
上京のついでに東京大学に寄ってみた。
親戚の方(物理学者)に案内してもらった。現役の頃時々出張できたそうだが、今は学期の変わり目で構内は閑散としていた。
門から入ってすぐ、法学部と文学部が向かい合って並ぶ。最高学府と呼ばれるにふさわしく、格調高いというべきか古色蒼然というべきか、何やら威風堂々とした建物である。
すっかり葉っぱを落とした銀杏並木が続く。東京都の木だ。その向こうに学生運動で焦点となった安田講堂が聳える。但し何やら下部は工事中であった。その横を下ってゆくと三四郎池だ。「知に働けば角が立つ。情に棹させば流される。兎角この世は住みにくい」漱石の名文句がふと浮かぶ。東京のこんなどまんなかに、これだけの緑の庭園があるのはさすが東大だ。と中身ではなく、外観、環境に感心する。ここから日本の中枢が巣立ってゆくのか、日本の歴史はここから作られるのか、と柄にもなく感慨にふけり、構内を後にした。
