海堂尊 「ナイチンゲールの沈黙」宝島社 2006年刊 「螺鈿迷宮」角川書店 2006年刊
チーム・バチスタの栄光と同じ著者、海堂尊の医学小説を2冊読んだ。一冊は音楽連動、一冊は終末医療がテーマ。
エンターテイメント的には「螺鈿迷宮」は動きがいろいろあり楽しい。どちらも思い入れの深すぎる修辞が少し私には引っかかるが。
いずれも医者や病院の悪意又は過失がいかに表面に現れにくいかを語っている(「ナイチンゲールの沈黙」はそれほどではないが)。そこがミステリー仕立てになる所以だが、政治的或いは権力争い的な面がこれに加わると始末が悪い。意図的に殺意や過失を隠そうとする動きが確実に出てくる。これは小説の中だけではないと思う。何でも訴訟にもってゆこうとするアメリカ風は勿論おかしいが、医者の評価はもっと科学的に開放的にされないと、医学の進歩や医療技術の発達は促進できない。
医者村の中だけでの評価では退廃は避けられない。経済的な側面ばかり強調するのもおかしいが、医療行為の評価が第3者によって行われないのは、教育界に似ている。グルメランキングが公表されているように、患者による或いは患者家族による医者ランキングを公表してみたらどうだろう、とふと考えた。