支給決定が4兆円突破 コロナ特例の雇調金、1年半で
2021/07/26 21:00
(朝日新聞)
新型コロナ禍から雇用を守るための特例措置として国が拡充してきた「雇用調整助成金」(雇調金)の支給決定額が、1年半足らずで4兆円を突破した。失業を抑える一定の役割を果たしてきた一方、次期衆院選への思惑も絡み、今後の財源不足にどう備えるのかの見通しを示せていない。
厚生労働省が26日、昨年3月〜今年7月23日の累計で、支給決定が約400万件、支給決定額が4兆125億円になったと明らかにした。月平均で2千億円を超す支給ペースで、これが続けば、今年度中の5兆円超えも視野に入る。
2008年9月のリーマン・ショック後も特例はあった。だが09年度の支給は6534億円。コロナ禍の特例が大きく上回る。
厚労省は21年度の支給を約1兆3千億円と見込んでいた。だが企業が雇調金向けに納める保険料と積立金では不足が確実で、約1・1兆円を税金から国庫負担するほか、失業者向け事業から約1・7兆円も借りてしのいでいる。それでも厚労省幹部は「財源が年度末まで持たない。補正があれば補正、なければ予備費の投入が必要」と認める。
厚労省は財源払底を危ぶんで今年3月、7月以降は特例を縮小していく方針を表明した。縮小すると失業が増える懸念がある。そこで、いまの職場に籍を置いたまま他社で働く「在籍出向」に助成金を出すなど、雇用の維持から労働力の移動へと政策の軸足を移していく考えも示していた。
だが、感染がなかなか収まらないため、5月には方針を転換。足元ではむしろ助成水準を維持する方向にかじを切り始めている。