「『悲しかったです』と書くかわりに、『空がとても青くて、ジェット機も飛んでいて、私はバナナパフェが食べたかった』などと書いてしまうのが、小説である(たぶん)」。いかにも現代の女性作家らしい文章だ。小説に限らず、誰かさんではないが「感動した!」では、感想にも批評にもならないのは同じこと。教えられた。
もう五年以上も続いている「文楽の会」という読書会で、先の文章の主・川上弘美の『センセイの鞄』という小説を読んだ。高校時代の先生に齢の違いを越えて、惹かれていく女性の心を描いた作品だが、現代作家の書いたものをほとんど読まない人間にとって、久しぶりに新鮮で情感溢れる文章との出会いであった。読書会などという時代遅れの集まりがなければ、決して読まないだろう作品を、この五年間でたくさん読ませてもらった。ありがたいことである。
二月二十五日に三重県桑名市で演劇交流を行い、凱旋したばかりの柏崎演劇研究会代表の長井満さんも一緒だった。桑名のみやげ話を聞かせてもらった。桑名演劇塾による「幕末親子絆」は衣裳や小道具に大変お金をかけた大掛かりなものだそうで、長井さんはしきりに「八百万円の芝居」ということを強調していた。
この財政難の時代に、桑名市は演劇塾に四百万円の助成金を出しているという。演劇を通したまちおこしを考えての助成とのことだが、随分大胆な施策と言える。そのことがいいか悪いかは別として、三月四日の公演を楽しみにすることにしよう。
ところで長井さんは、柏崎からたくさんのみやげを持って行ったというが、桑名の人たちが喜んだのは、桑名にはない笹団子や笹あめ、そしてとりわけアジロヤキであったそうだ。柏崎の米に興味を示すのは昔も今も変わらないということだろうか。
桑名市では柏崎との歴史的なつながりについて、ほとんど知る人はいないとのことだが、今回の演劇交流で、あちらの歴史認識にも変化が起きてくれることを期待したい。
もう五年以上も続いている「文楽の会」という読書会で、先の文章の主・川上弘美の『センセイの鞄』という小説を読んだ。高校時代の先生に齢の違いを越えて、惹かれていく女性の心を描いた作品だが、現代作家の書いたものをほとんど読まない人間にとって、久しぶりに新鮮で情感溢れる文章との出会いであった。読書会などという時代遅れの集まりがなければ、決して読まないだろう作品を、この五年間でたくさん読ませてもらった。ありがたいことである。
二月二十五日に三重県桑名市で演劇交流を行い、凱旋したばかりの柏崎演劇研究会代表の長井満さんも一緒だった。桑名のみやげ話を聞かせてもらった。桑名演劇塾による「幕末親子絆」は衣裳や小道具に大変お金をかけた大掛かりなものだそうで、長井さんはしきりに「八百万円の芝居」ということを強調していた。
この財政難の時代に、桑名市は演劇塾に四百万円の助成金を出しているという。演劇を通したまちおこしを考えての助成とのことだが、随分大胆な施策と言える。そのことがいいか悪いかは別として、三月四日の公演を楽しみにすることにしよう。
ところで長井さんは、柏崎からたくさんのみやげを持って行ったというが、桑名の人たちが喜んだのは、桑名にはない笹団子や笹あめ、そしてとりわけアジロヤキであったそうだ。柏崎の米に興味を示すのは昔も今も変わらないということだろうか。
桑名市では柏崎との歴史的なつながりについて、ほとんど知る人はいないとのことだが、今回の演劇交流で、あちらの歴史認識にも変化が起きてくれることを期待したい。
(越後タイムス3月3日「週末点描」より)