堀江貴文「ゼロ」ダイアモンド社 2013年刊
一世を風靡したご存知ホリエモンの刑期満了後の著書。イメージの中の彼は自己中心、成金、拝金主義、ヒルズ族などのイメージに事欠かなかったが、この著書を読む限り、本質主義、挑戦者、改革者のようだ。久々に心躍る読み物だった。
本書では幼年期~学生時代までの生い立ち、家族との関係、それをとおして形成された考え方などが率直に語られる。彼に対し抱いてきたイメージとは違い、かなり独立心、自立心の強い男である。ベンチャー企業の成功者だけあって、先見性、戦略性を強調するかとおもいきや、コツコツと働く、努力、チームワークについての重要性に触れている。勿論、行動、決断については他の起業者と同じく積極的であるが、「失敗しても出発点と同じゼロに戻るだけだから恐れず進め」と鼓舞する。ここら辺り、経験者ならではの語り口だ。
与えられることを拒否し自ら選べ、どんな仕事も工夫をしてみろ、時間を大事に、という具合に、ごくアタリマエのことを主張している。仕事は掛け算ではなくまず足し算で積み重ねる。そこに仕事上もっとも大切な信用が生まれる。遠くの目標ではなく身近なところの目標を全力で、スピーディにこなすことが基本。ただ、曖昧なこと、慣習で続けていることなどについては、納得ゆくまで掘り下げる。ここが時代の寵児となった所以だろう。考えは意外に真面目で、まっとうである。時代の変革者の片鱗は端々に見える。
若者には読ませたい一冊である。