常念小屋の前からの槍ヶ岳
間近に見える槍ヶ岳
常念山行2日目はまずは登頂し、往路を戻るという計画で、ガイドブックによれば、登頂往復2時間、帰路3時間半、計5時間30分の行程であった。実際には・・・。
前日あまり良くは眠れなかったが、とにかく朝飯を済ませ5時少し前には小屋を出発できた。荷物は小屋の前に置き、空身での往復である。
出発時は空は晴れ、頂上までの道や、槍ヶ岳-穂高連峰もよく見えていた。小屋の前からの斜面に付けられたザラ場道を登る。常念岳を越え蝶ヶ岳へ縦走する組や、三股へ降りる人たちはザックを背負い朝日を浴びて斜面を歩く。緩やかな登りがすぐ急斜面になりジグザグに道は刻まれている。
少し雲が出て来た
頂上に向かって空は晴れ
振り返れば小屋が遥か下に
次第に霧が出てきた
頂上はすぐ手が届くところに
ご来光や日の出を見に行った人達とすれ違う頃には少しずつ霧が濃くなってきた。「頂上は素晴らしい景色だよ」と言ってくれるが、少し気になる。足元の崩れを気にしながら目の前の頂上目指して進む。この分ならコースタイム通り1時間で到着だ、と思ってピークに着いたが、其処は偽ピークで、なんとその先に本物の頂上があった。
気を取り直して更に登る。少し岩が大きくなり岩稜ぽくなってきたところを超えるとやっと頂上だ。霧がますます濃くなって来て視界は殆どゼロ。頂上には小さな祠があり、2,3人が留まれる程度で意外に狭い。それでも此処が念願の常念岳頂上2850mだ。二組のパーテイからシャッターを頼まれ、私も撮ってもらった。
あれが本物の頂上だ
時折霧が晴れる
頂上直下の花
狭い頂上で記念撮影
頂上の道標
頂上ではあいにく霧が濃く流れ展望は叶わなかったが、降り始めると少しずつガスが晴れてきた。本来行くはずだった三股への分岐点を過ぎ、偽ピークを眺めながらゆっくり下る。ガラ場で足に少しずつ負担がかかってくる。下に降りるに従ってガスが取れ穂高も槍も見えてきた。
小屋の前に戻ったのは9時、往復4時間かかった。これが年齢というものだろう。この先が思いやられる。まあ下りだからなんとかなるだろうとたかをくくって小屋の前を出発。
下って行く先は偽ピーク
三股方面への分岐点
高度感ある偽ピーク
薄っすら槍も姿を現す
穂高方面もガスが取れた
下ってきた斜面を振り返る
雲海の向こうに見える山々
乗越に到着
横通岳方面
下り始めてすぐ登ってくる人達に出会う。5時前に出発したとのことだが4時間そこそこのコースタイムだ。第3,2,1ベンチを過ぎ、大勢の人とすれ違う。乗越からはストックを使ったので幾分足に負担がかからない。それでも、最後の水場でおにぎり休憩を取り、胸突き八丁上部の危険箇所を過ぎるところから足が言うことを利かなくなってきた。
そろそろと足を出さないと石に乗れない。胸突き八丁下の沢筋の水場で休憩し、背中の荷物を家人が少し持ってくれ、先についた長男が冷たくて甘い紅茶を入れてくれた。そこからはダブルストックで行く。烏帽子沢出合いで距離的には後半分、大滝ベンチでは後1時間のコースタイム。だが実際にはその倍ほどかけてそろそろと歩く。滑ったり足を挫いては周りに迷惑をかける。
荷物の負荷が減っただけ少し楽にはなったが、それでもゆっくりしか歩けない。体力的には遭難一歩手前である。登りにはなんともなかった王滝ベンチからの3kmがかなり長く感ぜられ、山の神の鳥居への到着が心待ちになった。後続のパーティには次々と抜かれるが、足は重く一向にペースは上がらない。下るにつれ道が徐々に変化し歩きやすくなってくるのが救いだ。
やっと「山の神」に到着。あと500mの標識の嬉しかったこと。その後実質600mくらいに感じたが一の沢登山口に着いた時には流石にホッとした。到着時刻午後3時半、午前5時の出発から10時間以上かかった計算になる。今回は同行の二人に助けられた登山であった。パーティの重要性を実感した山行でもある。
登りはペースが遅くてもまずまずであったが、下りに事故寸前まで疲労してしまうのはやはり年齢のせいか、トレーニング不足のせいか、いずれにしても今後の山行には大きな教訓になった。
最後の水場での休憩
下ってくるとこんな山道を歩く