




赤いペガサス (1) (小学館文庫)
村上 もとか
小学館

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JIN―仁 (第1巻) (ジャンプ・コミックスデラックス)
村上 もとか,酒井 シヅ,富田 泰彦,大庭 邦彦
集英社

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連続人形活劇「新三銃士」

2009-10-12 | film, drama and TV

三谷幸喜がアレクサンドル・デュマの原作を脚色。NHK教育テレビで月~金18:00~18:20放送。

初回を見てみた。元ネタの三銃士すら読んでいないのだが、非常によく分かった。フランス王室VS枢機卿の争い。主人公ダルタニアンの父は王室側についていて殺害される。父の仇を討ちにパリへ・・・

いやいやいや。人形の造形が素晴らしい。人形の顔に使用する木の木目をそのまま見せている(キャラによるが)のだが、それがまたリアルだ。顔、表情、痩せ背の高いキャラ、太ったキャラ。どれも生き生きしている。ウォレス&グロミットやひつじのショーンのクレイアニメは実にあたたかくてほのぼのしていていいが、この新三銃士の寒々としたリアルな感じもまたいい。ナレーションの爆笑問題の田中(離婚したのね)と主題歌の平井賢も悪くない。

毎日録画して観ることにした。

今週見逃した人には10月17日(土)  15:00~16:40 (第1話~5話)再放送があるそうだ。

NHKのサイトはこっち

<放送予定>
教育テレビ 18:00 ~ 18:20
第一話から第五話=平成21年10月12日(月・祝)~10月16日(金)
第六話から第十話=平成21年10月19日(月)~10月23日(金)
第十一話から第四十話=平成21年10月30日(金)~平成22年5月28日(金)

今週と来週は毎日放送だが、その後は毎週金曜の放送ということだそうだ。




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壊れかけのイアフォ

2009-10-12 | music








何も聞こえない 何も聞かせてくれない
僕の身体が昔より 大人になったからなのか
ベッドに置いていた 初めて買った黒いイアフォ
いくつものメロディーが いくつもの時代を作った

思春期に少年から 大人に変わる
道を探していた 汚れもないままに
飾られた行きばのない 押し寄せる人波に
本当の幸せ教えてよ 壊れかけのイアフォ






















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『無理』奥田英朗

2009-10-11 | books

「無理」奥田英朗 講談社 2009年

奥田作品結構レビューしてたことを失念していた。以前のレビューは、

「町長選挙」奥田英朗
「ガール」奥田英朗
「マドンナ」奥田英朗
「家日和」奥田英朗
「オリンピックの身代金」奥田英朗


そして、奥田節が戻ってきた。言わば奥田英朗の原点に戻った作品だと思う。

栃木か福島のゆめの市という架空の地方都市が舞台。そこでパラレルに行動する者たち。市で生活保護を担当する男、そこそこの進学校に通う女子高生、市議会議員の男、スーパーの保安係の女、元暴走族で今はインチキ訪問販売をする男・・・ゆめの市で夢を見ることの叶わない者たちは・・・

いやいやいや。転落が一つのキーワード。転落してゆく者たちの物語である。物凄く心が躍るというような、とっても興奮するようなエピソードでもないのに、なぜか読ませる。なぜか面白い。面白いというシンプルな感想を述べることを自分に許してよいと思う珍しい作品である。

なぜスペシャルな話じゃないのに面白いかと言えば、それはなんと言っても奥田英朗の筆力だろう。いや、ペンで強く書いてるんじゃない。それは筆圧だ。

ああこういう奴いるよねという小さな共感から、こういう奴見た事はないけどきっといるだろうという想像共感を与えてくれる。そしてこんな風になったら嫌だなという絶妙な方向にちょっとずつちょっとずつ持っていってくれるので気がつくと、嫌悪感とサディスティックな快感と、一体全体この後どうなるんだというスリルが入り混じって何とも言えない気分になる。作品で描かれるのが地方都市の実態を映す鏡でもあるし、我々日本人が持っているよろしくない点のオンパレードでもある。

無理とは、途中で読み終えられないという意味なのかも知れない。






無理
奥田 英朗
文藝春秋

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以前のレビューは、

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のーのーのーと言う人

2009-10-10 | books

脳という字は
悩むという字に
似ている。



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『ダブル・ジョーカー』柳広司

2009-10-09 | books

「ダブル・ジョーカー」柳広司 角川書店 2009年(初出野生時代2008年12月号~2009年6月号)


あの「ジョーカー・ゲーム」の続編が登場。前作を読んでいないと本作は26%ぐらいしか楽しめないから先にダブルを読まない方が良い。簡単に言えば、日本のスパイ機関の死闘を描いた小説である。連作短編でもある。

<ダブル・ジョーカー> 陸軍大学、陸軍士官学校出のエリートを排除して出来たD機関。彼らに対して面白く思わない者は多い。それをふまえて別のスパイ機関が出来る。その新機関とD機関の対決はいかに。

<蝿の王> 中国の前線でスパイが情報を渡す方法とは・・・

<仏印作戦> ハノイで民間人として陸軍の秘密電文を暗号化する男。しかし奇妙な依頼を受ける・・・

<柩> ドイツで日本人が列車事故死。彼のポケットからスパイしか使わない物が出てきた。果たして彼は日本人スパイなのか、その任務は何だったのかドイツ防諜の責任者の視点から描く。

<ブラックバード> 苦学生のふりをしてアメリカ人富豪の娘の婿になる日本人。その任務の先にあるのは大きな日米謀略・・・

てな感じ。かなり面白い。まあ前作「ジョーカー」ほどの衝撃はないが、概して初めてのときは痛く(当社比)、初めての衝撃は忘れられないモノであるから、初モノと同じ水準を第二作に期待してはいけないだろう。このまま第三作、四作と続いていくことを前提として考えれば、充分すぎる通過点である。

気になるのは、ラストのブラックバードで、もうこの後のD機関の活躍は作品として打ち止めなのかも知れないこと。どうしてそう思うのかはネタバレを避けて書かない。私の記憶違いかも知れないが前作から本作へ時系列順に書かれていたような気がする。いや違うかも知れない。あるいはそれとは関係なく続きが書かれるのかも知れない。





ダブル・ジョーカー
柳 広司
角川書店(角川グループパブリッシング)

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ジョーカー・ゲーム
柳 広司
角川グループパブリッシング

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ブルガリアのむヨーグルトの謎

2009-10-08 | days



普段あまり飲まないのむヨーグルトを買ってみた。

見ると、「一日100mlを目安に召し上がると効果的」だと書いてある。これは総量1リットルだから、1リットル÷100ml=10 つまり10日かけて飲めということだ。

しかしである。

「開封後はお早めに飲め」とも書いてある。封を開けてから10日というのはお早めとは言えないだろう。

家族が4人で寄ってたかってゴックンゴックンと飲めば、2.5日しかもたないわけだが、我が家のように同居家族が17人もいるのに、誰ものむヨーグルトをドリンクしない場合はどうなるのだ。





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『デパートへ行こう!』真保裕一

2009-10-07 | books

「デパートへ行こう!」真保裕一 講談社 2009年 

日本橋の鈴膳というデパートを舞台としたドタバタミステリ&コメディ。日本橋が本店で銀座店があるという設定は三越を連想する。

1.閉店後デパートの商品を盗もうとする女子定員。デパートの裏を知り尽くしているし、警備が手薄な場所も知っている
2.他に行くところがなく、デパートに愛着のある妻子に捨てられたホームレスがデパートへ
3.若い警備員
4.ヤクザ、警察双方に追われる、刺された殺人犯
5.創業者一族の社長。創業100周年に満を持して就任したはずなのに、左遷した部下が駅前開発に絡んで市長とともに贈収賄容疑で逮捕。部下の暴走は社長のせいだと役員会では吊るし上げをくらい、経営悪化とともに社内で居所がなくなった社長。しかも急速な経営悪化により別のデパートとの吸収合併を考慮されている

と閉店後のデパートという我々には縁がない時間帯が舞台。

という設定、パラレルに閉店後に活躍する登場人物たちもいい。

しかし、面白くない。しかし、その簡単な感想の根拠を簡単に説明するのは難しい。

デパートを取材し尽した上での作品だろうと想像する。にもかかわらず、どろどろと沸騰するような舞台裏が見えるわけじゃない。その辺りが原因か。へぇそうなんだと知らなかったことを教えてくれる箇所が意外なほど少ないのもまた原因。いや、知らなかったことが出てくるのは確かなのだが、それで「へぇぇそうなんだ」と脳をあまり刺激してくれないのだ。

あるいは、登場人物が多いせいか、それぞれのキャラがやや薄いように感じた。もっと書いて書いて、どろどろとした山崎豊子的重厚長大大河作品だったら良かったのに。

とは言うものの、デパートの裏側を読む軽いドタバタコメディ<マンガ>だと思って読めばそんなに悪くない。あの真保裕一が書いたから、変に期待してしまったのだろう。映画やドラマ化された方が面白いかも知れない。




<本・マンガのレビュー1 作者名あ~か~>
<本・マンガのレビュー2 作者名さ~た~>
<本・マンガのレビュー3 作者名な~は~>
<本・マンガのレビュー4 作者名ま~や~ら~わ~>






デパートへ行こう!
真保 裕一
講談社

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どんだけのりやねん

2009-10-06 | days



気がついたら、こんなにたくさんの海苔。巻いて巻いて@仮面ノリダー

いや糊だった。

しかも、もう何年もこの引き出し内ののり、一本も使っていない。

基本的にごはんつぶをくちゃくちゃと噛んでから封筒張りをして極めてエコな生活をしているからなのだ。

こんな風に、気がついたらたまってしまったモノってありませんか?え?ないんですか?


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ガイド

2009-10-05 | days

人生を楽しむためには、有能なガイドがいるといい。

それはときには恋人だったり、伴侶だったりする。

恋人がときには自分が全く知らなかった世界へといざなってくれる。

クラシック音楽やオペラ、あるいは源氏物語の世界へ。

自分の世界は常に狭い。

それを広げてくれるのがパートナー。またの名をガイド。

自分自身はつまらない人間でも有能なガイドがいれば、つまらなくないように暮らせる。


人の世は 苦しいことのみ 多かりけり 相棒なき世は またさらに



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『学問』山田詠美

2009-10-04 | books

「学問」山田詠美 新潮社 2009年

食わず嫌いであった、山田詠美。なぜ食おうとしなかったのか今となっては分からない。山田詠美=日焼けした林真理子かと思っていたが・・・・・・

田舎に越してきた、仁美(後にフトミとあだ名される) 友達となった心太(テンちゃん)千穂(チーホ)無量(ムリョ)たちと繰り広げる、由緒正しいニッポンのコドモの世界。

いやいやいやいや。これはまいった。寝食を忘れて読み耽ってしまった。成長しながら色んな事を学ぶ主人公たち。笑えるエピソードも多いし、考えさせられるエピソードも多い。性に関わることがメインテーマの一つではある。そこを中心に読むと、<青春&エロティックな妄想>小説となるのだろう。私はテンちゃんの言動から<こうあるべき人の姿>のようなものを読み取るのをメインにした。

テンちゃんの言動は本当にいい。仁美の通う英語の塾に顔を出したとき、この塾に誘おうとする子に「テンちゃんちはお金ないから誘ってちゃ悪いよ」と言っているのが聞こえると、

「おれ、金以外だったら、いっぱい持ってるんだけどさあ、それじゃいかんら?」


とテンちゃんは言う。おお、なんていい台詞なんだ。私自身、子供時代ひどく貧しかったので、こういう台詞は身に染みる。

小説全体の構成も巧い。4人組が大人になる以前をたっぷり描き、それ以降大人になってからに関しては直接描かずに、彼らがどんな死に方をしたか週刊誌のコラム風に各章の冒頭に一人ずつ短く第三者風な描写があるだけ。冒頭、仁美の死に方が出てくる(冒頭だからネタバレではあるまい)
http://www.shinchosha.co.jp/shincho/tachiyomi/20080807_1.html より引用する。


元、高校教諭の香坂仁美(こうさか・ひとみ)さんが2月14日、心筋梗塞のため死去した。享年68。
 1962年、東京生まれ。七歳の時に父親の転勤に伴い、静岡県美流間市(現、みるま市)に移り住んだ。美流間文科大学卒業後、美流間学院高校で教鞭を執り、定年まで勤め上げた。退職後は、自宅に、私塾香坂スクールを開き、その経営に尽力した。美流間の子供たちの教育に心を砕き、そして、まっとうした一生であった。美流間の風物を描いた随想集も出版している。
 喪主は、香坂スクールの講師で、同居人でもあった山本拓郎さん(35)。葬儀告別式の挨拶では、隣で気持良さそうに眠っていると思ったら死んじゃってた、と号泣し、参列者の涙を誘っていた。山本さんは、かつて、香坂さんの教え子でもあった。

週刊文潮三月一日号
「無名蓋棺録」より



この山本拓郎って一体誰だ?と思いながらその謎は一向に解けない。それがラストで分かると色んなモノが込み上げて来た。「学問」というタイトルも実にいい。山田詠美はチャラチャラした姉ちゃんだと思っていたら違った。勿論林真理子とも違う。どちらも女性読者が多いのではなかろうか。しかし女性に独占させてはいけない。立ち飲み屋に女性が侵食して来たら、詠美には俺たちが侵攻してゆくのだ。







学問
山田 詠美
新潮社

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