弘之は大学時代に戒能悠子(かいのゆうこ)と出会った。美人だが個性的な女性。彼女の紹介で翻訳を始めることにした。悩みもがき苦しむ翻訳の世界。ほんの少し訳すだけでも時間がかかる。でも充実している。悠子は通訳になった。とても忙しくしている。翻訳と通訳の仕事。そして微妙にすれ違う二人の関係…
ううむ。何という柔らかな物語なのだろう。文体や言葉の使い方は堅めなのに、読み終わった後、何とも柔らかい気分になる。
翻訳家としての弘之の苦労に読み応えを感じるのだけれど、一番は何といっても悠子という女性。複雑な(本当に複雑)家庭環境、裕福とは言えない金銭面、そして何としてもアメリカに勉強に行きたいという欲望。一見ぶっきらぼうな彼女をとても底の深い女性にしている。
さらに二人の関係。お互いに好意ぐらいは持っているのだろう。弘之は明らかに持っている。しかし悠子の気持ちが分からない。しかしラストで分かる彼女の気持ち。そして彼女の過去。そして衝撃的なラスト。
何というか、自分だけの好物を見つけような気分になり、うれしくなった。
作中で、ジュンパ・ラヒリ「停電の夜に」を自分で訳したかったというエピソードと、美しい日本語の例として芝木好子の「隅田川暮色」が紹介されていた。この両方をぜひ読んでみたいと思った。

今日の一曲
本とは無関係に。ちょっといい感じのカントリー。Tim McGrawで"Humble And Kind"
では、また。
ううむ。何という柔らかな物語なのだろう。文体や言葉の使い方は堅めなのに、読み終わった後、何とも柔らかい気分になる。
翻訳家としての弘之の苦労に読み応えを感じるのだけれど、一番は何といっても悠子という女性。複雑な(本当に複雑)家庭環境、裕福とは言えない金銭面、そして何としてもアメリカに勉強に行きたいという欲望。一見ぶっきらぼうな彼女をとても底の深い女性にしている。
さらに二人の関係。お互いに好意ぐらいは持っているのだろう。弘之は明らかに持っている。しかし悠子の気持ちが分からない。しかしラストで分かる彼女の気持ち。そして彼女の過去。そして衝撃的なラスト。
何というか、自分だけの好物を見つけような気分になり、うれしくなった。
作中で、ジュンパ・ラヒリ「停電の夜に」を自分で訳したかったというエピソードと、美しい日本語の例として芝木好子の「隅田川暮色」が紹介されていた。この両方をぜひ読んでみたいと思った。
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今日の一曲
本とは無関係に。ちょっといい感じのカントリー。Tim McGrawで"Humble And Kind"
では、また。