日産・報酬過少記載事件 ケリー元役員に執行猶予付き有罪 起訴内容の大半は無罪 ゴーン元会長“海外逃亡”のまま判決
2022/03/03 07:29
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告の役員報酬を、有価証券報告書に過少に記載したとして、金融商品取引法違反の罪に問われた元代表取締役のグレッグ・ケリー被告(65)の判決公判が、午前10時から開かれた。東京地裁は、ケリー被告に対して、懲役6カ月・執行猶予3年の有罪を言い渡した。起訴内容のうち一部は無罪とされた。
また、起訴内容を認めていた法人としての日産に対しても罰金2億円を言い渡した(求刑・罰金2億円)。
起訴状などによると、ケリー被告は、ゴーン被告と共謀し、2011年3月期〜2018年3月期までの8年分のゴーン被告の役員報酬について、合わせておよそ170億円だったにもかかわらず、有価証券報告書には、およそ91億円少なく記載したとされる。
ゴーン被告は、ケリー被告に指示し、報酬の一部を、退職後に受け取る方法を考案させたという。高額の報酬を受け取っているとの批判を避ける狙いがあったとされる。このため、有価証券報告書には、ゴーン被告が、将来受け取る予定のおよそ91億円が未記載にされたという。
この「未払いの報酬」の有無などが裁判の争点となった。検察側は「ケリー被告が未払いの報酬を認識した上で、確実にゴーン被告に支払うという役割を果たしていたことは明らか」として懲役2年を求刑。裁判では、司法取引した日産の元幹部らが、ケリー被告の関与を証言していた。
これに対してケリー被告は、「未払い報酬は存在しない。ゴーン被告に対する退職後の『顧問料などを検討しただけ」などと無罪を主張。最終意見陳述では「いかなる犯罪の共謀にも関与しておらず、いかなる罪も犯していません」と訴えていた。
きょうの判決で東京地裁は、虚偽記載に問われた8年分の過少記載について、2018年3月期の1年分は、ケリー被告が「未払いの報酬」として認識していたと認定し、有罪と判断した。しかし残りの7年分(2011年3月期〜2017年3月期)は、「未払いの報酬の存在について認識していたとは認められない」として無罪とした。
一方で判決では、司法取引による証言の信用性について「検察官の意向に沿う供述をする危険性をはらんでいる」と指摘。その上で、元秘書室長の証言の一部について「裏付け証拠が存在せず、信用しがたい」などと判断した。
ゴーン被告は、保釈中の2019年末に海外逃亡し、レバノンに滞在しているとされる。事件の”主役”ゴーン被告が不在のまま、側近のケリー被告が有罪判決を受けることになった。(画像は東京地裁に入るケリー被告・午前9時半ごろ)