

俳句の季語に「木下闇」というのがある。闇というのはちと大げさかと思うが、夏の明るい陽と緑陰のコントラストを考えるとむべなるかなである。
晴れ間を選んで散歩に出てみると、道脇の緑は今が最も濃い時節を迎えている。目も眩むような強い日差しが降り注ぐ中、道脇の谷間は正に木下闇だ。視力、明暗の調整能力が衰えてきているせいか、樹間はまさに昏い。
散歩の最高点に、水汲み場が設けてある。10年前はただゴムホースが樹の枝にかけてあっただけの水汲み場だったが、やがて蛇口が二つ設置された。ここの水は冷たく美味しい。天然のミネラルウオーターだ。
ただ、貼り紙がしてあって洗車は禁止だの、一度にペットボトル10本以上の採取は遠慮してほしいなどの通知がある。二つの蛇口からは絶えず流しっぱなしにしているのに、なぜだろう?ちょっとセコいような気がする。
水汲み場で喉を潤し、真夏の強い日差しの中道を下った。
「木下闇 時速一キロ 帰途はるか」
あまりうまくはないが常念岳からの下山道、疲れて麓の森を歩いた時の句である。

