玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

何かおかしい

2007年06月03日 | 日記
 十日町市で気になる動きがある。過去三回開かれたアートトリエンナーレ「大地の芸術祭」も随分気になっていたが、次は民間主体での開催ということになったようだ。それでも第四回目では、十日町市と津南町で一億円を負担するということだが……。
 合併で隣りの市になったせいもあり、友人、知人が多くいることもあって、十日町市のことは気になって仕方がない。新しい動きは「大地の芸術祭」と密接にからんでいる。昨年の「大地の芸術祭」に初めて登場した「妻有焼」に、そのことは関係している。
 田口十日町市長が先日の記者会見で、「妻有焼」を十日町の新しい産業として、地域活性化の目玉にする計画を発表したのだった。市が主体となり、六千万円を注ぎ込んで、廃校となった小学校を改造し、陶芸設備をそろえ、陶芸センターをつくるというのである。
 「妻有焼」は東京在住のある陶芸家が、十日町の土に惚れ込んで、昨年の「大地の芸術祭」で発表したもので、もとから地域にあったものではない。市長はその陶芸家個人の可能性に期待しているようだが、「週報とおかまち」によると、「軌道に乗る見通しはあるのか」「全国でそのような成功例はあるのか」との記者の質問に、市長は「取り組んでみなければ分からない」と答えたという。
 五月十八日号の「タイムス抄」でも書いたが、文化創造に対する行政の介入や過度の支援には反対である。特定の陶芸家に行政が肩入れすることに大きな疑問を感じる。産業振興のためというなら、その陶芸家が「妻有焼」を自立的に興し、軌道に乗る見通しが立ってから支援すべきであって、失敗したら税金の無駄遣いである。税金というものは、もっと公平な使われかたをしなければいけない。
 その陶芸家は十日町の土を「最高の土だ」と言っているそうだが、地元の陶芸家は「そんなことはない」と言っているという。また柏崎出身のある陶芸家は「十日町の土がそんなにいいなら、窯業のまちとして栄えていたはず。昔から陶器で有名なところは、どこもその土がよかったからだ」と言っている。何かおかしい。他山の石としなければならない。

越後タイムス6月1日「週末点描」より)



一生を棒に振りたい人はどうぞ

2007年06月03日 | 日記
 立体パズルの桑山弥志郎さんと七年ぶりにお会いした。柏崎工業メッセに展示されるプラスチック製パズルの取材だった。前に仕事場におじゃました時には、正六面体のパズルをいただき、さっそく挑戦したことを覚えている。
 井桁状の比較的単純な形なのだが、これが大変むずかしい。解体して再び組み立てるのに半日以上かかった記憶がある。とにかく組み手の刻みが複雑で、「あーこうなっているのか、こりゃすごい」などと独り言をいいながらの挑戦だった。
 月日は過ぎ、桑山さんは十二面体から三十二面体、昨年には七十二面体を完成させた。十二面体を組み立てるところを取材させてもらったが、パーツが三十個もあり、とても自分で挑戦する勇気はなかった。
 工業メッセでは、来場者に挑戦してもらうというが、桑山さんは「取説があってもできないだろう」とすずしい顔で話す。挑戦者がはまってしまって、「徹夜の泊まり客もでるのではないか」という冗談も出た。桑山ワールドを訪れたら、他のブースを見学することがむずかしくなることは確実で要注意だ。
 三十二面体は正五角形十二面と、正六角形二十面で球を表現する。七十二面体は正五角形十二面と少しずつ角度を変えた不等辺六角形六十面で球を表現する。これらはすべて理にかなった法則にのっとっていて、数学的に解析されるのだそうである。
 七十二面体は残念ながら大きさの制限があって国際大会には出品できない。しかし、アメリカのGM社の会長が三十二面体を欲しがり、会長がつくった「リリー博物館」という世界のパズルを集めた館におさめられたという。
 桑山さんの恐るべき頭脳と技に脱帽する。しかし、七十二面体組み立てに挑戦するのは、一生を棒にふるような行為かも知れない。

越後タイムス5月25日「週末点描」より)